87.新しい命と誕生日:後編
私が扉を開ける時微かな泣いている声が聞こえた。私はそっと部屋の扉を開けるとお母様と双子の赤ちゃん、私の姉弟になる新しい家族がそこにいた。
前世では医者をしていて産婦人科じゃなかったし病棟も別だったから関わる機会はあまりなかったけど、新しい命が産まれる瞬間ってこんなに嬉しいんだね。
お父様は前々から名前を決めていて、金色に輝く瞳をもつ男の子には「アレス」・魔族特有の魔眼で紫の瞳をもつ女の子には「アテナ」という戦いの神の名を授けた。双子だから同じような名前を付けたかったのか、神々の名前で同じ戦いの神の名を使いたかったのか分からないけど私の姉弟であるのに変わらない。
アレス、アテナ、あなた達を守るお姉ちゃんだよ。お母様に抱きかかえられている双子の姉弟達を見ながらそう言った。
その後は双子が産まれた事と私のトリプル誕生日記念の祝が行われた。初めて会うお父様の知り合いや知ってる人たち、チィちゃんと話したり、新しい出会いにあったりと楽しいパーティを送った。
そういえばおじいちゃんの姿が見えないけどどこに行っちゃったんだろう。私はコッソリパーティを抜け出しておじいちゃんが昼いた中庭に行くとベンチで座っていた。
何か考え事でもしていた雰囲気を醸し出していたけど私のことに気づいて手を振ってくれた。皆パーティにいるよ、おじいちゃんも早く行こうよ…と手を握って連れて行こうとするけどおじいちゃんは動こうとしなかった。
ミヤ「おじいちゃんはね、もう…ミライとユウキ達には関わらないようにするよ。」
えっ…おじいちゃんから出ることのない言葉を聞いた私は少し動揺した。
ミヤ「深く捉えないでほしい、またすぐに帰ってくるよ。」
な…なんで?何でおじいちゃんはいつも自分勝手なの?お父様だっておじいちゃんが眠っていた時も悲しそうにしてたんだよ!何でそんな事言えるの、私は…家族といたいだけなのに何でおじいちゃんは私達から離れようとするの、1人でどうにかしようとするの!
ミヤ「ミライ…」
ミヤ(ごめんミライ、次元の修復で少し家を空けるなんてどう説明していいか分からないし言葉選び完全にミスった。)
私…私…
ミヤ(あぁ…泣いちゃったよ。僕はなんて馬鹿なおじいちゃんなんだ、孫が悲しんでるのに大丈夫のひと言も言えないなんて。)
ミヤ「ミライはミライなりの人生を歩んだらいい、せっかくの新しい世界なんだから異世界主人公みたいに色んな事に挑戦したらいい。」
私はおじいちゃんと一緒がいい!
ミヤ「15歳」
………。
ミヤ「本当の15歳になって冒険者登録できたら一緒に旅をしよう。」
嘘じゃない?
ミヤ「嘘じゃない。」
約束
ミヤ「うん…約束。」
私は冒険者になったらおじいちゃんと冒険する約束をした。おじいちゃんは城に出る前に聞きたいことはないかと話す。私はこの世界についてまだ知らないことばかりだったからいくつか質問することにした。
質問その1
元々地球には魔力がなかったのにどうやって身につけたの?
・人類の大半が亡くなるあの戦争時に放射線…化学物質によって魔力が誕生した。古代文字の勉強をしたら大図書館に歴史の本があるから見たらいい。
質問その2
おじいちゃんって何者?
・ミライと同じ日本生まれ日本育ちで今は数百年生きた伝説、大英雄だ!
質問その3
大英雄になった時、無属性と聖属性以外の魔力を失ったって聞いたけど支障はある?
・全くないよ、なんなら無属性魔法の【コピー】で魔法を出せるからね。
【コピー】:魔法や魔法陣をコピーできる魔法で一見強そうだが何でも見ただけでコピーできる…という魔法ではない。このコピーという魔法は全属性を極めた(各属性の魔法全ての熟練度MAX)状態の時に無属性が1段階進化してやっと覚えることができる究極技。
火属性だったら火の魔力を使う、水属性だったら水の魔力を使う。玄人だったら右手で火・左手で水と魔力を交わらせず使うことができるが素人が使うと魔力の混合で魔法は発動しない。
けどコピーの魔力は無属性の魔力だからコピーで出した属性の魔力は交わらないで発動できる。ここまでの話を聞いて、略称すればどんな魔法でもコピーで出せますよ…って言ってるのと同じだね。
弱点も存在する。使っている魔力がその属性のものじゃないから同じ火球でも火属性の魔力で放出する火球のほうが強い。一見何でも出せるチート魔法だって思えるけど、結果として真似できるだけの劣化魔法なんだ。
質問その4
これからどこにいくの?
・遥か遠くの場所…今はそうとしか言えない。
質問その5
アレスやアテナに会わないの?
・いま会ったとしても顔も覚えられないだろうね。だったら最初から居なかったと思ってもらった方がいいよ。
行くんだね。
ミヤ「あぁ…」
さよならは言わないよ
ミヤ「約束の日まで…」
約束…だよ。そう言って静かな夜風に揺られながらおじいちゃんは去っていた。私はパーティ会場に戻りその後も楽しんだ。私の人生だから…私だけの冒険を…。
その日の夜はあまり寝れなかった。おじいちゃんは一通の手紙を自室に残して城を出た。お父様はいつものことだと気にもしていなかった様子だけどどこか寂しそうに私は見えた。




