この日記を読むあなたへ
いまから、ひとりの男の子の話をしなければなりません。
あの光のような男の子、ぼくの大切なともだちについて、みなさんにお伝えしたいことがあるのです。
みなさんはだれかを紹介するとき、そのひとのなにを伝えようとしますか。そのひとの外見のすばらしさ、それとも頭の良さでしょうか。あるいはこんな仕事をしているとか、こんなものを持っているとか、そういうことでしょうか。
残念ながら、ぼくはあまりそういうことに興味はありません。
ぼくは彼のこころについてお話したいのです。
少なくともぼくは、これまで彼のようなひとに出会ったことがありません。そして、これからも出会うことはないでしょう。彼についてお話するというのは、ぼくのこころの大切な要求なのです。
さて、ぼくはいま、白く小さな星の上にひとりぼっちでいて、この小さな物語をつづっています。ぼくは〝星のうみ〟をひとりで旅をしながら生きている、孤独なひとなのです(星のうみについてはあとでお話します)。
彼もそうでした。彼もまたずっとひとりぼっちで生きていたのです。さっき、ぼくはひとりぼっちだとお話しましたが、別にこれまでにだれかと一緒にいたことがないわけでも、だれかと話したことがないわけでもありません。いまはひとりでいるというだけです。
けれど、あの愛すべき坊ちゃんはちがいました。彼はずうっとひとりだったのです。だれのとなりにいるのでもなく、だれとも話すことなく、あの小さな白い家のなかで、あせることのない喜びとともに暮らしていたのです。つまり、彼と彼の星にとって、ぼくがはじめてのお客さんであり、はじめての友だちだったのです。
「さびしいと感じたことはないなあ…でも、あなたがいなくなったらさびしいよ」
坊ちゃんは何度かそう言ってくれました。そのときの彼の笑顔をいまでもよく思い出します。ぼくのこころの宝物です。
これ以上、もったいぶるのはやめましょう。
いまからお話するのは、ぼくが自分のふるさとの星を飛びだし、あの坊ちゃんと出会うまでの旅と、彼に出会い、ともにすごした日々についての物語です。
もうどれくらいになるでしょうか。あのころのことを思い出すと、なんとも言えない気持ちになります。泣きたくなるほど悲しくもなりますし、同じように嬉しくもなります。そして、どうしようもなく〝ひとり〟ということの大切な意味について考えたくなるのです。
ひとりってかけがえのないものなんですね。