羅生門・未来風
皆さんは芥川龍之介の羅生門はご存じだろうか。
今日は、その羅生門がもし近未来風ならどうなるか、を書いてこうと思う。
世界滅亡規模の災害から、三年。
人類という種族そのものは、辛うじて残ったが、大勢の犠牲が出てしまった。
おかげでキョウトには強盗や人殺しなどが多く出現し、他の人間達も他の街に逃げてしまったのだ。
だが中には、自分の街を離れたくないという思いや、キョウトを復活させたいという思いで残る者もいる。
そういう者が、意外と盗人だったりするんだけどな。
俺、下野厚人もこの街から離れたくなくて、とある門の近くで寝転がっていた。
実を言うとそこが、盗人が一番出やすいスポットなのだが、俺がそんな所で寝起きをしているのにはわけがある。
俺はこの前まで高校に通っていたのだが、孤児なので、とある主人の所で働いて、学費や生活費、そして食事を頂いていた。
そんなある日、主人が急に俺達を解雇させたのだ。
主人は本来、人をそんな簡単に解雇させるような人柄ではない。そうしなければならなかったのも、世界滅亡規模の災害のせいだ。
つまり帰るべき家も無いし、学費が払えない今、高校も退学するしか無くなったのである。
こうなると、俺達に残された道は一つしかない。
盗人になる、という選択肢だ。
これ以外の手段は、何日経っても思いつかない。
俺はもうその数日間、このボロボロなブレザーから着替えてないし、ろくな寝床も無く。飯に至っては、全く食べていない。
だけど俺には、盗人になる勇気は無い。
しばらくすると雨が降り始め、門の上にいたカラスもどこかに行ってしまった。
俺はくしゃみをして立ち上がり、門の上からの音を聞いた。
どうせ死人しかいないと思っていたが、どうやら俺の勘違いだったらしい。
ハンドガンに弾が残っていることを確認し、俺は階段を駆け上がる。
そこにいたのは、女の骸から髪を抜く老婆だ。
しかし老婆の顔は、人間に見えなかった。
まるで化物のようだ。
俺はそんな老婆を怖いと思った。勿論怒りも感じた。
だが、好奇心のようなものが少しだけ混じっている。
俺がそのまま奴の所に歩くと、奴は気付いたのか、逃げだそうとした。
「アンタ、どこに行くんだ!!」
老婆の足目掛けて、拳銃の引き金を引く。
老婆はそれに驚いて、転ぶ。
俺はそのままゆっくりと歩み寄り、銃口を向けた。
「何をしていたか言えよ。言わねえと、これだからな」
老婆への怒りはとうに消えてしまった。
あるのは、満足感だけだ。
「俺は別に警察でも何でもねえよ。ただの高校生だ。
お前が何してたかだけ言えばそれで良い」
老婆は目を見開き、かすれた声で呟く。
「髪を抜いて、鬘を作ろうとしただけだよ。兄ちゃん」
老婆の答えは、平凡過ぎてつまらなかった。
今すぐにでも射殺してやりたいと思っている。
「死人の髪を抜くことが悪いのはあたしも知っておるわい。
でも此奴は生前、不正な商品で金稼ぎをしておった。
だから、許してくれるんじゃないだろうか」
俺はそれを聞いて、呆れた。
だけど今の言葉で、俺の甘い考えを捨てることが出来た。
「なるほどな。
だったら俺がアンタの服をボロボロにしようと問題ないな?」
「それってどういうことだい?」
老婆の服を掴み、そのまま千切る。
老婆を全裸にさせてから、俺はそのまま拳銃をしまって門の下へと逃げた。
松野心夜です。短編です。
羅生門を最近授業で習い、これがもし世紀末ならどうなるだろうと思って書きました。
一応厚人は退学した高校生としか記述がないので、16~7くらいだと思って下さい。
では皆さん。バイナラ。