98.ヒールの間違った使い方
ちょっとダークというかシリアスというかそんな感じがするので苦手な方はスキップ推奨します。
なんていい日なんだろう、昔もこんな事あったような気がする。拷問は僕の専売特許と言っても良いくらいだろう。
ミト「僕らは最初から騙されていたのか」
ユズキ「完璧な工作をしたつもりが…」
シラフィ「どこで間違ったのか未だ分からないわ」
分からなくて結構です。あなた達はこの世界線に生きてはいけないと判断したので、戻すのではなく暗殺には暗殺で返してやりますよ。
僕は1つの魔法をミト達に見せた。その魔法は傷を回復させるヒールだ。
カエキ「至って普通のヒールじゃない」
ヴァイノレット「異常な回復量で死なせるつもりでしょうが私達は訓練されて一切効きませんがどうしますか?」
これは確かに普通の回復のヒールだ。傷を癒やしてくれる優れものだが使い方を変えれば相手を傷つけることもできる。ヒールだと火球くらいのダメージを受けても回復できる程度とあるが、火球程度のダメージというのは人体で考えると「歯」や「爪」を引きちぎられるくらいと定義する。
このヒールは今、僕の刻印で歯や爪を逆ヒールするようにした。つまりこれを君たちに向けて放つとどうなるか別世界線の君達でも分かるよね?
僕は君たちが僕の世界の人と同じ顔や姿だからって平気さ。顔だけをゴブリンやオークに変えてしまえば魔物退治をしているのと変わらないからね。さてと、ここにいるのはオーク(ミト)が1匹とゴブリン(ミト以外)が6匹ってとこか。
Dランクの冒険者が受けそうな依頼みたいでつまんないな。一気に潰せるけどそれだともっとつまらなくなる。僕は1人のエンターテイナーとして僕自身を楽しませないといけないんだ。その為にはとことん僕の道具になってもらうからね…別世界線の僕♡
ミト視点…
僕は思った。暗殺家業を継いでいくつもの難題をクリアしてきたが、それは最強の暗殺一家だった為同等の強さを持つ敵やターゲットを知らなかった。
そして今日、目の前でそれを見た。完全な悪に染まった「本物」の暗殺者を…僕がやっていた暗殺は親のマネに過ぎない。マニュアル通りに殺っては次のターゲットを殺る様なループだった。1つの失敗もなく淡々とする日々に飽きることはあった。
僕自身も僕と同様の強さを持つ者と殺り合ってみたかった気持ちが少しはあった。今がそうなのだろうけど、その感情は僕には出てこなかった。
僕の出てきた感情は「恐怖」の一択だった。
人間の本能と言っていいのだろうか、勝てない生物から逃げようとする本能が僕を更に恐怖へと導く。脳は既にパニックを起こして魔法を唱える事すら考えることができなくなっていた。
何も感じることができないと思っていたら右から強烈な叫び声がした。この声はユズキだ、僕と亡きサナ(別世界のサラ)の子供だ。息子の叫び声がする中何もできない僕を許してほしい…僕は暗殺家業を継いで一度も流さなかった涙を流した。
首を動かすことができないから息子の安否が分からない。先ほど大きく叫んでいた声は止まり沈黙が続いた。もしかして殺されたのか…ユズキに限ってその程度で死ぬわけがない。そうだ、暗殺術の1つに一定時間心臓を自ら止める事ができるあの技を使ったんだな。やるなぁ息子よ…
ミヤ「はい、これ息子」
突然私の目の前に息子の顔が出てきた。息子の目は上を向いていて血涙が出ていたのを見た僕はユズキが死んだことを確認した。
ミヤ「息子君は結構耐えれたよ。けど…精神的に参ってしまって殺してほしいって頼まれた時は笑ったよ。」
このクズ野郎が、息子達は何も悪くない、僕が命令してやったことだから僕に…
ミヤ「そう言ったからこう答えたんだ、いずれ失血死するから大人しく待てば?ってね。」
娘のシラフィに手を出すな…決して手を出すな!
ミヤ「そんなに娘を大事に思ってるんだね」
子供は僕にとって宝なんだ…だから罰するなら僕だけにしてほしい…頼む!
そう言うミトにミヤは息子のユズキの首を持ってきて言う。
ミヤ「息子さんはそう思われてなかったって事でいいのかな?娘の時だけにそんな言葉言っておいて子供なのに…宝なのに…平等にはなれなかったのかな?」
クソ野郎が!
