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劣等薬屋は世界を救う  作者:
劣等薬屋 一章 学園編
37/95

35.勇者の剣

  僕は勇者の剣を出し、ドラゴンに立ち向かった。自分に身体強化を付与してドラゴンの腹を斬ったが傷1つつくことがなかった。なんだコレ、誰もが憧れた勇者の剣はハリボテだったというのか…と僕は困惑していた。


 あの時はどうやって発動したのか分からない。だけどここで立ち向かわないとクリスやマテラ、アルキラは魔力切れで立てないし、それを守っているドルトンだっている。僕が悩み込んでいるとシルフィが来た。



 敵の目の前で何ボーッとしてるの、勇者の剣の発動がわからない?まったく…学園の授業を聞いてないのが悪いよ。勇者っていうのは所謂、平和に暮らしたいと願う全ての民の籠もった塊の様な存在であって勇者だから強い!っていう固定概念は捨てて、ユウキが思うままに戦ったらいいよ。「勇者」っていうのがユウキにとっては枷になっているのかもしれないなら無理矢理壊すようなイメージでさ…


 

 そうシルフィに言われると、この剣の記憶が僕の脳内に流れ出した。眩い光で目をつぶりそうになったが語りかける声が僕を呼んだのでそのまま目を開けた。


 その声の主は今までこの剣で魔物に立ち向かった勇者達の冒険の物語だった。初代勇者は父さんの作った人工魔力ゴーレムだった。初代魔王を討つとこまで行ったが、100年後に新たな魔王として復活してしまう事態になった。ゴーレムは魔力切れで復活した魔王を倒すことができず、その場で崩れてしまうが剣はゴーレムだった物に突き刺さったまま。


 そんな時に近くにいた生き物、今でいう獣人と呼ばれる種はその剣を取り初代勇者の記憶を辿り知能を得た。仲間を集めて魔王のいる大陸に向かう為に海を渡ろうとしたが、天候が荒れて津波に巻き込まれ2代目は溺死してしまう。


 剣は海の底に落ちていったが1人の人魚の少年が物珍しさにそれを取った。初代と2代目の記憶が蘇り、海の仲間達と共に出航した。途中でクラーケンやリヴァイアサンの遭遇により多くの仲間が散っていったが目的である大陸にたどり着いた。


 3代目は人魚だったために陸に上がれなかったのでいい策がないか考えていたら、浜辺を歩く女の子が1人いたのを発見して申し訳なさがありながらもその子に託そうと陸に上がった。陸に上がると身体が見る見るうちにボロボロになり女の子に剣を託した時には砂と区別がつかないような塵とかしていた。


 女の子は恐る恐る剣を取り記憶を読み取るが、責任重大なことに心を病んでしまい自身の兄に託してしまった。その兄は元々冒険者で剣を新調できたと思い嬉しそうにしていたが旅の途中"子爵"マエストロとかいう魔族に出会い敗れてしまうが剣は魔族とは逆の属性である光属性を纏っていたため、盗まれることはなく旅をしていた商人が地面に落ちている剣を見つけて王都に売りにいった。


 この商人が5代目にならなかったのは4代目である女の子がまだ生存していたからなのである。それから40年ほど経ち、剣は王都の闘技場の景品になっていた。そこで勝ち上がった者が剣を取ると光出し、今までの記憶を読み取った。その者は強き者と戦いたいと願っていた為か、すぐにでも魔王のいる場所まで向かった。


 この男は見た目は怖いがとても優しく、旅の途中に困っている人や村を見つけたら率先して助けに行っていた。井戸がなければ掘ってあげたり、食料不足に困っていたら最初は自分ひとりで狩りをして生計をたてて、後に自警団を作って村の人を鍛え上げる。村から街へ、街から武装国家までに成長を遂げるが肝心な事を忘れてしまった男は死ぬ間際に孫に託す。


 6代目である孫は魔法に特化していたので剣を使う事があまりなかったので放置していたが、この男こそが魔剣士という職業を築き上げた人物だったりする。祖父である5代目の意思を受け継ぎ、魔王がいる領土まで旅をする。


 旅は計50年程続き魔王城までたどり着いた。何故ここまで時間がかかったかと言うと、6代目が5代目から受け継いだバトルジャンキーとダンジョンにねむる遺物の採取が好きだったので大幅に遅れてしまったのが理由である。


 魔王城に着いたのはいいがここまで1人で旅をしてきて仲間がいなかったので急遽近くの街で仲間探しに行くと多くの人が歓迎してくれた。その理由は、この男5代目と同じく人助けが大好きなので遺物を見つけては行商人に売り、売ったお金で孤児院を建てて寄付して旅をしていた。


 孤児院はやがて1人の男を導く教会になった。子供を引き取り面倒を見て成長させる児童施設と言うなの教会は各地に作り出され、男を讃えた。


 6代目が寄った街にはたまたま数十年前に助けた子供達が大人になって同じ冒険者をしていた。事情を聞いた人達は6代目の力になりたかったので、総出で魔王城に行った。


 魔王城の中はそこらにいる魔物よりも強く魔力量が凄く濃かったため途中で気絶する者が現れたが6代目には生き残ってほしかったので、かつて助けられた大人達は自らを犠牲に魔物達に立ち向かい6代目の為の道を創り上げた。


 6代目は孤独の旅をしていたつもりがうしろを振り返れば自分が救ってきた沢山の人が支えて、見守っていてくれた。その人達の為に6代目は60歳を越えていたが魔王に傷を負わせることができた。魔王はその経緯を讃え一撃でその男を静めた。


 魔王は剣を握ろうとした時に弾き返されたので腹が立ち窓から遠くに吹っ飛ばしてしまったのだ。その剣は海を割り、山を貫いてだんだん落ちていき勢いをなくした剣は知らない土地にぶっ刺さっていた。


 森の中で静かに休んでいたエルフの詩人はその剣を見つけ出し手に取った。6代目の意思を受け継ごうとはせず、初代から6代目までの記憶を物語にして皆に言って回った。後にその物語は本になり今でも愛される物となった。詩人は自分が無力な事を知っていたので剣を元の6代目の故郷に寄贈した。7代目である詩人は今も何処かで勇者の物語を語りながら武装国家を去った。

 

 そしてユウキ達が武装国家であるシフマクに来ていてたまたまユウキが剣を取った時に記憶が蘇った。その記憶の光は消えていったがユウキには今までの勇者達や剣を繋いだ者の姿が映し出されていた。


初代魔王を討伐した1代目


森を抜け出し海へと旅立った2代目


剣を届ける為自らの命を未来に託した3代目


自身は勇者の自覚はないが何かの力になりたくて人の手でヒールの上のハイヒールを作り出し世間に広めた4代目


魔族との戦いで命を落としてしまった4代目の兄


その剣を次の代に届けてくれた商人


人の世話が好きな5代目


のちに神として崇められた人類の父6代目


その全てを物語にして後世に残した7代目


 その人達が僕が握っている剣に光の魔力を注ぐと剣は形を変え今までの勇者の「魂」が刻まれた剣になった。その剣は他の剣と違って生きているように思えた。


 ドラゴンが青炎烈王を僕に放ち誰もが負けたと確信した時、僕はそっと剣をドラゴンに向け振ると軽く振っただけなのにブレスは真っ二つになりドラゴンの顔に傷ができていた。


「お…俺のブレスが…こんな小僧に…」


 新たな勇者の物語が始まろうとしていた。

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