さむい冬
今年もさむいさむい冬がやってきました。
毎年おうちでお母さんとお父さんといっしょに過ごしている春陽くん。
東京に住んでいる春陽くんのおうちのまわりはいつも雪がふりません。
絵本にでてくる子どもたちは、冬になると雪合戦をしたり雪だるまをつくってあそびます。
雪でも遊べず、ただ寒くて手と足がいたくなる冬が、春陽くんは大嫌いでした。
絵本を見ながら春陽くんが「本物の雪、見たいなぁ」と言うと、春陽くんのお母さんはこう言いました。
「それなら今年はおばあちゃんのおうちに行きましょうか。きっとたくさん雪がつもっているわ」
それから二日後、春陽くんはお母さんとお父さんといっしょに車でおばあちゃんの家に行きました。
車からおりて春陽くんはびっくり。
見わたすかぎりまっ白な雪にかこまれているではありませんか。
「わあ!雪すごいね!まっ白だね!」
ザク、ザクっと雪をふむと春陽くんの小さな足あとがたくさんのこります。
「ねえねえ、お庭に行ってきてもいい?」
春陽くんがお母さんに聞くと、お母さんは
「日が暮れるまでにはかえって来なさいね」
と答えたので、春陽くんはおばあちゃんの家の庭に全力で走りました。
「わあ、すごいや」
庭全体に雪は広がっていて、太陽の光を浴びてキラキラとかがやいています。
まるで夢に見た絵本の世界。
大はしゃぎで雪に飛びこむと、思っていたより硬くて春陽くんはびっくりしました。
「これが雪かぁ!んー、そうだ!雪といえば、雪だるまだ!」
春陽くんは足元の雪をかき集め、ギュッギュッと固めて大きな雪玉を作ります。一回り小さな雪玉を作ると、それを持ち上げて大きな雪玉の上に乗せました。
ふぅ、と一息ついた春陽くんでしたが、どうも何かが足りません。
じーっと見つめていると、ようやくそれに気づきました。
「そっか、手と足と、それからお顔もないね」
春陽くんは木の枝をさして雪だるまのうでに、小石を目と鼻と口に見立ててならべます。
「できた!」
笑ったような顔の雪だるまが完成し、春陽くんは雪だるまの顔につられて笑顔になりました。
空を見上げると段々とオレンジ色になってきていて、カラスがカーカー鳴いています。
「そろそろ帰らなくっちゃ!」
と言って春陽くんはおばあちゃんの家のドアを開けて元気よく
「ただいまー!」
とさけぶと、おくからお母さんが出てきて春陽くんの手をにぎって、それからギューッと抱きしめました。
「春陽ったら、こんなに冷たくなっちゃって。寒かったでしょう?」
お母さんは、外で冷えた春陽くんの体を温めてくれています。
「ううん!だいじょうぶだよ!でもおうちの中、あったかいねぇ。お母さんの手、あったかい」
春陽くんはお母さんに抱きしめられて、むねがポカポカしました。