61.参連星 剣聖ツヴァイ
ユウキは先手必勝で【勇者ノ軌跡・天空破斬】を魔王めがけて放ったが参連星の剣聖ツヴァイによって軽々受け流されてしまった。今までは一撃必殺で使ったこの技がいとも簡単に受け流された事によりユウキは酷く驚いていたが、攻撃を止めるわけにもいかないのでマテラがすぐさま【黒赤雷甲】で攻撃するもこれも受け止められる。それどころか雷が降ってこない。
何かが起こっていると感じたミヤは試しに火球を魔王に放つと鎧に吸収されていた事が分かった。ダンジョンにあったあのドレインボールと同じ原理で魔力を吸収してしまう。ドレインボールと違って厄介なのが僕らは魔法を使うのを禁じられるが魔王は使うことができる+吸収した魔力を自身の力にしてしまうのが厄介だ。
そしてこの2人に気を取られていたらもう1人の参連星がユウキを襲うがドルトンが盾でカバーして難を逃れた。僕は剣聖ツヴァイと一騎打ちをする事にしたのでマッハで殴りこみに行くと剣聖の剣と僕の拳がぶつかり合い衝撃波がでた。
続いて身体強化を重ねがけしながら殴るスピードを上げていくとツヴァイも身体強化で斬る速度を上げてきた。次第に動きが高速化してきて誰も目で追うことが出来なかった。
僕は剣聖ツヴァイを魔王から引き剥がし城内で一対一の状態を作り上げると、ユウキ達は何か察したかのように魔王と参連星の1体と戦う2チームに分かれた。
剣聖ツヴァイとの一騎打ちの場を作ることができたが、まずは分析をしよう。剣聖ツヴァイははるか昔初代勇者に次ぐ実力者とも呼ばれていた人物でその当時から魔王に従っていた。
愛刀「龍獄刀」は持ち主の修行量で強さが変化する特別な刀だ。彼は初代魔王が討伐された後でも欠かさず修行を行い続けていたのでとてつもない力で溢れている。ユウキの【勇者ノ軌跡・天空破斬】を受け流したのも納得がいくだろう。
僕が殴りかかろうと前に進むとツヴァイは刀を取り出す素振りをした。僕が瞬きをした時には刀をしまっていて僕の胸は斬られていた。斬られた事に問題はないが予備動作がなかった事に疑問がでる。刀に触れただけで振ることもせず刀を鞘にしまっただけで攻撃を受けてしまう。
高速で斬撃をしているのかと思ったがそうでもない。もっと別の攻撃…もしかしてコイツは攻撃するモーションを飛ばして攻撃する事が出来るのか。
普通の刀での攻撃は
刀に触れる→刀を取り出し構える→
斬る→刀を鞘に入れる
大体はこんな感じだけどコイツは
刀に触れる→刀を鞘に入れる
で終わっている。単に早く動いているのかと思っていたけど攻撃モーション自体が飛ばされているのならば今の状況的に噛み合うがこれでは対処のしようがない。一方的に攻撃を受けてしまうだけだが「僕」以外だったら危なかったな。
僕は薬屋だ、薬屋らしい戦いをしようか。僕は自身にリジェネを付与した。魔法のリジェネは消耗品の携帯式リジェネフィールド(半径2m)君と違って術者の魔力依存で回復量が変わる。その為彼が何度斬っても僕はその度に再生すればいいだけのこと。
絵面だけ見たら僕の骨が見えるくらいに斬り刻まれても何度でも再生するという結構グロいシーンになる。剣聖ツヴァイは確かに強い、何百年の間修行を欠かさなかった強さはよくわかるがそれを上回る奴がいただけのこと。もし仲間になっていたのならきっといい修行相手になっていたのだろうな。
剣聖ツヴァイはその後もミヤを斬り刻むが一歩一歩ミヤが前に進み、ツヴァイの胸元まで着いてしまった。そして一瞬の間に洗脳でツヴァイの動きを止めて数百の拳をツヴァイに浴びせた。洗脳が解け自身が殴られた事に気づいた時、蓄積されたダメージとともにユウキ達のいる魔王の間までふっ飛ばされた。
魔王の右腕である剣聖ツヴァイを倒し終えて魔王がいる部屋に行くともう一体の参連星をユウキ達が倒していた。
「貴様らの強さはよく分かった。だが、参連星ごときで疲れ果てれば王である我を倒すことは不可能だ。」
魔王は倒された参連星の死体を集めて混ぜ始めた。体と体が合体というか捻れて混ざり見るに堪えなくユウキ達は気分が悪くなっていく。そして混ぜ終わったら1つの塊となり魔王はその塊を自身の胸から吸収した。
その瞬間元から暗かったオーラは王都を覆うくらいの大きさまで膨れ上がり、人間の本能としての「恐怖」を王都にいる全ての人間に向けて放った。これは洗脳の様な無属性魔法の1つ「精神異常」の魔法だ。
この魔法を受けたものは聖属性の魔法で解除されない限りは永遠に「真っ黒な空間で何かに逃げる」という妄想で脳がシャットダウンして植物人間にしてしまう禁忌の魔法。
幸い王都内にはサラさんが率いていた聖属性持ちの後方部隊がいたので騎士団は多少無事だったが、解除が遅れたものは頭頂部から芽が出てくる。
その芽は人間の水分を吸って成長して根っこを体全体に絡めて主導権を奪う。奪われたものは人間と呼ぶことのできない存在になり、人間たちを襲う魔物になってしまう。
僕の頭に生えた芽は僕の聖属性の血液を吸った途端枯れ始めた。体に一瞬のラグがあったもののユウキ達を浄化で芽を取り除いた。