ミヤ「息子さんにとってはどっちがクソなんだろうね。」
と僕の足元にユズキの首を投げ捨てた。僕は泣くことしかできなかった。僕はちっぽけな存在だ…サナと大切に育ててきた僕達の宝が…
死んだユズキの目が突然動き出して僕をじっと見つめていた。そして閉じた口がゆっくりと開き出す。
ユズキ「ぼく…は…お父様の…大切…な…存在…に…なれな…ったの…か…」
そう言うユズキの首は段々ミトに近づいていき足元まで来た瞬間ミヤがユズキの顔を持って、先ほどと同じようにミトの顔面に素早く近づけた。
ミトはその衝撃で何かが千切れたのか意気消沈してしまった。
ミヤ「君たちのボスは僕の拷問をするまもなくおっちんだけど…どうしようかな」
僕は眠っていたんだろうか…あのまま意識を失って倒れてしまったから死んだと思われたのか。だけど僕の体は言うことを聞かない、何かに縛られている感覚だ。
???「そろそろ目を覚ませって」
僕の目の前に誰かいる…もしかして助かったのか…それなら少しだけゆっくりしよう
???「寝るなって!」
そいつは僕を強く叩く。
なんだよもう…今やっと恐怖から解放されたっていうのに。
ミヤ「何言ってんだお前」
僕の眠たかった気持ちは目の前の光景で完全に覚めてしまった。
目の前にあったのは6個の椅子とその上に置かれた皿の上に子供達とカエキ達の首が置いてあった。
ミヤ「さぁ…拷問も終盤に入ってきました!題してオークさんはどの首が好みでショー!!」
はぁ?
ミヤ「オーク(ミト)には予め僕以外の首を見ると食べたくなる洗脳をかけています。この6人のうちどの首を食べるのか気になりますね。」
何故だろう…子供達の首が目の前に合り、今にも殺したい奴が近くにいるのに子供達の首にしか目がいかない。それどころかヨダレを垂らしてしまう…なんだコレ。
ミヤ「オークさん、そろそろお腹空いてきたでしょう。最初に食べる首だけ知れば後は全部食べていいですよ。」
首を食べる?そんな事できるかよ。第一に人間を食べるなんてできっこな…ない…ないはずなのに僕の脳内は首のことだけしか考えることができなかった。
いくら忘れようとしても好きな物を欲しがるように僕は子供達の首が食べたくてしょうがない。あれ…いつから僕は人間が食べれないって思ってたんだっけ?それに、この目の前の皿に置かれている食い物は食っていいのか?
ミヤ「いいですよ勿論。全部オークさんに用意したものです。」
気前のいい人間もいたもんだな、それでは早速いただいていこうか。
ミヤ(脳内がバグって勝手に自分をオークだと認識してしまったのか…今お前が食ってるのは宝だと言っていた子供達の首だっていうのに。)
おい人間!まだ食いもんはないのか!こんなんじゃオーク様には足りないぞ。
ミヤ「そこにあるじゃないですか人間の足が。」
オーク様はユズキ達の首以外の体を食い漁って腹一杯になったと思ったけどどうやらまだ足りなかったのでミヤに要求した。
ミヤ「そうですね…ご自身の腕をみてください…それどころか身体や足など」
なんてことだこんな近くに人間の部位があったのか。近くにあるものは気づかない「灯台下暗し」ってやつだな。我にしては中々の頭の良さだな。これも食べていいのか?
ミヤ「えぇ、どうぞどうぞ。(まさか自分の体を食べるとは思わなかったですね。自認オークになったことによって遺伝子操作でもされたのでしょうか)」
ミトは自分自身を食べ始めて痛みと食欲の快感が同時に来ていたが食欲のほうが勝り、気づけなかった。
ミヤ「なんか…飽きてきたな」
ミヤはミトがオーク顔になったのを解除させると先ほどまで食欲で満たされていたミトは激しい痛みに襲われる。自身で噛んで千切って食べていたのに気づかないなんて不思議なものだ。
ミヤ「一応…あれもお前がくったんだぞ」
とユズキ達だった亡骸を指差すとみとの脳裏に自分がオークになって食べたことが頭によぎった。その時には酷く吐いていた、さっきまで美味しく食べていたのに何で吐いたんだろうと、吐いた物をまたミトの口に入れようとした。
ミトはその時点で死んでしまったがミヤは世界樹の雫とエクストラヒールを唱えてミトを全回復させた。
僕は死んだはずじゃ…
ミヤ「生き返らせたんだよ、感謝しな。」
僕が目を覚ますとそこはエレガント薔薇ホテルの一室だった。
ミヤ「きっと悪い夢でも観ていたんですよ、先ほどエントランスで倒れていたので僕の部屋までま運んできました。」
でも…さっき子供達を食べて死んだんじゃ…
ミヤ「その世界線に戻りたいなら戻しますがどうします?」
………。なんでだろう、さっきまでの記憶があやふやになってきた。僕は本当に過労で倒れていただけなのだろうか。それにこのお客様どことなく僕の顔に似ているような気がしたが仕事に戻るためお礼だけ伝えて部屋を去った。
ミヤ「暗殺一家が暗殺をしない真っ当なホテルマンになる世界線って探すの難しかったな。」
ミヤ視点…
本当にサービスの良いホテルだった。これくらいだったら別世界線の僕を残してあげてもいいかもね。けどまた悪さを働こうとしたら、あの世界線に戻ってしまうから気おつけたほうがいいよ…っと言っても記憶すら飛んでるし分からないと思うけど。
ミヤはエレガント薔薇ホテルを静かに去った。




