43.古の侍
この先にいるのは剣を持った魔物だとお父さんは言う。私とクリスは基本魔法だけなので遠距離からの射撃を行い、何かあればドルトンがカバーする形になった。戦闘狂バカ3人組のユウキ・マテラ・アルキラは扉を開けたらいきなり突っ込むらしい。
扉を開けると広間の真ん中にポツンと武装した置物がありました。一応警戒して慎重に前に一歩進むとカサッ…と置物のてが動いたように見えた。私は土魔法で土の塊作り出し手で軽く投げてみた。投げた土の塊はその置物から3m位近づいた所で真っ二つに割れてしまう。
ゴ「これは所謂【間合い】というやつだ。全集中して聴覚だけを研ぎ澄ませて敵の動きを待つ型だ。おそらくコイツは半径3M位が間合いの対象だろうな、気をつけてね。」
※コイツの名前は古の侍ラスサムと表記します。
なら俺から行かせてもらうぜ、さっきの大蛇も消化不良だったからここで気持ちよくなりたいぜ。
シルフィ「これだから戦闘狂は…」
小手調べとして1回ラスサムの間合いに入ってみた。俺は生命の危機、人間の本能を感じて咄嗟に攻撃を避けた。ラスサムの剣が俺の耳にギリギリ触れない所だった。慎重にラスサムに近づいて行ったが何も起こらなかった。…壊れたのかコイツ。
ゴ「ラスサムはマテラの事を敵だと思ってないよ。間合いで君の実力を確かめていて、敵と見なされないくらいだったからだよ。」
何だそれ、あの初撃を受け流せってことか?それか反撃しろってか無理があるだろ。
まぁいい。次の休憩が何階か分からないから使いたくなかったけど身体強化【狂人モード】とここで使うのは初めてかもな、俺が3年になって2年の時のままじゃない所を見せてやるぜ。苦手だが火属性魔法と闇属性魔法を雷魔法と両立させた俺独自の混合魔法だ。
【黒業赤雷】
マテラの金色のかみはたちまち黒になり、雷も黒色と赤色が混じっていた。こいつは静激の超強化版で自身を雷で覆った姿になっており、スピードが桁違いである。
黒業赤雷は体の変化(強化)だけでなく術者の周りに赤黒い雷の剣が数本浮かび纏っていた。その剣はマテラの指示で自動的に相手を狙う剣であり、たとえ壊されたとしても術者の魔力があれば何度でも復元できる。それにその剣を足場にすることも可能でどんな場所であろうと自分の間合いで勝負することができる。
マテラは剣を散らばらせて体勢を整わせてもう一度ラスサムの間合いに入る。マテラはラスサムの初撃を跳ね除けて半分の剣で迎え撃った。ラスサムは即座に体勢を立て直して次の攻撃モーションに入りマテラの剣を全て弾き返した。
ゴ「これは自動反射と呼ばれる無属性魔法の一種で術者の脳の反応に関係なく体が動くという魔法だ。」
マテラはそのまま雷の如く突っ込み雷光双刃を放った。それに応じてラスサムも自動反射を行いマテラの攻撃を防ぐ。
これは両者の睨み合い、己の方が強いと示す戦人同士のプライドの戦い。どちらかが引けば勝利は決まってしまうのだが、あのラスサムは意思を持ったゴーレム…今の父ゴーレムと同じ人工魔力生物だから魔力が切れるまではぶつかり続けるだろうね。
くっそ…コイツ中々やるな。俺が隠れて生み出した黒業赤雷と同等のやつがすぐ現れるなんて戦士からしたらありがたい話だ。俺の為にやられてくれよ!
マテラは一瞬の隙をつき、魔力で剣を作り出しラスサムの後ろ足を狙った。勿論これが自動反射される事くらいはマテラも分かっていたがマテラの狙いは後ろの剣をラスサムが弾くその一瞬を待っていた。
マテラの想像通りラスサムの自動反射は後ろの方に行った。その瞬間を狙ってマテラはもう一度雷光双刃を放った。
ゴ「よくやったマテラ、君はこの1年間で十分に成長した。だけどこのダンジョンはそんなに甘くないよ。」




