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letters to another me

作者: 鳥越生花

楠木那多琉へ


私はね、小さい頃は誰にでも私と那多琉のようなそっくりで仲よしの双子がいると思ってたの。だけどなかなかみんなの双子が現れなかった…、当たり前なんだけどね。でもそのときの私は、まだ何も知らなかったから、友達に双子じゃないの?って聞いたんだ。そしたら、その友達はね、私は一人っこなんだよって教えてくれたの。初めてみんなには双子がいないって知って、私は少し驚いた。だけどね、そのときは私は私と那多琉は特別な関係なんだなって思った喜びのほうが強かった。私たちは神様に特別に選ばれて、二人一緒に生まれてこれたから、こうやって今手紙を宛てることができたんだよね。なんだかもう一人の自分に話しかけてるような気分だけど、やっぱり、那多琉は那多琉だよね。私の可愛い妹であり、ときには頼れるお姉さん。私はどっちの那多琉もすごく好きだよ。それでその那多琉と同じように育つことができて、とっても感謝してる。小さい頃に、なっちゃんかなちゃんって呼ばれるたびに何だか嬉しかった。ああ、私は那多琉と一緒なんだなって思えたから。多分、多分だけど、那多琉もそう呼ばれるのが嬉しかったんじゃないかな。私と考えてることも殆んど一緒だもんね。それに私は覚えてるんだ。あれは確か私たちの四歳の誕生日のときだったよね?那多琉が私にこれからも一緒にいようねって言って頬に小さくキスをしてくれた。私、それがずっと忘れられなくてさ、辛いときになると思い出してたんだよ。那多琉は何でも悩んでたら二人で相談し合おうって言ってくれてたんだけど、一番の悩みは私のことで那多琉を悩ませないようにするっていうことだったから、少し辛かったんだ。一緒だったらどうしようっていつもも考えてた。だから恋とか、そういうことってなかなか手が出せなかったの。きっと私が好きになる人は、那多琉が好きな人だと思うから。好みも同じだもんね、私たちは。それに、同じってことはさ、私のことを好きになってくれる人がもし現れたとしたらその人は那多琉のことも好きになっちゃうってことだよね。もしも私の「加那琉」っていう名前を気に入ってくれる人がいたら別だけどさ。だからどうやって恋をしたらいいかなんて全然わからなくって、ずっと男の子を好きになることなんてできなかった。それになんとなく、人を好きになってしまうってことは辛いことだって気がしてたから、怯えてた。まあ、そのお陰で友達とか那多琉とはたくさん遊ぶことができて、よかったけどね。

そういったら、私たちは本当にたくさん遊んだよね。友達にさ、私が那多琉を名乗って驚かせたり、小学校でクラスが別になったときも私たちは勝手に入れ替わっちゃって、先生に怒られたこともあったよね。あのときは全然気づいてくれない先生が悪いんだ、なんて思ってたけど、考えたら私たちってすごい迷惑な悪戯してたよね。先生じゃわかるわけないもん。お母さんとお父さんに私たちくらいかな、どっちがどっちかわかってくれるのは。何でだろうね、お母さんとお父さんは絶対に騙せないんだよね。やっぱり親だからかな?それとも私たちには実は印がついてたりするのかな?どっちにしろ、すごいよね、私たちが見分けられるって。だけどね、私は一緒でもいいと思ってるんだ。私のことを那多琉だと思ってくれる人がいるとさ、また私たちが入れ替わってるの知らないなって悪戯が成功したうれしさと、那多琉に間違われたっていう嬉しさが沸いてくるの。やっぱり私は那多琉と同じに見られたいみたい。なぜかはよくわからないけど。自分でも那多琉に憧れるのは自分に憧れるようなものだって思ってる。だけどやっぱり那多琉は私、加那琉じゃないから、どこか憧れを持っちゃうんだよね。別に「加那琉」っていう名前がいやなわけじゃないし、自分の考え方が嫌いなわけじゃない。だけどやっぱり私は私自身よりも那多琉が好きなんだ。本当に特別な存在で、不思議な存在。きっと私たちじゃなきゃわからないよね、こういうのって。もしも那多琉が那多琉なら、きっと同じ考えだよね。私と同じなんだから、そう思ってくれてるよね。私はね、那多琉には一切嘘はついたことがないよ。那多琉もそうだよね、私に嘘はついたことない。そうやって、いいところもそっくりになれるから双子は好きだな。この手紙のこと全部、私の気持ちでもあり、那多琉の気持ちでもあるんだって思ってるよ。


じゃあ、長くなっちゃったけど最後にこれだけ言わせてね。

私は那多琉と一緒にいるとね、笑顔が二倍になるし、幸せが二乗になるんだ。

ね、那多琉。私たちはこれからはもう別々になっちゃうけどさ、わたしは那多琉のこと、天国からずっとずっと応援してるからね。

それじゃあ、今まで本当にありがとうね。ずっとずっと楽しかったよ。バイバイ。


楠木加那琉より

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― 新着の感想 ―
[一言] オチにもう一捻りが欲しかった。 相手が自分と同じであると信じているからこその「無邪気な怖さ」が、引き出せそうな気がする。 でも、結構好きです。こういう作品。
[一言] 温かい作品でした。最後の方を読んで何ともいえないような気持ちになりました。こういう作品も新鮮味があって良いですね。これからも頑張って下さいね!
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