クロニクル【05】 V
クロニクル【05】 V 2013年04月17日
カーボスター中のカルシウムイオン(イオン化カルシウム=Ca 2+)とクエン酸イオン(Citrate 3-)の結合様式について V
【目的】
カーボスター(以下、CSと略記)中の遊離のカルシウムイオン濃度を理論的に考察する。
【方法】
カルシウムイオン(以下、iCaと略記)またはマグネシウムイオン(以下、iMgと略記)とクエン酸イオン(以下、Cit 3-)が1:1結合する場合の錯生成平衡定数が発見できたので、それを利用する。
【考察及び結論】
※ 以下の計算値はexelから得られた値のうち小数点以下第二位までを示したものである(計算桁は最大値または4桁程度)。
1)本来は、
としてK(iCa)×K(iMg)を求めれば良いのだが、その場合、iCa = 1.5(1 - x)、iMg = 0.5(1 - y)となり、xとyの関係 が一義的に決められなければ答えが得られないので、以下の考察とした。
2)文献2に記載の方法を応用し、iCa及びiMgとCit 3- が1:1結合しているときのイオン濃度を見積もった(濃度はmmol/L)。
最初のiCa濃度:1.5、最初のiMg濃度0.5、最初のCit 3- 濃度2/3=0.67(上記したが、これは0.66666……を示す)とし、iCaとiMgは同じイオン種として扱い([(Ca 2+) + (Mg 2+)] = 2.0(mmol/L))、また錯生成平衡定数も同じと仮定して、平衡状態において金属イオン種がx(mmol/L)(0 ≦ x ≦ 1)だけCit 3- と錯結合すると仮定すると、平衡時のそれぞれのイオン種の濃度は、
[(Ca 2+) + (Mg 2+)] = 2.0(1 - x)、Cit 3- = 0.67 - 2.0 x、[M(Citrate)-] = 2.0 x(M:iCaまたはiMg)(単位はmmol/L)
となる。錯形成平衡定数に文献1の値(K = 1479(iCaの場合)、1950(iMgの場合)(単位は(mol/L)-1))を用いると、
より、錯生成平衡定数がK(iCa)=1479のときx = 0.23となり、結果、[(Ca 2+) + (Mg 2+)] = 1.54(mmol/L)が得られる。クロニクロ【04】で行ったと同様にiCaとiMgの存在比で上記を補正すると、iCa = 1.15、iMg = 0.38(mmol/L)と見積もられる。同様にK(iMg) = 1950の場合は、iCa = 1.13、iMg = 0.38(mmol/L)と見積もられる(小数点以下第二位まではiMg濃度に差は見られない)。
よって、この考えではiCa濃度は1.13 ~ 1.15(mmol/L)と見積もられる。
3)上記の値は、現在評価中のEX-Ca用CS用D及びB液で校正したEX-Caでこれまで得られたiCa濃度1.16 ~ 1.20(mmol/L)
と比較すると若干低い(TC3-1-10971で行ったようなiCaとiMgの重み付けの考察は出来ない)。これは上記の平衡式が無限希釈状態では正しく成り立たないことを示唆している可能性がある。
ただし上記のKは実際には未知の値である。例えばK = 940((mol/L)-1)とするとiCa = 1.20 mmol/Lと算出される。
4)文献1、2及び3にiCaまたはiMgとCit 3- が1:1結合している場合が明記されているが、これによって、これまで行った結
合比iCa:Cit 3- = 1:2 での考察が否定されるわけではない。
5)iCa及びiMgがすべてCit 3- と1:2結合すると仮定すると、次式
より、K* [0.002(1-x){0.001*(2/3)-2×0.002 x}2] - 0.002 x = 0 …… ② が導かれる。TC3-1-10971においては、すべてのCit 3- が溶液中の金属イオンと結合していると考えているが、これは②の平衡式でKが無限大の場合と同じなので、ここで
K ≒ 1011 として数値計算すると x = 0.167となり、[(Ca 2+) + (Mg 2+)] = 1.67(mmol/L)と算出される(その先はTC3-1-10971と同じ考察)。
【今後の予定】
考察1)の平衡式の値でx(Cit 3-と結合しているiCa):y(Cit 3-と結合しているiMg)=1.5:0.5と仮定し、数値計算でxを求める。
文献1:
JAEA-TDB における有機物関連の熱力学データの整備
日本原子力研究開発機構
地層処分研究開発部門 地層処分基盤研究開発ユニット
三原 守弘
(2009 年12 月17 日 受理)
以上