ハヤブサ団
「ただ闇雲に敵に向かっていくのは、勇敢とは言えない。こっちの力が勝って
いようが劣っていようが、勝敗を大きく左右するのは作戦だと、アレクサンドロスの
兵法でも習っただろう」
今日も、ハヤブサ団は、士官学校の帰りにいつもの溜まり場である小高い丘の上に、
やってきた。
リーダーを勤める少年ダンは、皆の前で腕を組み、とても十一歳とは思えないよう
な演説ぶりだ。
「従って、今日は、ちゃんとした作戦を立てて、敵を攻撃する。俺と作戦部長
クラウスの考えた案を、発表する」
作戦部長というクラウスは、拾った木の枝で、地面に図を書き出した。
「ここが敵のいる場所だ。まずは、偵察隊が、やつらに見つからないように、敵の
人数、主要人物の背格好、場所の確認とともに逃げ場などがあるかなどの地形を、
ざっと調べる。その上で、俺が指示を出す。偵察にいくのは、カルバン、ハンス、
パウルの三人だ。いいな? 」
「おう! 」
ダンに名前を呼ばれた三人の男児は立ち上がる。
「そして、今回は班を二つに分ける。真っ向から攻撃を仕掛ける班と、敵の逃げ道に
待ち伏せする班だ。待ち伏せ班は、俺が直接指揮を取る。正面からの特攻隊長は……
マリス、お前がやってくれ」
はっと、マリスが顔を上げる。ダンの黒い瞳が、彼女を見下ろす。
「ダンのアニキ、マリスは女だぜ? 女には、ちょっと酷なんじゃないか? 」
「そうだよ。マリスは一番最後に入団したヒヨッコなんだし、もっと強いヤツに任せ
ればいいじゃないか」
仲間の一人、イガクリ頭の太った少年ドミニクスが口を挟んだ。
数人の少年たちが、同じように意見する。
「これは、マリスが、このハヤブサ団にふさわしいかどうか、テストも兼ねてるんだ。
入団したからには、女だとか男だとかは、関係ない」
ダンの凛とした声が、彼らを鎮める。容赦のないリーダーの言葉に、誰もが、女に
は荷の重い仕事だと思い、マリスに同情するものまでいた。
ダンは、再びマリスを見下ろす。
「なるべくハデに暴れて、奴等の注意を引きつけておくんだ。その間に、逃げ道を
塞いだもう一つの班――つまり、俺たちが、敵を挟み撃ちにする。やってくれるな? 」
「ええ! 」
マリスは嬉しそうにダンを見上げて、微笑んだ。
(やっと、あたしにも面白そうな役がまわってきたわ! )
皆の心配とは裏腹に、彼女としては充分やる気であるようだ。
マリスは拳を握りしめるとともに、気持ちも、ぐっと引き締めた。
周りを岩山に囲まれた一角は、町の住民たちとは明らかに様子の違う、人相の悪い
大柄な男たちばかりが二〇人ほど、焚き火を囲み、酒のツボを手に大声で語り合って
いた。
幅広の革ベルトを肩から下げる独特のコスチュームを着ているのも、共通している。
「今日は、どの辺りを襲うか? 」
「この間の稼ぎは今ひとつだったからな。ダンク・ロードあたりでも、警備の手薄な
ところがあったぜ」
火の側には、大きくずっしりと、宝の詰まった、重たそうな箱が、いくつか並ぶ。
彼らは山賊の集団であった。
頭を丸く剃った者が多く、モヒカン刈りも少々いる。
太い革のベルトは、よく見ると武器を収納しやすい作りになっていて、ナイフや
混紡などを仕込んでいる。
腰には、大きな段平を差し、鉄の棒の先に鎖で刺のついた打撃用の球を
ぶら下げたフレイル、クロスボウ、長柄、その他、士官学校では見慣れない突起の
あるハンマーなど、様々な武器が地面に置かれていた。
そこから離れた茂みの中では、特攻班に選ばれた五人が身を潜めていた。
「あの中央にいる、もしゃもしゃの胸毛を生やした、ひときわゴツいハゲがリーダー
らしいってことだったわよね? パウル」
特攻隊長に任命されたマリスが、隣の偵察隊の少年に確認する。
「よーし、じゃあ、そろそろ行くわよ」
「ちょ、ちょっと待てよ! 先に弓矢で敵を驚かすとかした方がいいんじゃないか?
