77.レストラン「Ru.ヴァレンティーナ」
今日もこの時期がやってきた。冬になると雪が降り出して王都は白い国と化し城下町の家の煙突からモクモク出ていた。
前世では雪があまり降らない地域に住んでいたので珍しい事なのだが転生してからは毎年この景色を目にしている。去年はお父様に抱っこされて城下町に行って雪祭りに参加していたけど、今は歩けるから今日はそっと城を出る。
門番は私を見送り城下町に行った。一応行く当てがあるから出たんだけど保護者としてミヤおじいちゃんが着いてきてくれることになった。ミヤおじいちゃんは上半身ほぼ裸で布1枚被さっているだけだったので寒くないのか聞いたけど無属性魔法「冷暑換気」っていう魔法で術者の周りの寒い空気を暖かい空気に変えてくれるらしい。
ミヤ「前世でいうカイロみたいな状態だね。ミライにもかけてあげるよ。」
暖かい…フェイト王国の冬はけっこう寒いからこの魔法必須だね。さてと、私が城下町で行こうとしてる場所はマテラさんとアルキラさんが経営しているレストラン「Ru.ヴァレンティーナ」。王都で1位2位を争うほどの人気を誇るレストランで冬限定のメニューがありり、数量限定でもあるので開店前に行かないとすぐになくなる。
マテラとアルキラは旅行が終わり故郷に帰って過ごしていたのだが、帰ったはいいけどやる事がない。マテラは家を継ぐのはマテラの弟でいいと親に言われ、アルキラはマテラと一緒にいたいからという理由で家を勝手に出たそうです。
どこに行こうかと迷っていた2人は今こそ友人に頼ろうと王都に向かいます。王都に向かった2人と会ったのはシルフィでした。シルフィは城内の大図書館にいるだけの人じゃなくて王都内の物件を売ったりする不動産事業をしている引きこもりおばさんだったのです。
王都ができてまだ5年くらいだったのでまだまだ空きがあるということで友人というのもあり、一等地を貸してもらったマテラとアルキラはそこでレストランを開くことにした。何故レストランなのかというとユウキ達と天空ダンジョンに潜った時のミヤさんの料理が美味かった。
ただ美味かっただけでなく料理にバフ効果を付与する神業をしていてユウキ達を支えていた。マテラとアルキラはそういう人になりたいし、自分達で若い世代を支えていきたいと思ってレストランになった。
開業してから4年経ちお客さんも多くなり従業員を雇って店を回していた時その人達が来てくれた。
ここが私の行きたかったとこでもあり、私の友達がいる「Ru.ヴァレンティーナ」。外からでも分かるくらい賑わっていて温かそうだった。
店の中に入るとチィちゃんが待っていた。チィちゃんは王都で初めてできた友達で城内にもよく来てくれる。なんで市民のチィちゃんが城内に来れるのかというと…
マテラ「ミライちゃんいらっしゃい」
アルキラ「チィもミライのこと待ってたよ。」
チィちゃんはマテラさんとアルキラさんの間にできた女の子で私と同じ4歳でレストランの看板娘として常連のお客さんの話を聞いたりお手伝いをしたりしている。
赤色のベレー帽とミルクティー色の髪をした私より少し小さな女の子。すっごくかわいくて頬もぷにぷにしていてお人形さんみたいな子。初めて会ったときは前世の私の感情が止められなくなりそうだった。(今の姿だから許されるけど前世だったら犯罪だよ。)
ミヤ(チィちゃんが知らないだけで、このシチュエーションは地獄だよ。僕からしたら幼女を成長しきった女性が甘やかしている構図にしか見えないからね。)
そんな事は置いといて今年も限定メニューの【幸せ冬の贈り物シチュー】を堪能するとしよう。私とミヤおじいちゃんは個室でシチューを頬張るがいつにも増して美味しい。シチュー自体は冬限定でなくてもお店に出しているのだが、冬限定はひと味違う。
いつも使っている牛乳ではなく特上の牛乳を使っている。何が違うのか説明すると普通の牛乳は普通の牛から取っているけど、特上の牛乳はその普通の牛よりも何倍も成長して今なお生きている牛から取れる物で、長年牛の中で発酵するので取れた際は普通の牛乳よりも滑らかでありコクがある仕上がりになっている。
それをどうやって仕入れているかというと北の国リンガルの近くのドルトンさんとクリスさんの領地内の牧場の牛から毎年取っているんだとか。
私はこれを楽しみにしていたんだよ。去年食べた衝撃は今でも忘れない。前世で評価するならミ◯ュラン5つ星くらい美味しい。
ミヤ「ミライはこれからどうしたい?」
どうしたのおじいちゃん、いきなりそんなこと聞かれても…
ミヤ「ミライは一応第1王女だから国のパーティにも行ったりするし、そこでの出会いで運命を変えるかもしれない。冒険者をしたいのか何をしたいのか、もうすぐ5歳になるから考えておいたほうがいいよ。」
そっか…もうすぐ5歳で洗礼を受けるのか。前世での私は姫様というのにすごく興味があり、憧れだったけど今思えば城下町でチィちゃんとその他のお友達が遊んでいる所を城から見ているだけだったから自由にもなりたいよね。
ミヤ「まぁ、ミライが国を継がなくても弟や妹が継げばいいんだよ。なんなら僕が代理で継いでもいいんだよ。」
おじいちゃんが王様になるイメージができない。できたとしても毎日サラおばあちゃんの言いなりになって王座もおばあちゃんに奪われてお城のお掃除をしているような気がする。
ミヤ「おじいちゃんのイメージってそんな感じだったのね。」
ねぇおじいちゃん、ちょっとお願い事聞いてくれる?
ミヤ「なんだい?」
私が15歳になって正式に冒険者になれたらおじいちゃんも着いてきて。
ミヤ「それはできない。」
なんで?
ミヤ「僕が着いてきたら魔物だって寄ってこないし、そんな暇な旅望んでないでしょ?」
そうだけど…
ミヤ「それに新たな旅には新たな仲間が居るもんだよ。そんな中におじいちゃんがいたら気まずいよ。」
それもそうだね。でもさおじいちゃんじゃなくてミニャだったら…
ミヤ「それだったらいいよ。けど、魔物との戦いはなるべくミライがやるんだよ。僕がやるとレベル上がらないからね。」
よし!とりあえず目標ができた。私とおじいちゃんはシチューを食べ終わりチィちゃんと話をしたあとレストランを出た。雪は降り積もり、満足した私はお城へと帰った。




