チャックの中に あられは幾つ入るのか
チャックのあるワンピース
一丁前じゃない私の一張羅。
グリーンのギンガムチェックにベースは紺色
これだけで秋を着た気分になる。
薄い上着を羽織って
秋を探しに街へ繰り出す。
最近の流行りなのか、
背中にチャックがある服が増えた。
あの子もチャック
あの人もチャック
どうぞと席を譲ったお姉さんにも、
バスの中で足を踏まれた
その人の服にも付いていた。
街を見渡せば、辺りは薄い扉だらけ
足を摩りながら
私はじっと女の扉を見つめる。
そろそろと開けたその中に
あなたは何を隠しているの?
袋いっぱいのあられを
背中に ざあざあと流して、
ウエスト近くでキュッと絞る。
するとあら不思議
チャックを開けると、
そこにはあられもない姿が…
彼女のドアノブに手を出しかけて、
急いで引っ込める
なんて馬鹿な事を考えているのだろうと
ふと真顔になりながら、私はバスを停めた。
街は衣替えの季節を迎えている様で
何処の店も忙しそうだ。
邪魔にならないよう細心の注意を払って、
久々のひとりの時間を楽しむ。
誰とも関わらない日というのも
たまにはいいもんだ。
忙しい日々に嫌気が差して、
私は扉の中へと逃げ込んだ。
私のチャックの中には
一体何が入っているのだろう。
ちっちゃな自尊心?
愛と勇気と希望?
それとも甘いお菓子の詰め合わせ?
あられのあられもない姿なのか。
眠気覚ましの珈琲を
喉を鳴らして飲むと
舌がひりひりとした。
砂糖一杯分の甘さが足りない。
苦いものばかりが増えていき、
どんどん息苦しくなる。
からっぽなスプーンで
珈琲をぐるぐるとかき混ぜると、
黒い渦の中で
女は深い深いため息を付いた。
結局は人と関わらなければならないのか。
その結論に、何処かでほっとしながら
砂糖壺に手を出しかけたが、
辞めることにした。
今日は砂糖も甘味も要らない
勿論あられもいらない
清々しい秋晴れの高い空を見つめながら
ゆっくり帰路に着く。
何気無く背中に手を回して
さっと青くなった。
チャックが少し開いている。
やってしまった
中からころんと出てきたのは
真っ赤な一粒のあられと………




