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名探偵・藤崎誠シリーズ  ジュリア編

DMは金なり 名探偵藤崎誠―ジュリア編

作者: さきら天悟
掲載日:2017/04/30

「ねえ、誠さん・・・」

ジュリアは微笑んだ。


藤崎は微笑み返しす。

だが、苦笑いだ。

ジュリアの甘い声に。

また・・・


「ありがとう」

ジュリアは藤崎の手を取った。

両手で藤崎の手を包む。

そして、ぎゅっとした。


照れ笑いに変わった藤崎は熱いものが込み上げてきた。

こんな時、首の後ろに右手を添えるのが癖だが、

その手を封じられ、耳まで熱くなっていた。


「次は・・・」

負けたと思った。

今回もまた仕事の依頼にはならないようだ。

これまで4度、ジュリアのために頼まれ事を果たした。

ジュリアの祖父母の故郷、新潟で事業を起こし、

地域に貢献したいという願いで。

シン肝試し場を造ったり、カジノを誘致したり、

城を造ったり、アマゾネスの村を造ったりした。

名探偵藤崎誠は事件も解決するが、

トラブルや悩み事も解決する。

キャリア官僚だったことがあり、

地方の産業振興など彼の頭脳と人脈を使えば難しいことではなかった。


「次は・・・」

ジュリアは藤崎を見つめる。

そこには甘えるような女性の瞳はなかった。


アマゾネスの戦士、と藤崎の脳裏に浮かんだ。

長身で、凛々しく、美しい、

ジュリアのシルエットが。

もう、一度見たいと思った。


目をつむる。

頬杖を突こうとして、顎を少し突き出すが、

両手はジュリアに握られたままだ。

一瞬にしてイメージが広がった。

『DMは金なり』と言うちょと暗号化めいたフレーズとともに。

その時だった。

唇にちょこんと何か当たった。

驚いて、目を開ける。

そこにジュリアの顔があった。

耳がさらに熱くなった。


「キスの催促じゃないの?」

ジュリアは微笑む。


えッ、と言う口をしたが、藤崎は言葉を出せなかった。


「冗談よ」

ジュリアは右手の人差し指を立てた。

そして、この指だというように2度振った。



藤崎は、恥ずかしさを隠す様に下を向いた。

クッと顔を上げた時には、いつもの自信が溢れた顔に戻っていた。

「今、ブームになりかけているDMは金になる」


「ダイレクトメール?」

ジュリアは小首を傾げる。


「DM+金」


「きん?」

ジュリアは再び傾げた。


「そう、ゴールド」


ジュリアは一つ首を縦に振った。

「ダムね」


藤崎は頷く。


DM+金(GOLD)=DAMUという訳だ。

まだ分からないって?

そんな人は元素記号を復習した方がいい。

金の元素記号はAUだ。


「ダイビングね。

ダムで」

ジュリアはダイビングが趣味であることを藤崎に話したことがあった。


藤崎は大きく頷いた。


ジュリアは遠い目をした。

「ダムの底にダイビングスポットを作るのね。

船を沈めたり。

神殿なんていいわね。

カリオストロの城みたいに」


藤崎はニヤリと微笑む。

そして、胸に手をあてる。

「名探偵にお任せあれ」



半年後、新潟県N市に研究所が設立された。

そして、その2年後、研究所近くにあるモノの製造工場が建設された。






「ねえ、ずいぶん待たされたわね」

ジュリアは頬を膨らませた。

「ダム湖の底に建設にそんなに時間がかかったの?」

あッ、とジュリアは声を上げる。

「分かった。

魚を育てたんでしょう。

ダイビングと養殖と兼ねて」


それもいい考えだと藤崎は思った。

「これに着替えて」

藤崎はジュリアにウェットスーツを渡した。


ジュリアは変な顔をする。

当然、ダイビングと聞いて自前のウェットスーツを用意している。

が、素直に受け取り、着替えに向かった。


見事なプロポーションに藤崎はうっとりした。

派手な原色で蛍光色のウェットスーツが似合っている。

「これを付けて」

藤崎はゴーグルをジュリアに渡した。


ジュリアは手に取り、ゴールの正面に目を凝らす。

「カメラが付いてるの?」

そのゴーグルは愛用のゴーグルより一回り大きかった。


藤崎はニヤリとした。


ジュリアはダイビング用に作られた階段から湖に降りる。

ジュリアは首を振った。

思った以上に水が濁っていた。

ジュリアはゴーグルを確認し、すっと水に入った。


藤崎は、自分を信じてくれるジュリアの後に続いた。



ジュリアは目を見開いた。

透き通った青い海が広がっている。

水面には太陽の乱反射。

下に魚を見つける。

不慣れな藤崎がいることを忘れ、一気に潜る。

色鮮やかな魚の群れ。

背中を突かれる。

藤崎だと思ったが、大きなブルーに輝く魚だった。

ジュリアは藤崎の手を取って、泳いだ。

前方に大きな影が、だんだん近づいて来る。

大きい。

ジュリアは避けようとしたが、藤崎に引っ張られた。

そして、真上をジンベイザメが通過した。

ジュリアは通り過ぎたジンベイザメの後ろを見つめた。



「すてき」

水から上がったジュリアは藤崎に抱きついた。


藤崎はおそるおそるジュリアの背に手を回す。


ジュリアは藤崎をギュッと抱きしめた。


藤崎は拳を強く握り、後ろでガッツポーズを作った。


それから、二人は・・・





解説しよう。

藤崎の行ったのは、ダムの底に、神殿を造ったり、

魚を養殖したりすることではなかった。

VR、ヴァーチャルリアリティー、仮想現実だ。

VRの研究所をN市に設立したのだ。

そして、完全防水のVRゴーグルと

体感できるウェットスーツを開発した。

それで、沖縄の海を再現したのだった。

車で手軽にダイビングに行け、

練習にもなるので需要が見込まれると藤崎はふんだ。

それに研究所と工場で、1000人を超える雇用を生んだ。

すべてジュリアの名前で行なった。

資金はジュリアが出しているので当然だが。

でも、それだけではなかった。

藤崎の狙いはさらに続く。

N市をVRのシリコンバレーにするという。

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