特攻隊長だからって、自分から先頭に立たなくても……せめて、俺たちが先に行く
から、お前は後から来いよ」
「そうだよ、俺たちの方が慣れてんだから」
「アニキだって言ってただろ? ちゃんと作戦を立ててからって」
少年たちが、口々にマリスを引き止めた。
「作戦は、もう決まってたじゃない。あたしが先頭で行くわ。みんなは援護をお願い」
そう言い終わるか終わらないうちに、既にマリスは茂みから飛び出していた。
「ちっ! これだから、女はしょうがねえ! 何もわかっちゃいねえんだから! 」
「みんな、マリスを援護に行くぞ! 」
少年たちも、一歩遅れて、マリスの後に続いた。
「えーい! 」
「うぎゃあああ! 」
「なんだ、なんだ!? 」
突然、賊のひとりが悲鳴を上げ、頭を押さえ、倒れこむ。
山賊たちの寛ぎの場は、一瞬にして緊張が走る。
頭を殴られた賊が振り返り、山賊たちが同じ方向を見ると、ひとりの少女が
立っていた。
「なんだ小娘! いきなり何しやがる! 」
「俺たちを誰だかわかってて、やったんだろうな! 」
禿げ頭、モヒカンなどの男たちが武器を手に立ち上がり、マリスを取り囲んだ。
その巨体は、一〇歳でも長身の彼女の倍はある。
その時、マリスの後ろからは、賊目がけて、ひゅんひゅん矢が向かってきたの
だった。
「なっ、なんだ、なんだ!? 」
山賊は面食らい、慌てふためいて、身を隠す岩を探し出す。
すかさず、マリスが飛び蹴りを喰らわせていく。小柄な少女のただの蹴りとは思え
ないほど、大の男たちは吹っ飛んでいった。
弓矢を放っていた少年たちも、剣を手に、わーっと駆け出していく。
「なんだ、この小僧どもは!? 」
奇襲攻撃に始めのうちは混乱していた山賊も、相手は子供とはいえ本物の剣を
持っているのに気付き、とにかく応戦することにした。
子供達と野盗の小競り合いは始まっていた。
カン、カン、カン、カキーン!
「うひゃあっ! 」
賊二人の段平は、マリスの剣ひとつに払い落とされていた。
「なっ、なんだ、この小娘は!? 」
「おーい! 誰か来てくれー! 」
賊がさらに二人集まる。二人は足元に落ちている仲間の剣を見てから、じろりと、
マリスを見た。
新たに現れたその二人をも相手に、マリスは剣を構え、大胆不敵な笑いを浮かべた。
「小娘のくせに生意気な! 」
段平を向けられたマリスは、ひらりと空中で一回転すると、一人の賊の顔の上に
着地した。
「うぎゃっ! 何すんじゃーっ! 」
顔を踏み付けられた賊は目も見えず、両手ではたき落とそうとするが、彼女は、
そのまま木の枝に飛び移り、くるっと回って枝の上に立ち上がり、見下ろした。
山賊のほとんどが、マリスに注目していた。
「小娘が……! 」
少年たちを相手している者以外は、マリスのいる木の下に集まり、忌々(いまいま)
しそうに、ぎりぎりと歯を鳴らし、凶悪な形相で、彼女を睨んでいる。その数は、
十人以上はいた。
「アニキ」
マリスたちのいた反対側の茂みでは、逃走経路を塞ぐ役の少年たちが控えていた。
「あんなに大勢の賊が、マリスひとりに! 早く行ってやった方がいいんじゃ……? 」
「いや、まだだ」
少年たちが心配そうに顔を見合わせるが、一言だけそういうと、ダンはそれ以上
喋ろうとはせずに、じっと戦況を見守っていた。
(マリスは何か特殊な技を使う。それも、俺たちが習ってきたような体術にもない
ような。それが、どれほどのものかはわからないが、とにかく、俺は、この目で
確かめたい! )
ダンにとって、それは賭けでもあった。
もし、マリスの得体の知れない体術が、たいしたことがないなら、今のうちに
助けに行った方がいいはずであった。
だが、彼は、なんとなく彼女の技の秘密には気が付き始めていた。
(もし、あの技の正体が、俺の思うとおりだったなら……勝てるはずだ。あのくらい
