48.体内探索
サンドワーム・マザーの体内は広く、危険な存在である。幾度かサンドワーム・マザーに遭遇したという目撃情報は新聞などで見てはいたが、それは遠くから撮影したものばかり。それもそのはず、近くに行ったら僕らみたいに飲み込まれてしまうんだ。
だからサンドワーム・マザーの対処方法なんてあるわけもないので見かけたら即逃げろと警告されている。僕は声を出しても誰も近くに居ないと分かったので良いことを思いついた。
水魔法で火球の様に球を作り体内に飛ばすことにした。速度は歩きより少し早いくらいにして放つ。これにより放った先に人が居たら来てくれるかも知れないし、万が一水球に当たっても怪我しない。皆は僕の事いつもバカ呼ばわりするけど今日だけは冴えてるな…
※体内は真っ暗なのでもし水が人に当たっても、どの方向に飛んできたか分からない。
ドルトン
前にミヤ先生から探知の魔法を教えてもらった甲斐があったな。だけどこの先の方向の魔力反応が小さいのが沢山動いているな。サンドワームに比べたら大分小さい反応だ。皆かもしれないから走って行こう。
思ったより体内は安定していると感じる。餌を食べる以外は砂の中に入り寝ているのだろう。そう思えば普通のサンドワームと大差ない情報だ。段々魔力反応が近くなっていき、足音がした。けどおかしい、僕を含んでも7人しか居ないはずなのに数十人の反応がある。
足音は次第に大きくなり、僕の目の前に現れたのは天空ダンジョンの砂漠エリアで行方不明になっていた冒険者ばかりだった。
皆やせ細っていてとてもじゃないけど歩く事もできそうになかったので持っていたポーションを片っ端からあげていき、オアシスの水をアイテムボックスから取り出して救助していった。冒険者達は僕にこう言った。
ありがとう…少しだけ生き延びることができたよ。ここにいるのは殆どがオアシスで休んで居たらサンドワーム・マザーに飲み込まれた奴ばかりだよ。あのオアシスはセーフティエリアなんかじゃない、わざとマザーに飲み込まれるように誘導したダンジョンの罠だったんだ。
そうとも知らず飲み込まれて何日経ったんだろう。俺たちもここから出ようと魔法を唱えたり攻撃したりと色々工夫はしたさ。だけどサンドワーム・マザーは皮膚も硬く体内も硬いといった感じで叩いた剣が折れてしまう羽目になった。
少年よ、悪いことは言わない。ここから出るのはあきらめろ、その体力があればもう何日かは生き延びれるだろうな。と冒険者は言って休んだ。
クリス
あわわわわ…皆どこいるの、気を失って倒れていたけど何かジメジメしているし少し臭う。これも私がハーフエルフだからっていう可能性があるね。エルフは少しの音矢匂いに敏感だから普通の人が感じないことも感じてしまい、今みたいな状態になる。
この臭い的に魔物の体内だろうと推測した。仕方ないので灯火を唱えて辺りを探索しようかな。(背中に水が当たった)
ピチャ…。ひぃ…なになになになに、背中に何か当たった?もしかして魔物の体液?!それだったら早く汚れを落とさないと服にまで臭いが移る。せっかく3年生の時に新調した魔法服なのにこんなとこで使えなくなるのは嫌だよ。
おーい、その声はクリスか?僕だよユウキだよ。私が魔物の体液か何かと困っている時にユウキと再会した。もしかして水みたいな物出したのユウキ?
そうだよ、水球を飛ばして誰かに当たんないかなぁって探していたけどクリスがドンピシャで当たってくれるとは思ってなかったよ。
なんだよかった、水だったら乾かせばどうとでもなるしユウキと再会したことで孤独じゃなくなって精神的にも安定してきた。とユウキと少し話していると…
その声は息子か?お~い父さんだぞ。ミヤ先生とアルキラが遠くからやってきたのだ。
そうかシルフィとドルトンは見てないか、だったら一緒に行動しよう。とりあえず探知で魔力反応が沢山あるとこに向かおう。その中に2人がいるかもしれないし。
僕らは少しサンドワーム・マザーの体内を歩いているとドルトンが寝そべっているのを発見した。それと同時に沢山の人がいた。ダンジョン内での遭難者達だと分かり、ドルトンを起こして情報を聞いた。
遅れて遠くからシルフィも駆け出してきて全員が何とか揃った。だけどここにいる冒険者同様にみんなは大きなため息をついていた。何故ならここに出たくても出れないからだったが、1つ忘れていることがある。
僕の転移魔法を使えば脱出できるよ。僕がそう答えるとシルフィ達は何かを思い出したかの様な反応をして、冒険者達も是非我々もと懇願してきた。
転移魔法は範囲内の人間や物をワープさせるからギュウギュウに人を詰めて全員でワープしてサンドワーム・マザーから脱出することができた。
そう上手くいく話ではなかった。僕らが転移した事により僅かな魔力を感じてサンドワーム・マザーが地上に出てきてしまった。ここまで遠くにいるのだから気づかれるはずないと一同思っていたが、何やらこっちに突っ込んで来ている。
ミヤ
また飲み込まれるのが嫌ならいい作戦がある。




