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二章 昨日見た夢

魔夜美の夢の中に自称魔法使いの秀紀が現れる。秀紀は魔夜美と空を飛び、東武ワールドスクウェアに連れてってくれる

魔夜美は自宅に帰ってから、早速秀紀に電話を掛けた。

「無事着きました」

魔夜美が言うと。秀紀は

『それは良かった。僕の方はペンキを買ってきた所。白いペンキはジョイフル本田で。風船のペンキは100均でね』

と言った。それから

『良い夢が見られるといいねー。じゃあ、後でメールするね。君のパソコンのアドレス送ってくれたら、お店の写真送るから』

と言った。

「わかったわ。じゃあまたね!」

魔夜美はそう言って、電話を切った。この時代。電話の料金は凄く高かったから。魔夜美の自宅の固定電話から、秀紀の家の店舗の電話に掛けた。


電話を切った魔夜美は、リビングで母親の作った手料理を食べて、魔夜美の好きな油を使わない唐揚げと、玉ねぎと油揚げの味噌汁と野菜サラダだった。魔夜美の父親は自営で独りで会社の社長をしていたので、好きな時間に家に居た。今夜も晩酌しながら。愛犬のシェルティ、サムスンに味噌汁から取って、油揚げを自分の口に入れてから、吐き出してサムスンに与えて居た。

「汚いなぁお父さんは」

魔夜美が言うと。

「犬はしょっぱいのは体に悪いんだ。それにサムスンは油揚げが好きなんだぞ」

と言った。

「私疲れたからお風呂入って寝るね」

魔夜美はそう言って、食べ終わった食器を下げて。サッサと洗ってから風呂に入った。


「どんな夢が見られるんだろう」

風呂に浸かりながら魔夜美は呟いた。



その夜、魔夜美は興奮して中々寝付く事が出来なかった。

漸く眠りに就いたのは1時を過ぎた頃だと思う。

雨戸をノックする音が聞こえ、魔夜美は起き上がった。夢の中で起き上がると言うのも変な例えだが。

「今晩は魔夜美ちゃん!僕だよ開けて」

「秀紀なの?どうしてウチがわかったの?」

魔夜美が窓の鍵を開けて、雨戸を開くと。スルリと窓から、秀紀が飛び込んできた。黒いタキシードを着た秀紀はとてもカッコよく見えた。

「此処は魔夜美ちゃんの夢の中だよ!そして僕の夢の中でも有る」

秀紀はフワフワと部屋の中を漂いながら言った。

「秀紀、飛んでるわ!私の頭もぶっ飛んでるわね」

魔夜美はベッドから立ち上がって言った。



「君も飛べるさ、僕を信じて」

秀紀が優雅に左手を差し出した。魔夜美がその手に捕まると魔夜美の着ていた猫柄のパジャマが青い色のシンデレラが着るようなドレスに変わった。

「うわぁ早着替えね」

「普通、女の子って。きゃあとか言うんじゃない?」

「鏡も無いのにきゃあ、これが私?とか言う訳無いじゃない。メガネ掛けなきゃ良く見えないし」

「それもそうだ。はいメガネ」

秀紀は部屋を見回してメガネを見つけると魔夜美に差し出した。

魔夜美がメガネを掛けると。

「メガネ似合うね。頭が良さそうに見える」

と秀紀が言った。魔夜美はドレスを繁々と眺めた後聞いた。

「私飛べないわよ。本当にメガネ似合う?」

「両手で羽ばたいてご覧。僕はメガネの方が好きだ」

秀紀に言われ、魔夜美は一所懸命羽ばたいてみた。すると両足が確かに宙を浮いた。

「凄い跳べたわ」

魔夜美が感激して居ると。



「あーもう。魔夜美ちゃんの飛び方ってなってないな!!これから東武ワールドスクウェアに2時までに行かなきゃいけないのに。君ったら何時迄も眠らないし。全く帰る頃には夜が空けちゃうよ」

秀紀は魔夜美を抱き上げると。窓から勢いよく飛び出した。

ビリッと音がして魔夜美のドレスが破れる音がした。魔夜美の家は生憎一階建てで、ドレスが植え込みに引っ掛かったのだ。

「あーしまった!!まあいいやチョットぐらい。でもこのドレス買取になっちゃうな。さぁ行くよ。しっかり捕まって」

秀紀はそう言うと、フワリと空に舞い上がった。急な上昇に魔夜美は吐き気を催した。

「乱暴に飛ばないで、私酔いやすい体質なの」

「じゃあ、酔い止め飲んで」

ポケットから酔い止めを出した秀紀は、序でにエヴィアンのボトルも胸元から取り出した。

魔夜美はそれを受け取って、左手で秀紀の首ににしがみついたまま。右手で薬と水を飲んだ。

「さぁ、行くよ!」

魔夜美はビックリして目を瞑った。景色に見惚れてる余裕なんて在りゃしない。



「僕、君の事本当はずっと前から知ってたんだ。お日様って名前で、一年前くらいに研究者達の集う掲示板に出入りしてたでしょう。昨日はゴメン、君の車にチョット細工して、僕の所まで来て貰うようにやっちゃったんだ」