の山賊たちには)
しかし、それも、その技を確かに極めていたら、の話であった。
黙ってじっと見守るダンの合図を、少年たちも待つ。
「降りて来い、小娘! 」
「大人をからかうとどうなるか、教えてやる! 」
口々に叫ぶ山賊を見下ろし、マリスは目で人数を数えていた。
(ざっと十二人。てことは、パウルたちが引き受けてる分と合わせて二〇人。
よし、誰も逃げてないわね)
マリスは、枝から地面に飛び降りた。
「へっへっへっ、お嬢ちゃんよ。おじさんたちを怒らせて、悪い子だぜ」
「その綺麗な顔に免じて、命は助けてやろう。その代わり、どこに売り飛ばされ
るかは、保証できねえがな」
山賊は、品の悪い笑いを浮かべ、マリスを取り囲んだ。
「そらよっ! 」
ひとりが段平を振り上げると、全員が一斉に武器を彼女に突き出した。
身を屈めてよけた彼女は、持っていた剣で、それらを真上にはね除けた。
その影響でよろめく山賊の武器を、次々と払っていく。武器を飛ばされた賊は、
あまりの勢いにふっ飛ぶ者もいたほどだ。
「なっ、なんだ、この小娘!? 」
「ちきしょーっ! 小娘のくせに、なんて力だ! 」
そんな声が賊の間で流れていた時、木の幹で作られた巨大ハンマーを持った、
一際身体の大きい男が、マリスの剣を、ガシッと、そのハンマーで受け
止めた。
「へっへっ、力比べなら負けねえぜ! 」
丸坊主の頭には、大きな切り傷がある。力を自慢するだけある太い筋肉の腕に、
力が込められる。
ぎりぎりと、マリスの剣が、ハンマーに食い込んでいく。
バキッ!
マリスの剣が折れた。
待ってましたとばかりに、男は、マリスを抱え込む。
「捕まえたぞ、お頭! この生意気な小娘を、捕まえやしたぜ! 」
賊の間から、ずいっと進み出て来たのは、情報通り、胸に剛毛を生やした、禿げ頭
の、先の男にも負けず劣らず、これもまた一際大きな男であった。
「小娘、なかなかやるようだったが、ケンカを売る相手を間違えたようだな」
男は、深いな濁声で、太い手腕の間から、顔だけを覗かせているマリス
を、残忍な笑いを浮かべた顔で、見下ろした。
「アニキ! マリスが捕まった! 」
「早く助けに――! 」
身を潜めた少年たちの誰もが、ダンを振り返る。
「いや、今行っても、奴等は、マリスを人質に取って、俺たちの動きを封じるだろう。
もう少し、待つんだ」
「だって、それじゃあ、マリスが――! 」
口々に言い立てる少年たちを、ダンが、手で制する。
「マリスには、自力でなんとかしてもらう。あいつなら、それができると、俺は信じ
てる! 」
ダンの強い口調に、少年たちは黙りこくった。
「さて、どうしてやろうか」
山賊の頭の濁声が、愉快そうに響く。
マリスは依然キッと、頭を見ている。
「気丈な娘だ。顔も整っておる。あと数年すれば、いい女になったかも知れなかった
が、残念だったな」
頭も賊も、笑い声を上げた時だった。
マリスを羽交い締めにしていた男の身体が、宙に浮かんだのだった。
「う、うわあああ! 」
浮いている男自身も、それを目の当たりにしている賊たちも、皆が、我が目を疑い
たくなった。
男の巨体は、あっさりと、マリスの頭上を大きく舞い、地面を滑っていった。
山賊は、目の前で起きた信じられない光景に、目を白黒させるばかりであった。
すかさず、マリスが巨体男の持ち物であった鎖のついたハンマーを掴み取ると、
鎖の部分を持ち、ブンブンと振り回し、賊に向かって走り出したのだった。
「うぎゃああああ! 」
「ひぃーっ! 」
賊が、ハンマーをよけて逃げまくり、当たったものは、弾き飛ばされ、地面に叩き
付けられた。
マリスは、あわあわ言っている山賊の頭の顔を、飛び上がり、両膝で蹴り倒すと、
逃げ回る賊に向かい、ハンマーを投げつけ、ふわっと空中に浮かび上がった。
それを見た誰もの動きは止まっていた!
