8.新たな旅立ち
王都が陥落して数日がたった頃、僕は神官と共に行く当てもない道を歩いていた。途中途中で一緒にいた受付の方々は別れていった。王都に残った人以外は帰る故郷があるらしいので、餞別として一人金貨3枚渡した。王都でなくてもどの場所でも暮らすにはお金が必要だから。
けれど行く当てもない人達も居たので僕達と一緒に着いていくことにしたらしい。食料はアイテムボックスに入ってるのであと数日はもつと思うけど、流石に何処かの街で買いたいものだ。
ここから北に真っ直ぐ行くと一つの村があった。この村は少人数で暮らしており、食料なんかはここからもっと北の街に行くらしい。この村でひと休憩をさせてもらった後地図を貰い北の街「リンガル」を目指した。
村の人達が言うには今の時期は雪が積もるらしく遭難したり凍え死ぬ事があるそうなので、地図に目印を付けてくれた。とりあえず目印のとこに行けば休憩所があるとのこと。
猛烈な吹雪き吹かれたが休憩所というか小さな小屋に着いた。暖炉があったので僕は近くの木を切り倒し薪を作りなけなしの魔力で火を出した。外は猛吹雪でさっきまでの道が見えなくなっていたのでここで1泊することになる。
神官女性の方、名前はサラ。神官になる前は王都のレストランで副料理長として働いていたんだと。残っていた食材で温かいスープを作ってくれたので皆で食べました。
僕は火を絶やすことがないように定期的に木を切り薪を作っていた。元受付の子達もここまで歩いてきた疲れで眠っていた。
僕は木を切っている時思った。アイテムボックスの中にいるカエデ嬢達のウイルスを治せないんじゃないかって事に。僕の魔力が完全に戻っても無理だと思う。あのウイルスはエクストラヒールでさえも治すことができない。何処かで見たことある文書では世界樹の雫が万能薬だと書いてあったのを目にしたことがある。
それまではアイテムボックスの中に入れておこう。一時的に時間が止まるから空腹の心配もない。今は安静に寝て待っていてくれ。
木を切り薪を作り続けて10時間後、日が差してきて吹雪も止んでいた。僕らは小屋で準備をして出た。僕は大体外にいたので慣れていたけど、暖炉で暖まっていた子達は随分と寒そうにしていた。
この先北に進むとようやく灯火が見えてきた。あの街が「リンガル」だ。リンガルは交易都市として有名であらゆる国の物資が集っている。もしかしたら世界樹の雫があるかもしれない。少しの期待を膨らませて僕らはリンガルの国境を渡った。
リンガルの街付近で軽い身体検査と身分書確認があり、盗賊対策が徹底されていた。僕らが最初に向かったのが宿だ。とりあえず寝床を確保した。朝食・昼食・夕食は宿の一階にある酒場で頼めるので、一旦解散することにした。
僕は市場に食材探しに神官のサラさんと行き、元受付のアンジーナさん・フリッテさん・タクトさんは各地に回って情報収集とリンガルの冒険者組合に報告をしてくれることになった。
市場は沢山の人で賑わっており、前に進むのが困難であった。活気がいい、王都もこんな感じだったんだけどな。少し感傷に浸り食材なんかを見て回った。
だいぶ疲れがとれたのか魔力も元に戻り魔法も十分に使えるようになった。結局世界樹の雫はなかったので、宿に戻ることにした。
冒険者組合に報告に行った三人組の話では予想はできていたがパニック状態であった。なんせ王都が陥落してその周りがウイルス蔓延してるなんて知ってから街の人達もバタバタしていた。
僕らは宿で夕食をとっていた。王族の双子は神官のサラさんと僕と三人組で育てることにした。僕は親になった事がないから無理を承知で頼んだけど快く引き受けてくれた。
僕らが寝ている間に警告令が出されていたらしく、元王都外から1km四方は出入り禁止になった。当然の事だろう、これ以上の感染を防ぐため仕方がない。
朝起きて僕達は今後の生活をどうするかについて作戦会議をした。考えついた答えがリンガルで300年前にあった病院を営むことになった。ヒール等は僕とサラさんができるので三人組は受付案内をしてもらう。そうと決まれば物件探しからだ。
病院といっても大きく広いわけではないけど王都みたいに病院兼家みたいにできたらと思う。あちこちを回っていたけれどそういう物件はなかった。というのもここ、リンガルは交易都市の為多数の人が暮らしていたりしている為土地が余ってないんだと。
でも僕はここで思ったわけですよ。この頭で考えた一つの策。【温泉】を作る!ここは北の北にある寒い都市だから温泉は需要があるし僕らのヒールを使えば疲労回復なんかも応用で出来るし、土地も山を掘って中に作れば他の人達の邪魔にもならない。
結果はokだった。山自体元々鉱山として使っていたので洞窟手前に温泉を作ってくれればいいとのこと。そしたら後は作るだけだから何とかなるっしょ!