「確かに私お日様よ。あの掲示板、男しか居ないわよね。私も男になりきって返事書いてたけど」

ゴウゴウ言う風の中、魔夜美はやっとこさ返事が出来た。

「つまり、貴方。私のファンだって事?」

「君のファンじゃない。お日様のファンだ!お日様は凄いんだ!ネットの中で、僕の科学者仲間を滅多斬りにして。例えば幽霊が居るか居ないかっての掲示板では、居ないと言い張る僕の先輩科学者達に言ったんだよ。幽霊が居るか居ないか解るのは、文系と理系の研究者が共同研究すれば解るって。現在の所言えるのは、脳を解明するより仕方がない。脳を研究するには文系の心理学者達とシナプスの研究者つまり科学者が共同研究をするより仕方がないってね。因みに僕は居ないと思ってるけど。他にも僕が爆笑したのは、夜誰も居ない部屋で人の歩く足音が聞こえたら、幻聴だと思いなさいと言う科学者に向かって、それは泥棒だから警察を呼んでくださいと言う返答だったよ」

「それ、みんな私が書いたことよ」



「いいや、君じゃない。君が書いた気になってるだけで。君の筈ないじゃないか。君を使って誰かが書かせてるんだ。だって君は預言者だろ?それに脳科学と心理学。どっちも理解出来るなんて可笑しいよ」

「それは趣味よ。ちゃんと古本屋で立ち読みして調べたわ。ちゃんと100円払って買って家に置いてあるわよ」

「君の古本の買い方は話題になってる。適当に本棚に手をやって、10冊くらいパラ見して、3冊ぐらい買うって。あの大量の書籍群の中から、君は必要な本がわかると言うの?」

「解るわよ。ちゃんと速読してるもの。速読だから粗筋しか解らないけどね」

此処で断っておくが、携帯電話から、スマホに買い替えた魔夜美は、Google検索で調べるようになり、殆ど古本屋で本を買わなくなった。

魔夜美は夢の中でイタリアの魔法学校に通ったと言って居たが、魔夜美は少ししかイタリア語が解らなかった。それと同じくらい英語も分からなくて、専門分野の研究論文等は秀紀の仲間達が一生懸命 、一所懸命では無く、正に一生懸命に同時通訳してくれて居たのである。時々、変な翻訳が有ったり、終いまで書き終わらずに途中で途切れて居るから、魔夜美も気づいて居たが。


「引き篭もりの女の子に宛てて詩を書いた事もあったね。全然、私は幸せじゃ無い、不幸だって言う女の子にアイスクリームを食べた時は笑顔になれるでしょうって。僕はその詩を読んでアイスクリーム屋さんになろうと思ったんだ。ノーベル賞を取った人達の言った言葉を使って沢山の詩も書いたね。No. 1にならなくても良い、元々特別なオンリーワンって。SMAPの世界に一つだけの花って、お日様の書いた詩を元に作られたって噂だよ」

「チョットごめんなさい。降ろして貰える?あそこに見えるコンビニで」

魔夜美は真っ青な顔で言った。

「良いけど。この服だから、着替えなきゃ。って間に合わないの?」

ゲホッ!!魔夜美は秀紀の首から手を振りほどき、足から落下しながら嘔吐した。秀紀は魔夜美を慌てて追いかけて空中で抱き留めた。

ゲホッ!!魔夜美は秀紀にお腹を抱き止められ、更に嘔吐した。嘔吐した汚物はコンビニに停められた車達に盛大に降り注いだ。

「災難だなあの車。大丈夫かい?魔夜美ちゃん」

秀紀は魔夜美の背中を摩りながら言った。

「良かったのはドレスが汚れなかった事だけだ。ゴメンね、辛かったんだね。後五分くらいで東武ワールドスクウェアに着くよ。酔い止めの薬効かなかったね。エヴィアン飲むかい?」

