クロニクル【07】 VII
クロニクル【07】 VII 2013年04月19日
(クロニクル【05】 V の別ヴァージョン)
カーボスター中のカルシウムイオン(イオン化カルシウム=Ca 2+)とクエン酸イオン(Citrate 3-)の結合様式について VII
【目的】
カーボスター(以下、CSと略記)中の遊離のカルシウムイオン濃度を理論的に考察する。
【方法】
クエン酸イオン(以下、Cit 3-と略記)と結合しているiCa量をx、同様にCit 3-と結合しているiMg量をyとし、且つそれらの間にx:y=1.5:0.5(y = 1/3 x)の関係(元の濃度比)を仮定した上で、TC3-1-10973で考察した錯生成平衡式を用いて数値計算する。
【考察及び結論】
※ 以下の計算値はexelから得られた値のうち小数点以下第二位までを示したものである(計算桁は最大値または4桁程度)。
1)
ここでiCaとiMgのCS中での存在比が変わらない(y = 1/3 x)と仮定して数値計算すると、x1 = 0.3173、x2 = 0.6700及び x3 = 0.7341近傍で、左式 = 0となる。x1 = 0.3137のときy1 = 0.1058 → [Ca 2+] = 1.02、[Mg 2+] =0.45と求められる(x2 = 0.6700及び x3 = 0.7341のときは0 > [Citrare 3-] となるので考慮外)。得られた [Ca 2+] = 1.02(mmol/L)はEX-Ca用CS用D及びB液で校正したEX-Caで得られた値1.16 ~ 1.20(mmol/L)と比較して0.14 ~ 0.18(mmol/L)低いので、おそらくこの考え方は正しくないのだろう。
2)上記から出発して水による無限希釈状態でiCaはCitrare 3-と [Ca(Citrate)2 4-] のように1:2結合するが、iMgはCitrare 3- と [Mg(Citrate)-] のように1:1結合すると仮定する。その場合の平衡定数をK2(iCa)として、
が求められる。一先ずK2(iCa)と K(iCa)が同じ値(単位は違う)とし、またy = 1/3 xの関係を持たせたままでxを求めると、x1 = 0.1792、x2 = 0.2276及びx3 = 9757近傍で、左式 = 0となる。x = 0.1792のとき、[Ca 2+] = 1.23(mmol/L)と算出される(x2 及び x3 のときは0 > [Citrare 3-] となるので考慮外)。得られた結果は先の実験値1.16 ~ 1.20(mmol/L)を僅かに外れるので、若干のK2(iCa)補正が必要と思われる。②式でK2(iCa)= 7400((mol/L)-2)とすると、[Ca 2+] = 1.20(mmol/L)が算出される。
3)上記では②式でK2(iCa)の値を変化させたが、K2(iCa)と K(iCa)が同じ値(単位は違う)とし、y = 0.12 xと仮定しても [Ca 2+] = 1.20(mmol/L)が算出される。
4)y = 1/3 xでK2(iCa)= 7400((mol/L)-2)の場合とy = 0.12 xでK2(iCa)= 1479((mol/L)-2)の場合とでiCa添加実験の結果再現性を比較した。
上記の結果からはy = 0.12 xでK2(iCa)= 1479((mol/L)-2)の方が再現性が良いと考えられるが、この比較からだけでは結論は出せない。
5)本考察から導かれた遊離のiCa濃度は、[Ca 2+] = 1.23(mmol/L)。先の分子模型による考察から導かれた遊離のiCa濃度は、[Ca 2+] = 1.17 ~ 1.21(mmol/L)。双方の結果を纏めると、CS中の遊離iCa濃度は、[Ca 2+] = 1.17 ~ 1.23(mmol/L)と見積もられる。
【今後の予定】
正しいと思われるxとyの関係について考察したいが、とりあえず方法がないので、一旦保留とする。
以上