春の陽
春になって桜がまんかいになったころ、春陽くんは小学生になりました。
春陽くんは雪だるまのことが気になって仕方がなくて、入学してすぐの土曜日に再びおばあちゃんの家に行きました。
かっこいい自慢のランドセルをだいじにかかえて春陽くんはワクワクしながら車に乗っていました。
おばあちゃんの家についてまっさきに庭に走っていくと、そこに雪はなく土と新しく顔を出した草たちだけでした。
雪だるまがいつもいた場所に行くと、顔を作っていた小石と手足にしていた木の枝が落ちていて、そのすぐ近くには一輪の小さな花が咲いていました。
するとおばあちゃんが家から出てきて春陽くんが雪だるまにあげたマフラーとてぶくろを持ってきてくれました。
「これ、前に来たときおいていったでしょう。庭におちていたから、きれいに洗っておいたよ。マフラーもてぶくろもなくて寒かったでしょう」
思えば春陽くんは東京の家に帰ってからもずっと雪だるまのことを考えていて、マフラーも手袋も雪だるまにつけてあげて自分が寒いことなんてすっかり忘れていました。
「ううん。寒くなかったよ」
「そうかいそうかい」
おばあちゃんはニコッと笑って家に戻りました。
マフラーとてぶくろをぎゅっと抱きしめると、雪だるまとあそんだ日々を思い出して、むねがポカポカしました。
「また来年もいっしょにあたたかいを探そうね」
暖かくなった風が一輪の小さな花を揺らしました。
[完]
お読みいただきありがとうございました。
童話ということで、初挑戦でした。
普段と違った文の書き方をしてかなり苦戦しましたが、書ききれて良かったです。
皆様もお体に気をつけて、良い冬をお過ごしください。