彼女は、逃げ惑う賊を上から蹴り倒し、それを土台に飛び上がっては、次々と蹴り
倒すのを繰り返していた。
バランスを取る為に広げられた両腕は、蝶やトリの羽根を思わせ、彼女の下で起き
ている阿鼻叫喚などは、一切関係のないように、その姿は、まるで
何かの舞を舞っているかのように、優雅なものだった。
決して地面に降り立つことなく、空中から山賊に蹴りを降り注いでいる彼女の、
すさまじいまでの華麗さには、誰もが心を奪われたように、動きを停止してしまって
いた。
(やっぱり、そうだ! マリスは極めていたんだ。東洋に伝わる女だけの武道
『武遊浮術』を! )
ダンは、立ち上がって、その光景に釘付けとなっていた。
そして、満足したように頷くと、後ろにいる仲間たちに言った。
「みんな、行くぞ! 」
少年たちは、彼に続き、茂みから、勢いよく駆け出していった。
どちらが勝利を収めたのかは、一目瞭然だった。
山賊は、命からがら逃げ出した者は数人いたが、殆どの者は負傷し、
蹲り、呻き声を上げている。
対する少年戦士たちは、それほどの深手を負わずに済んでいた。
ダンが岩の上に立つ。
「今回も、俺たちハヤブサ団の勝利に終わった。皆、よくやってくれた! なにより
も、今日の功労者は、特攻隊長を勤めてくれたマリスだ! 」
おう! と、少年たちは歓声を上げる。
ダンがマリスの手を取り、自分の立つ岩の上に引き上げた。
「彼女の実力は、みんなもわかったな? 女でも、こいつは充分山賊どもをやっつけ
られた。今日からマリスは、ハヤブサ団の副将、俺の右腕だ! 」
ダンが拳を上げると、少年たちが再び大きな歓声を上げた。
マリスは自分が認められた嬉しさに頬を紅潮させ、はにかんだように、皆とダンと
を見た。
「またあなたたちは、こんな野蛮なことをして! 」
しばらくすると、少年たちの間には、マリスの他に、もうひとり少女が混じって
いた。
彼女が、彼らの傷にてのひらを向けると、不思議なことに、傷は、みるみる塞がっ
ていく。
町の巫女見習いの娘マーガレットであった。
マーガレットは、呆れた顔で、ダンを見る。
「いくら山賊だって、なにもしていないのに襲うなんて、いけないわ。そんなの、
ちっともいいことじゃないわ! 」
美しい金髪は、後ろでリボンで結わえられ、サファイアのような青く大きな瞳は、
咎めるように、ダンに向けられていた。
「無法者相手に『人の道』を説いてもしょうがないだろ? 」
ダンは笑った。
「悪党は、こういう運命をたどるもんなのよ。悪いことはするもんじゃないわねー」
岩の上で、ダンと背中合わせに腰掛けているマリスが、足をばたばたさせ、
ころころ笑った。
「マリス! あなた、女の子でしょう!? 」
マーガレットは、マリスを叱りつけたが、彼女に懲りる様子はない。
「マーガレットちゃーん、早く、こっちを看てくれよぉ」
治療を待つ少年たちが、甘えた声を出す。
士官学校での精鋭を集めた少年騎士団のはずが、戦いの後には必ず誰かに呼ばれて
くるこの可愛らしい娘の前では、皆このようにだらしなく甘え出すのであった。
「本気で俺たちにかかってくるところに、訓練では味わえない殺気があるんだ。
