1-9
「じゃあ、いこっか。私の村へ」
やっといく気になったのか。
が、一歩踏みだそうとして、振り返った。
「う~ん……やっぱり、やめた。」
やめるのかよ。
もうここまで歩いてきた意味、ホント何なの。
「今日は、あの宿に戻ろう。」
そうなるんだ。
「それか、もうすぐいったらある宿にする?」
どっちでもいい。
「どっちにしよう?」
主人は腕を組んで悩む。
俺は答えなくていいよな。
──訊かれると思う。
じゃあ答えを考えとけってか?
──うん。
「ねぇ、おにいちゃん」
──ほら。
「?」
「どっちがいい?」
……う~ん。
どっちでもいい。
お前は?
──君の好きな方がいい。
俺にはそんな決定権無いって。
──そんなことないよ。
そんなことあるって。
元々俺は……
「おにいちゃん?きいてる?」
聞いてる。頷いておく。
──早く答えなよ。
なんて。
──君のいいように。
そう言われてもなー……。
「じゃぁ、じゃんけんしよう。」
うん、そうしよう。それが早いよきっと。
「私が勝ったらもう少しいったところにある方で、おにいちゃんが勝ったら同じところ。」
この選択……主人て、違う方の宿に行きたいんじゃ?
──そうかもね。
「じゃん、けん、ぽん」