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劣等薬屋は世界を救う  作者:
劣等薬屋 序章 ミヤ編
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4.この世の理(旧)

 この世界は不自由だ。さっきまであったものは黒く焦げて、何もなくなる。人間のエゴで起きた戦争は同じ人間を苦しめていた。何が目的だったのか、その時には分からなくなっていた。ただひたすら黒焦げの道を歩いていた。街だった場所は平らになっていて人っ子ひとりいるような気配はなかった。もしかしたら僕の知らないところで生きているのかもしれない。


 何かを後世に残そうとしていた人達の形ある物は消えていった。歴史はここで途絶えたのだろうか。


 太陽の光は僕の心を強く叩いた。空は段々元気を取り戻し、先程まで煙が蔓延していたが綺麗に消え去っていた。空はいつも通りなのに、僕が見る景色は違っていた。世界は理不尽だ。僕が何をした、僕はただ平凡な毎日を送っていただけだ。


 職場で上司に怒られ、夜遅く帰り家族と話して眠りにつく。休みは何処か遠くに行って釣りをしたり温泉に浸かったり、そんな毎日だったのに…何故今は真っ黒なのだろうか。


 僕は力があるわけでもない。特別でもない。才能があるわけでもない。悲しいという感情を、ぶつける人も物もない。


 共感してくれる人もいない、一緒にいてくれるだけの人もいない。声を聞きたくてもスマホは溶けている。


 今を生きている僕は、この先生きて行けるのだろうか。そもそも生きる意味があるのだろうか。僕は一人だ。



 あれから何日、何ヶ月経っただろうか。人間のいない世界は緑に還った。全部が全部ってわけではないけど、世界は…地球は…まだ生きたいと思っている。


 地球が生きたいと思うのならば僕も生きようと思う。この世界と共に生き、死を共にする。


 ここら一帯を森にしようと思う。何年掛かるかな。ほんの前までは寂しいと思ってたけど、今は森に生きる生命がいる。一人じゃないからとても…楽だ。


 

 この世界が更地になってから約40年が経とうとしている。僕は62歳になるが、どうも老けてるわけでもなく何処か悪くなったわけでもない。ここで僕はある一つ提唱を唱えた。


 何らかの薬品と僕が繋がって化学反応?が起きたのだろうと。なんだろう、昔見た異世界漫画の様な感じだ。いわゆる不老不死というやつだろうか。そんな事を思いながら幾歳重ねていたら、やっと来た。



 僕はもう諦めていたけど、いや…心の隅ではまだ可能性があると信じてたんだろうな。目の前に僕以外の人間がいる事に涙を流した。


 1人だと思って40年経ったけど本当にいたんだな、人類は滅亡なんてしてなかった。



 その時だった、僕が感動に浸っているとこちらに向かってきた人は僕を指差した。


 一瞬の出来事だったが僕はいつの間にか眠りについていた。記憶が曖昧だった。今感じられるのは寒さだった。森は少し風は吹くがここまで寒くないから、もしかしたらあの人達が生きている人類の拠点にでも連れて行ってくれたのだろう。


「起きろ、罪人。」


 罪人?誰のことだろう。目を覚ますと僕は部屋というよりも牢屋にいた。僕の目の前に立つ女性は先程僕に指を差した、僕が感動して涙した人間だった。


 どこに連れて行かれるのだろう。その女性は僕の腕を縄でキツく結び連行していった。外からは沢山の人の歓声があり、この人以外にも生きていた人がいるのだと感動してしまった。


 僕はこれから何処に行くんですか?


「決まっているだろう…地獄だ。」


 地獄…。僕は何も悪いことはしてないですよ。あの森で静かに暮らしていただけですが


「白々しいな、その腹にある跡があるのによく嘘がつけるな…旧人類が。」


 その女性の話によると、40年前に旧人類は滅びた。滅びた人類にはどこかしらに【跡】があるらしい。それは汚れとかでもなく消えるものでもないらしい。


 新人類は皆その【跡】はついていないらしくこの【跡】が付いている者は悪魔の使いだと考えられていて、この戦争の火種は僕ら旧人類が悪いと後世に伝えられたらしい。


 僕は滅びたかもしれない人をみて涙流したのに、これから見せしめとして殺されるらしい。僕が心から追い求めていた者は旧人類の滅亡だったとか…笑うしかないよなぁ。


 そう思っている間に処刑場に着いた。


「表を上げよ…旧人類。貴様らはこの世界を混沌の渦に巻き込んだ罪がある。それがその【跡】に記されている。我々新人類はその様な出来事を抹消する必要がある。お前の様な奴がいる限りこの世界は助からない。悪いがこの世界の運命だと思って仕方なく死んでくれ。」


 僕は処刑場に足を踏み込んだ…






 

 

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