俺たちが本当の騎士になった時のことを考えて、今のうちから特訓しておく必要が
あると俺は思う。対戦相手としちゃあ、手頃だろ? 間違って死んじゃっても、
喜ぶ人の方が多いくらいだし」
「そうよねえ、普段は人々に迷惑かけてる野盗も、これなら役に立ってるって言える
んじゃない? あたしたちの訓練のためっていうのは、お国のためでもあるわけだし
ね」
ダンとマリスは、互いの屁理屈に、おかしくなって笑い出した。
マーガレットは、溜め息をついた。
「もういいわよ。あんたたちには何も言わないわ。言っても無駄でしょうから」
と、諦めたように、治療の続きにとりかかった。
少年たちも家路につき、辺りはすっかり日は落ち、星が見え始めていた。
大木の太い枝に、ダンとマリスは並んで腰掛け、町の灯りを見下ろした。
「俺は、もうすぐ十二になる。士官学校は来年卒業だ。その先は、それぞれの希望で、
軍隊に正式に入るかどうか、わかれるんだ。家の稼業を継ぐ奴もいれば、国立学校に
進む奴もいる」
僅かな沈黙の後、ダンの口が開いた。
「ハヤブサ団は、卒業と同時に解散だ」
マリスは驚いて、彼の顔を見つめた。
「どうして? まだ卒業しない子だっているじゃない。あたしだって、後一年あるわ。
なにも解散することなんて……」
「クラウスや、他の卒業する奴ら同士話し合って、そう決めたんだ」
彼の決心が固いのは、その黒い瞳を見れば、マリスにはわかる。
「俺はな、マリス、卒業したら、いつか本当の騎士になって、ベアトリクスのために
戦うんだ。それは、小さい頃から、そう決めていたんだ」
こくんと、マリスが頷く。それは、彼女にも、よくわかっていた。
「だけど、ハヤブサ団をやっていくうちに、もうひとつの夢が、俺の中に湧いてきた
んだ。……笑うなよ」
ダンは、マリスに、わざとしかめっ面をしてみせた。
マリスが頷くのを確かめると、彼は視線をもとの町に戻し、しばらくしてから口を
開いた。
「お前だけに言うけどな、……俺は、いつか、自分だけの軍隊を持ち、自分の力で、
ひとつの国を取りたいと思ってるんだ」
マリスは黙って、彼の横顔を見つめていた。
「俺は、ひとつの国を手に入れる。または、作り上げたいと思ってる。俺は、……
一国の王になるんだ……! 」
彼の目は、町ではなく、夜空に瞬く星々に注がれていた。
強い光となって。
「すごいわ、ダン! 」
マリスは、自分もわくわくしてきたように、頬を染め、瞳をきらめかせた。
(やっぱりダンはすごいわ! 大きな目標を持って、突き進んでる。士官学校の生徒
たちですら、彼ほどしっかりした信念を持った人は、いなかったように思えるわ。
ダンなら出来る! きっと! )
マリスは、尊敬の意を込めて、彼を見つめていた。
そんな彼女に、ダンは、打ち明けて良かったと、安心したように微笑み、マリスの
紫の瞳を、穏やかに見つめ返した。
(俺は、絶対に、一国の王になってやる。自分の王国そ作り上げるんだ! そして、
その隣には、お前が……お前がいるんだ、マリス……! )
二人は、夜空の中で、それからしばらく過ごしていた。




