クロニクル【03】 III
クロニクル【03】 III 2013年02月07日
カーボスター中のカルシウムイオン(イオン化カルシウム=Ca 2+)とクエン酸イオン(Citrate 3-)の結合様式について III
【目的】
クロニクル【02】において錯形成能がカルシウムイオンより高いと考えられる遷移金属のコバルトイオン(d電子数7)をカーボスター(以下CSと略記)に加えると遊離のカルシウムイオン濃度が増加する(1.50(iCa理論値)-1.17(遊離iCa) = 0.33 mmol/Lの添加で約1.17 → 1.30 mmol/Lになることを確認した。本報では他の遷移金属(二価)でも同様傾向が見られるかどうか確認した。
【実験】
※ 在庫があった塩化銅(銅イオン:d電子数7)及び硫酸亜鉛(亜鉛イオン:d電子数7)で実験した。
CSの調製:B剤原末1.4702 gを正確に秤量し8割程度精製水を充たした500mLメスフラスコ中に攪拌しながら加え、数分後一旦攪拌を止めてA剤原液を14.29 mL正確に加えてからメスアップし、再度数分間攪拌した。
1 mol/L CuCl2 溶液の調製:塩化銅(II) 二水和物1.7048 gを正確に秤量し10 mLメスフラスコに加え、8割程度精製水を充たして固体を溶解後メスアップし、その後数分間攪拌した。pH2.6(簡易計で測定)。
1 mol/L ZnSO4 溶液の調製:硫酸亜鉛(II) 七水和物2.8756 gを正確に秤量し10 mLメスフラスコに加え、8割程度精製水を充たして固体を溶解後メスアップし、その後数分間攪拌した。pH5.0(簡易計で測定)。
Cu2+ 及びZn2+ 0.33 mmol/L入CSの調製:先に調製したCS(EX-Ca測定用に1.50 mL使用したもの)に、それぞれの1 mol/L 溶液 0.165 mL及び精製水1.335 mLを正確に加え、その後数分攪拌した(このときの全Ca 2+ 濃度は正しくは1.50 mmol/Lではない(1.496 mmol/L)。他のイオンも同様に元濃度の500/498.5倍になっているが誤差範囲とした)。
測定機器:EX-Ca(EX-Ca用透析校正セットで校正したもの。Na、K、Ca電極のみ新品。Ref.及びpH電極は中古品)。
※ 銅イオンに関しては前報同様目視で錯イオン形成の確認を行った。またコバルトイオンの追試も行った。
【結果】
1)表1から判るようにCSで1.16~1.18 mmol/Lであった遊離のCa 2+ 濃度が M 2+ を0.33 mmol/L加えることによって1.28~1.33 mmol/Lまで上昇した。
【考察及び結論】
1)前報と同様の結果が得られたので、カルシウムに近い周期の遷移金属では皆同程度にカルシウムイオンからクエン酸イオンを奪うのであろう。
2)このデータからだけでは判断は付け難いが、元溶液のpHもpHに影響していると思われる。銅イオンで若干値が高いのは、そのせいかもしれない。
3)用意が簡単のためEX-Z/D用校正液1ベースのイオン選択性検査試薬を用いた妨害イオン(+ 100 mmol/L)の結果は、
(1) EX-Ca測定時は透明(青色)で沈殿はなかったが、測定後、暫くしてから沈殿(Cu(OH)2)が生じた。沈殿は全銅イオンの一部で、すべてではない。沈殿後の験液(青色)のpHは3.9。結果的に高濃度(100 mmol/L)のCu 2+ イオンがCa電極に悪影響を与えたことが、その後のEX-Ca測定データからわかった。
(2) 調整時に既に沈殿(Zn(OH)2))が発生していたので上澄みだけを測定した。沈殿後の験液のpHは6.1で上記よりも沈電量は多いと推測されるが、すべての亜鉛イオンが沈殿しているわけではない。
※ 上記によりCuとZnの値は参考値だが、それぞれのイオン(0.33 mmol/L)がCa電極与える影響はごく少ないと考えられる(極端な例だが、各イオン(100 mmol/L)の9割が沈殿したとしても、濃度は0.33 mmol/Lは10 mmol/Lの3.3%に過ぎない)。
であった(0.33 mmol/L各イオンを加えても実際上の妨害はない)。
【今後の予定】
1)次に傍証または検証法を考え付くまで保留とする。
以上