クロニクル【08】 Ⅸ
クロニクル【08】 Ⅸ 2013年07月08日
カーボスター中のカルシウムイオン(イオン化カルシウム=Ca 2+)とクエン酸イオン(Citrate 3-)の結合様式について Ⅸ
【目的】
カーボスター(以下、CSと略記)中の遊離のカルシウムイオン濃度を理論的に考察する。
【今回の目的】
クロニクル【05】で検討した平衡式でを用いてCS中の遊離のカルシウムイオン濃度、数値計算で求める。その際、前回までの考察結果も考慮する。
【方法】
クエン酸イオン(以下、Citrate 3-と略記)と結合しているカルシウムイオン(以下、iCaと略記)量をx、同様にCitrate3-と結合しているマグネシウムイオン(以下、iMgと略記)量をyとし、且つそれらの間にx:y =1.5:0.5(y = 1/3 x)の関係(元の濃度比)を仮定した上で、TC3-1-10973で考察した錯生成平衡式を用いて数値計算する。
【考察及び結論】 ※ 以下の計算値はexelから得られた値のうち小数点以下第二位までを示したものである(計算桁は最大値または4桁程度)。
1)
ここでiCaとiMgのCS中での存在比が変わらない(y = 1/3 x)と仮定して数値計算すると、x 1 = 0.3173、x 2 = 0.6700及びx 3 = 0.7341近傍で、左式 = 0 となる。x 1 = 0.3137 のときy 1 = 0.1058 → [Ca 2+] = 1.02、[Mg 2+] =0.45 と求められる(x 2 = 0.6700及びx 3 = 0.7341のときは0 > [Citrare 3-] となるので考慮外)。得られた [Ca 2+] = 1.02(mmol/L)はEX-Ca用CS用D及びB液で校正したEX-Caで得られた値1.16 ~ 1.20(mmol/L)と比較して0.14 ~ 0.18(mmol/L)低いので、おそらくこの考え方は正しくないのだろう(iiMg濃度を0.5 mmol/Lに固定しても値は合わない)。
2)上記から出発して水による無限希釈状態でiCaはCitrare 3-と [Ca(Citrate)2 4-] のように1:2結合するが、iMgはCitrare 3- と [Mg(Citrate)-] のように1:1結合すると仮定する。その場合の平衡定数をK2(iCa)として、
が求められる。ここで数値計算の都合上K2(iCa)*K(iMg) = K、[Ca 2+] = 0.0015 = A、[Mg 2+] = 0.0005 = B、[Citrare 3-] = 0.000667=C、1/3(xとyの存在比係数:y / x)= D、すなわち K [{AB(1-x)(1-y)}(C-2A x-By) 3 ]-Ax By = K [{AB(1-x)(1-Dx)}(C-2A x-BD x) 3 ]-ABD x 2 = 0 …… ②’
とし、単位の次数からK2(iCa) ={K(iCa)} 2と仮定しK = {K(iCa)} 2×K(iMg) とおいて数値計算するとx = 0.166 近傍で、左式 = 0となる。このとき、遊離のiCa = F iCa = 1.251(mmol/L)と算出される。これは上記1よりも前回の実験結果1.19 mmol/L及びニプロ用に行ったiCa添加実験の結果 1.20 mmol/Lに近いが、まだ乖離している。
3)そこで実験に合わせて平衡定数K’を与えることにした。x = 0.2 のとき、左式 = 0 となるような平衡定数は5×10 11 であった。y = 1/3 x = 0.067。
K’[ { (0.0015(1 - x) (0.0005(1 - y) ) { 0.001*(2/3) - 2*0.0015 x - 0.0005 y} 3 ) - (0.0015 x) (0.0005 y) = 0 …… ③
4)3より③式を用いてiCa添加実験の実測値と計算値を比較したが、概ね近い値となった。
5)4と同様にTC3-1-10974で行った実験の実測値と計算値を比較したが、こちらは傾向は反映したが値には差が認められた。
まずiMgが存在しないときのiCaの添加量と測定値の関係(左側)では全体的に実測値よりも低い値では計算値が若干低く、逆に高い値では若干高くなる傾向が見られたが、実験値と計算値のある程度の一致が確認された(式の形式上iMg = 0は代入できないので0≒10 - 10 )として計算)。
ただし③式でiMg = 0とするとF iCa = 1.17 mmol/L以外の値は得られないので、式そのものを考え直す必要がある。次いでiCa濃度固定(1.5 mol/L)でiMgを添加した場合の添加iMg濃度と測定iCa濃度の関係(右側)を比較したが、これは大きく乖離した。こちらについてはより複雑な式の見直しが必要と考えられる。
6)結果としてiCaの挙動に関しては概ね③で反映できるが、iMg濃度の増減を考えた場合は不十分(式の見直しが必要)であることがわかった。
【今後の予定】
iMgを含まない場合について錯結合形態を考慮した考察を行う。
※ 上記は予定のみで終わった。
以上