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決意

続きです遅くなってごめんなさい

 次の日の朝、マリーさんとは少女との会話が頭をチラついて上手く話すことができなかった。

 マリーさんからは昨夜、夢で誰かと会ったかと聞かれた時は一瞬心臓が跳ねたが本当のことは言えない。

 あの少女を全面的に信頼するわけではないが少しでも可能性があるなら会話の内容を伝えるのは危険だろう。

 記憶が戻ったこともできるだけ悟られないようにするしかない。

 とりあえず俺がやるべきことは人類を見極めることだ。

 善か悪か。

 そんな簡単に推し量れるものではないかもしれない。

 だがもし悪であったのなら俺は——決意しなければならないだろう。


 ◆◆◆


「マリーさん僕、そろそろここを立たせてもらおうと思います」


 マリーさんに拾ってもらってから数ヶ月。

 俺の怪我も完治し王都へ向かう為にマリーさんの修道院を立つ準備をしていた。


「そうですか。それは寂しくなりますね」

「ええまあ。俺も記憶を取り戻す為に世界を見て回りたいので」

「記憶が無事戻るといいですが……」

「その辺りはおいおい思い出せたらと思っています。焦らずゆっくりと」

「これを持っていってください。多少のお金と旅に役立つ道具が入っています」

「こんなものまで……。ありがとうございます。本当にお世話になりました」

「いえいえ。《 ()()()旅を終えられたらまたお会いできることを楽しみにしていますよ。あぁそれと王都には必ず行ってください。紹介状も渡しておきますから」

「勿論です。マリーさんとの約束を反故にするわけにはいきませんから」


 何はともあれ俺は遂に修道院を飛び出せた。

 これからゆっくり世界を見て周り王都へと向かう予定だ。

 ここ数ヶ月で俺は自分でも驚くほどの才能ギフテッドに目覚めていた。


《勇者の片鱗》

《魔才》

《剣才》

《超回復》

《魔法攻撃軽減》

《物理攻撃軽減》

《毒物耐性》


 まだ少しだけだがこれだけある。あの少女、ヨル曰く俺にはまだ沢山の才能ギフテッドが眠っているらしい。

 これだけの力があれば誰にでも勝てそうなものだが、どうやらそうでもないらしく気をつけろと言われたのも覚えている。


 ◆◆◆


 修道院を出て少し進んだ街道でヨルが話しかけてくる。


『ところでその袋、気づいておるよな?』

「何かあるのか?」

『中に入っている金は偽物で旅に役立つものも全て毒物入りだぞ』

「まさか」

『大方お前を手に入れれなかったから殺す腹づもりだったのだろう。多分あの女お前の才能ギフテッドに気づいておったぞ』

「細心の注意は払ってたぞ? 実際才能ギフテッドの内容がバレるような行動は一度もしてないはずだ」

『相手の才能ギフテッドを見抜く。それがあいつの才能ギフテッドの一つだったのだろうな』

「待ってくれ。俺以外は基本的に人の才能ギフテッドは一つなんだよな?」

『かかか! 気づいてなかったのか? あやつは聖女の器ぞ』

「まさかそんな……だって一度も!」

『素性の怪しい、しかも才能ギフテッドを短時間にいくつも解放させた人間に本当のことを話すと思うか? お前は、はなからあいつの道具候補でしかなかったというわけじゃな』


 ショックだった。

 数ヶ月であったとしても多少はマリーさんと信頼関係を気付けていたと俺は思っていたのに。

 ゴソゴソとマリーさんから貰った袋を漁っていたヨルが大きな声をあげる。


『奴さんもう一つお前に嬉しい置き土産を残してくれてたらしいぞ。良かったのぅ!』

「それは嬉しいね。で何が置き土産なんだ?」


 ヨルが無言で袋の中から取り出した箱のようなものは凶々しい雰囲気を放っている。

 まるでこの世全ての呪いが込められているようなそう感じさせるものだ。


「これは?」 

『呪いってお主は知らんよな』

「呪い?」

『そうだ。人を数ヶ月いや数年の間、苦しめ殺しこの箱に怨念と共に閉じ込める。そういう類の魔法みたいなものじゃな』

「そんな幻想の産物みたいなもの存在するのか」

『現に此処にあるのは呪いの塊じゃ。お前が一般人なら死ぬレベルのな。しかも達が悪いことにこれの素材は人間の赤ん坊ぞ』

「酷いことをする。俺が今それに触れたら死ぬのか?」

『いや今のお前じゃ残念ながら死なん。が、昔のお前なら間違いなく死んでいたじゃろうな』

「それだけのものを用意してまで俺を殺したかったって考えるとなんだか悲しいな。少なくとも俺は仲良く慣れたつもりだったのに」

『して答えは決まったか? お前の心の支えだったマリーちゃんはこんな代物まで作り出してお前を暗殺しようとした。お前を殺しかけた連中と似たようなものだろう』

「そうだね。本当はこの旅で見極めるつもりだったけど、もう決めた。人類は悪だ。そんな人類は全て滅ぼすべき、そう思ったよ。だから俺は人類全てを抹殺するとここに誓うよ」


 俺のその答えにヨルはニヤッと嫌な笑いを見せる。

 まるで俺を殺した奴らと同じような嫌な笑いだ。 

 だけど今はそんな彼女の笑顔すら眩しく感じる。


『その意気や良し。それでこそ勇者じゃ。我は傍観者に徹しよう。徹底的にやるのもよし、生ぬるくやるのもよし。お前の選んだ未来を見せてもらうことにするぞ。全ては勇者の赴くままに』


 そんな不気味なセリフを残してヨルは再び俺の前から姿を消した。


このお話が面白かった方はブックマーク又は広告下の☆☆☆☆☆を★★★★★に面白くなかった方は☆☆☆☆☆を★☆☆☆☆にしていただけると嬉しいです!


最後になりますがこの作品を読んでくださっている皆様に最大限の感謝を!

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