「有難う頂くわ」

魔夜美にポケットから取り出したエヴィアンを渡しながら、秀紀は言った。

「帰りはユックリ帰るから大丈夫」



それからキッカリ五分して、東武ワールドスクウェアに到着した。当然、入り口は閉まって居て電気も消えて居た。外の街頭は点いていたので、少しは明かりが入っていたが。

「ギリギリ間に合ったー。今丁度2時。30分で着いたね。やっぱり空を飛ぶと速いなぁ。信号も交通渋滞も無いし」

秀紀は魔夜美を地面に降ろすと言った。それからパンパンと手を叩くと東武ワールドスクウェアのミニチュアの様々な世界の建物が鮮やかにライトアップされた。



「わぁ綺麗ねー」

魔夜美はウットリと呟いた。

「いつか僕が本物を見せてあげる。豪華客船に乗って君と僕は世界一周をするんだ」

様々な外国や、日本の有名な建物や、細かく造られた小さな人形達を観ながら、秀紀が言った。魔夜美は秀紀に手を引かれながら、吐息を突いた。

「はぁ。それは私の夢よ。ブログに書いて有ったのを読んだのね。でも私は一人で参加するつもりで貯金してたのよ。お金が掛かり過ぎるから半分諦めて居たけどね」

「一人じゃ無いよ。僕と二人でだ」

2人は互いを見つめ有って、熱い口付けを交わした。



帰りは秀紀はユックリ空を飛んだ。ユックリと言っても時速100キロくらいのスピードでだ。来る時は時速200キロを超えるスピードで空を飛んで居た事になる。

「秀紀はディズニーのアラジン見た?」

「ううん。僕ディズニー嫌いだ。魔夜美ちゃんと、もしも結婚して、子供が産まれたら、ディズニーランドは連れて行きたいけどね」

「あのね、秀紀。さっきから気付いてたんだけど。私の吐いた汚物が貴方のタキシードと私のドレスの裾に突いてるわよ」

「えぇそうなのかい?それは済まない事をしたなぁ。折角のムードが台無しだ」

「いいわよそんなの。でも貴方のタキシードもレンタルなんでしょ?」

「破れたわけじゃないから、買取にはならない筈だけど。僕、レンタルって言ったっけ?」

「ドレスが破れた時、買取しなきゃって言ってたじゃない」

「言ったっけ!でもね魔夜美ちゃん、これは夢だからね。現実じゃない。君だって魔法学校を卒業したけど魔法はからっきし使えないんだろう」

「当たり前でしょ。私は通ってたんじゃなくて講義させられてたのよ。それに私。物理と化学って苦手だから。魔法は使えないわ」

「そうなんだ。実話ね魔法は夜しか使ってはいけない事になってる。催眠術は昼間もOKだけど。もう夜がしがらみかけてるだろう?」

「それがどうしたの?」

「速度を上げなきゃいけないって事。ゴメンね魔夜美ちゃん」

秀紀は行成、飛ぶスピードを上げた。

「きやぁ!もう。仕方ないわね!さっき、アラジンの映画の話をしたでしょ」

魔夜美は秀紀の胸に顔を埋めて言った。

「あぁ。言ってたね。それがどうしたの?」

「アラジンとジャスミン姫が魔法の絨毯で空を飛んだ場面が有ったの。アラビアから中国迄を一晩で回るのよ」

「へぇー。僕達みたいだね」

「模型の世界じゃなくて本物のよ。よく酔わなかったなと思って。物凄いスピードなのよ」

「音速ジェット機だね。きっとジャスミン姫は音速ジェットに何度も乗ってるんだよ。さぁ着いたよ。魔夜美ちゃんの家が在る団地が見える。スピード緩めるね」

秀紀は上空で急ブレーキを掛けた。

魔夜美は「ブッ!」と言って、秀紀の胸に顔を押し当てた。

「それ、急ブレーキだし!」

「えーゴメンゴメン!悪いけど此処でパジャマに着替えてね、魔夜美ちゃん。誰にも見られないと良いんだけど」

街灯に照らされて、魔夜美の家の屋根の上に降りた秀紀は、謝りながら言った。

パチンと秀紀が指を鳴らすと。魔夜美のドレスは猫柄のパジャマに早変わりした。

それから秀紀は優しく魔夜美を抱き抱えると、閉まっていた窓を何かブツクサ言いながら開けて、お化けのQ太郎みたいにユックリ室内に入った。それから魔夜美をベットに寝かせると

「また今度ね!」

と言って、窓から外に出た。

「良いね、これはどんな事が有っても。アイスクリームが有った夢だからね」

秀紀はそう言って、猛スピードで外に出ると。ドラゴンボールのベジータみたいな猛スピードで飛び去った。魔夜美は雨戸とガラス窓を閉めて。直ぐに泥のように眠りに着いた。
















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