37.平凡な日々
父さんと話した後一通の手紙を残して僕らの前から去っていった。僕らは学園に戻り、経緯を話し合えると1週間ほど休暇をもらうことになった。
僕は父さんの手紙を破ろうとしたらシルフィが僕の手を止めた。僕らは母さんの元へ温泉旅館に帰り報告した。母さんは涙を出しながら倒れ、アンジーナやレスダーは奔放な父さんに腹が立ち怒っていた。シルフィは父さんの手紙をみんなの前で読むことにした。
僕は旅に出ます。今まで自分がやって来た事の償いをする為にしばらくの間は帰ってきません。ですが旅の途中で手紙を書いてそちらの方に送ろうと思います。世界樹の雫は僕が見つけてみせますのでもう少し待っていてください。
ミヤより
僕は聞いているうちに腹が立つも抑えていた。あんな奴の事なんてどうでもいい、僕は僕の進みたいように生きていく。
私はユウキをただ見ていることしかできなかった。父がこの世界の諸悪の根源だと知った時は驚いたけど、それでも家族としてこれからも一緒に居たかったし魔法も沢山教えて欲しかった。父が戻って来ないのであれば私は父を探しに行く。行ってまた家族みんなで一緒に居たい、卒業した後の目標が決まった。
1週間はあっという間に終わり2年生半ばになった。この時期に残っていた生徒は半数にも満たなかった。伝統行事と言うなの試練に折れたのか次々と辞めるものが続出したらしい。aクラスも私を含め10人ほど。
今日は魔法で遠くの的に当てる授業をしたけど物足りなかった。ほとんどの学生は長い距離にある的を当てるのが難しいって言ってたけど、父の特訓では倍以上の距離で動く的(動物や魔物)を倒していたからやっても無駄だと思った。
他の5人も的に当たって当然って顔で呆れていた。学園の魔法・剣術の授業がどれも父の特訓に劣っていたので次第にやる気が無くなり、学園内で喋ることすらもダルく感じた。
いつまでこんな毎日が続くんだろうって思いながら家に帰る。やせ細った母は女将の仕事を真っ当していたけど仕事の質が落ちてきて、最近はクレームが後を絶たない。他の従業員も1人また1人とやめていく。
旅館はたたむことになり、温泉だけの利用になったが浄化の効果もだんだん悪くなり、ただの温泉…薬師温泉ではなくなった。
繁華街も前までは活気が溢れていたけどここ数ヶ月で落ち込んで来て店数も減った。リンガルのお偉いさんのワトソンさんから立ち退きを命じられてか、繁華街は温泉のみになった。
今日も学園に重い足取りで通って行き無駄な授業を受けて帰える。そんな暮らしを1年ちょっと、3年生になってあと数ヶ月で卒業する時になってある出来事が訪れた。
いつもの様に家に帰ると母は知らない人に涙しながら抱きついていたのだ。恐る恐る母に近づいたら知らない人に抱っこされた。私は不審者だと思い魔法で対抗しようとした時見たことある顔が私を悲しませた。
涙で顔がよく見えないけど分かる、父だ。父が帰って来たのだ。その日の夜は父が帰ってきたことに宴が開催されて、元繁華街で働いていた人たちも呼んで大騒ぎだったけどユウキは自室に籠もっていた。
父は今までの旅を話しながら母と楽しく話していたけどユウキの事が心配だったので部屋に押しかけた。ユウキは父に対して怒ってるのかと思いきやベットのシーツを濡らして泣いていた。
あの日以来父を憎んでいたんだろうけどそれは私たちにしか見せない姿で、本当はずっと会いたかったんだよね。私はそっと弟の頭をヨシヨシしてあげた。




