32.ケカゴン島に向けて出発④
オカオサを抜けて2時間くらい経った時に父さんが馬車に入って来た。何やら不穏な顔つきだったので事件か何かあったんじゃないかとこちらも心配した。今から行く場所が森なんだけど普通の森じゃなくて魔物がいる森で、しかもこの森を抜けないとケカゴン島の国境に行けないんだと。
そのまま突っ切ってもいいんだけど物の試しで勇者の剣を使って見せてほしいと父さんに頼まれた。父さんはゆっくり馬車を引き、僕らは魔物との戦いの準備をした。父さんがひぃッ…と悲鳴を上げて魔物がいると訴えかけたんだけど、父さんなら1人で倒せるだろうと振り返るとそこに魔物はいなかった。
父さんが指で差した所を見てみると何かの虫の幼虫がウニョウニョと歩いていたのだ。父さんはこれを見て魔物だ…僕は精神的ダメージを今負っている。とか言い出して足をガクガク震わせていたのだ。もしかしてと思った僕はその幼虫を手にのせて、父さんのとこに持っていくと拒絶反応されて
「やめ…やめろ!!」
という叫び声とともに出された拳は辺り一面の木々を風圧で投げ倒し1本の道が作り出された。父さんは虫が苦手なことで初めて人間味を感じた。その後も勇者の剣を使うことなく森を抜けケカゴン島の国境付近まで着いたのだった。なんかやせ細った父さんを横目にここまでたどり着いたんだという達成感の方が頭の中でいっぱいだった。
ケカゴン島について父さんも調べており、その特徴として住民がとても鍛えられていて他の国から「バーサーカー」と呼ばれているが大袈裟だと僕は思っていた。
門の守りがいなくて人手不足なのかと思っていたら門番のような人がこちらに来てこう言った。
「すまねぇなぁ、空飛ぶトカゲにちょっと時間食ってたわ」
その空飛ぶトカゲというのは一般の冒険者が束になっても勝てない赤竜と言う魔物で、それを冒険者でもない人達が少し束になって倒してしまった。いつもこの様なトカゲを…倒していらっしゃるんですか?
「いつもは赤い奴じゃなくんて青とか緑のトカゲなんよ、赤はあんまし見ないな。」
いや、青竜と緑竜やないかい。赤竜よりも強さは劣るけど冒険者からしたら強さ変わらんて。てことはこの人達のステータスって「ドラゴンスレイヤー」って称号があるんじゃないかな。
一般的なこの称号は貴族にもなれる可能性がある凄い称号なんだけど 多分この人達はそんな事1ミリも思ってないんだろうな。
えっと…僕達はこの場所を豊かにするんだけど何をどうしたら良いんだ?こんな強い魔物を倒せる人達がどうせ沢山いるのにこれ以上何を求めるんだろうか。僕は学園の生徒だという事と何か困ってないかと聞いて回るとケカゴン島の村長と話すことになった。
この様な人達を束ねる長だからヤバい人が…というのは正解で、先程会った門番が身長2m位だったのに少し大きい2m20cm位の髭がもっさり生えた大男が現れた。この男こそがケカゴン島の村長である「エドガー」さんだ。
少し怖そうな見た目と裏腹にニコニコしていて気前よく話してくださった。ケカゴン島のシンボルでもある山があるのだがその山は大きな亀の甲羅であり、大きい魔物なのだ。
でもその魔物に敵意はなく、ケカゴン島の守り神として讃えられている中で山にある火山から出る火山灰が問題らしい。1年に何回も噴火して大量の灰がこのケカゴン島に降り注ぐのだが、それを吸った子供達が激しい吐き気と熱になってしまう現象陥ってしまったのだ。
大人がそうなってしまうことはあまりないらしいが子供にその灰は適応できないとのことで父さんに少し話を聞いた。
この灰はいわゆる魔力でできた灰だね。先程言っていた通り、魔物から出る灰つまり敵意を示していないのは嘘でありチマチマとケカゴン島の住民に攻撃しているんだよ。
あの亀はこの島の住民から神として崇められているってことは少なからず安泰の地というわけだ。倒される対象になることは無いと奴は考えているんだろうな。僕が出来るのはあくまで調べてあげるだけで学園のルールにのっとり、僕はこの人達に何もしてあげれないよ。
魔力灰は体に入って魔力を活性化させるんだ。そう聞くとステータスが強化されているだけに思えるけれど、子供たちの場合は別で魔力をまだ制御できていない者たちがこれを吸ってしまえば時期に自身の魔力が暴走してそれに耐えられなくなった体は爆散してしまうだろう。まずはここにいる住民を灰から守る活動をすれば良いんじゃないかな。
そう父さんに聞いた後この事を村長さんに伝えた所、各場所の村長にも伝達して一斉に灰掃除が始まった。




