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劣等薬屋は世界を救う  作者:
劣等薬屋 序章 ミヤ編
12/94

12.銀の騎士襲来

 僕はミヤ、ここ薬師温泉旅館の役立たず兼取締役です。温泉の評価はうなぎ登りですが肝心の薬ポーションは一向に売れません。温泉自体がハイヒール=中位ポーション位の効果があるので大抵の傷は全て癒えます。これは生産業界に多大なる傷を負わせました。この温泉によって下位ポーションと中位ポーションの価値は下がり、まして作られる事が少なくなるといった現象にまで堕ちてしまったのです。


 上位ポーションだけはまだ地位を確立していますがいずれは温泉がそのくらいの効果になると予想されています。僕はみんなに気持ちよく入ってもらいたいと思ってただけなのに、薬師の同業からは痛い視線を向けられるばかり。


 というのもあり、この薬師温泉旅館「九条」に行けば治るっと言うお客さんばかりになり、リンガルは元々交易都市というのもあり遠方のお客さんも沢山来るようになった。お陰様で毎日賑わい旅館も全部屋満員になってしまいました。


 ですが来週は銀の騎士の皆様が旅館の方を貸し切りにする予約をされたので準備に取りかかった。前にオークションでチラッと見ただけだったが浮かない顔をしていたのは覚えているし、最上位ポーションを落札した時も不安な感じだった。一応元薬屋として冒険者に役立つ物やポーションでも作っておこう。



 当日が来た。ラッタクさんと隣にいる女性の方と銀の騎士の皆様を出迎えた。一通り旅館内の説明を終えるとラッタクさんが話がしたいと応接室に、先ほどから近くにいた女性も連れて向かった。


 一応僕、オークションでラッタクさんを見かけたんですけどなんかあったんですか?最上位ポーションを使う程の事だから予め覚悟は出来てるけど…


「実は…あの古竜襲撃後負傷して王都に休んでいたクランメンバーを救いに行った時、不意にウイルスを彼女が吸い込んでしまいこんな感じに…」


 と横の彼女の仮面を取ると顔半分が紫色に変色していた。これもあの呪いのせいだろうが、人によって呪われる部分も違うんだな。

 だから最上位ポーションが凄く欲しかったのか、申し訳ないことをした。その呪いでは最上位ポーションで治すことはできないのに、クランの資金であろう物を…。その時の僕は言葉を発せなかった。

 

 ラッタクさんはこの呪いを治してほしいと言ってきたが僕には治せない。代わりに温泉に浸かればその呪いを抑える事はできるし、顔の呪いも少しばかり薄くなると告げた。


 その話を聞き入れてくれたのかその日以来毎日温泉に来てくれた。正直昨日の貸し切りは皆沈黙していて空気が重く、話す内容が無かった。


 ラッタクさんにはお世話になっていたので温泉の料金は無料にしてその代わりに、ユウキとシルフィに剣の特訓をお願いした。ラッタクさんは快く受け入れてくれ、それに応える働きをした。


 

 時は過ぎて2年後の1月頃、ユウキとシルフィの誕生日会が行われた。その日は休業にして繁華街の皆さんと旅館のみんなでお祝いをした。12歳になったので学園からの招待状と案内が届いた。学園は薬師温泉通りから徒歩で20分程度の場所にあるので寮ではなかった。


 ユウキは寮に憧れを持っていたのか駄々を捏ねていたが、シルフィが怒鳴って事を鎮めた。流石双子というわけだ。


 2人ともいい成長を遂げていた。2年と数カ月前までは何処か死にたそうな顔をしていたのに、今では笑顔が絶えない。あの子たちにはこの先もそうであってほしいし、王都に行かないでほしい。


 今現在の王都はウイルスや毒の蔓延で人が入れない状態になっているが度々人?の目撃情報がある。それが本当に人なのか分からない。故郷である王都に2人が行きたいと言った時が来るもんなら酷く叱ろうと思う。


 なんだろうね、これが親ってやつなのかな。子離れはするべきだけど危険な真似だけはしてほしくない。昔の僕はこうなるなんて考えもしなかっただろうな。


 誕生日会も終え眠りについた。



 

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