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Ca-16 【マグネシウムイオンも加えた場合の考察】

 カーボスター中に存在するカルシウムイオン、マグネシウムイオン、クエン酸イオンの量は、それぞれ1.50、0.5、0.67(=2/3)(mmol/L)である(カーボスター添付文書より)。全体に6を掛けると、その割合の比は9:3:4となるので、これを単純に個数と考えるとクエン酸イオンに消費され得るカルシウムイオン+マグネシウムイオンの総量は9 + 3 = 12ヶとなる。マグネシウムイオンもカルシウムイオンのようにクエン酸イオンと1:2で錯形成すると仮定し、またその錯形成定数もカルシウムイオンと等しいと仮定すると、金属イオン1ヶについて2ヶのクエン酸イオンが消費されるのであるから、残るイオン種の総量は10ヶとなる。これを濃度に戻すと1.67 mmol/Lとなるが、これは(iCa + iMg)の値である。iCaとiMgの割合は9:3なので、iCa/(iCa + iMg)= 9/12、iMg/(iCa + iMg)= 3/12より、その割合で上記に重みを付て単純計算すると、遊離のiCa及びiMg濃度は、それぞれ、iCa = 1.67 ×(9/12)=1.25、iMg = 1.67×(3/12)=0.42(mmol/L)と算出される。これは実験値1.18~1.20 mmol/Lに近いが、まだ一致しているとはいえない。

  これまでiCaは無限希釈状態(活量=1、事実上数mmol/L以下の濃度)にあって初めてCitrate 3- と

[Ca(Citrate 3-)2] 4- を形成できると仮定したが、これはiMgでは成立しないと考えられる。というのは3d電子軌道以降を用いる6配位の配位結合は通常周期表第三週目の遷移金属以降で形成されると考えられるからである。カルシウム原子の原子番号は20なので電子配置は(1s)2(2s)2(2p)6(3s)2(3p)6(4s)2であり、ここから電子を2個取り2価のイオンとすると(1s)2(2s)2(2p)6(3s)2(3p)6となる。すなわちカルシウムイオンはd軌道が空の遷移金属(原子番号でカルシウムの次のスカンジウムからはじまるのが遷移金属)と見做せるが、Mgの原子番号は12であるので(1s)2(2s)2(2p)6(3s)2。ここから電子を2個取ると(1s)2(2s)2(2p)6となり、3d軌道には遠い。

 ここで初めに戻ってMg 2+ :Citrate 3- =3:2と考えると、マグネシウムイオンの存在によって消費されるクエン酸イオンは0.5×(2/3)≒0.33 mmol/L。よって残りのクエン酸イオンは(2/3)-{(0.5×(2/3))≒0.33 mol/L。よって遊離のカルシウムイオン濃度は1.50-(0.33/2)=1.33 mmol/Lとなり、実験値1.18~1.20 mmol/Lとは乖離する。同様の考え方の場合、Mg 2+ :Citrate 3- =6:1と仮定すると、(2/3)-(0.5/6)≒0.58 mol/L。

1.50-[{(2/3)-(0.5/6)}/2]=1.21(1.2083)mmol/Lとなり、実験値1.18~1.20 mmol/Lとかなり近くなるが、理論的根拠が不明である。この考え方の場合、マグネシウムイオンはクエン酸イオンとキレート結合するが、その結合力は [Ca(Citrete)2] 4- よりも強く、クエン酸と配位結合しているカルシウムイオンよりも先にクエン酸イオンを消費すると仮定する。更なる考察としてカーボスターに塩化カルシウムを添加した実験結果に合わせると

Mg 2+ :Citrate 3- =12:1で遊離のカルシウムイオン濃度が1.19(1.1875)mmol/Lと算出される(表2及び図6参照)。

 次にマグネシウムイオンとクエン酸イオンが最大でも1:1でしかキレート結合できない場合を考える。これはカルシウムイオンの側から見ればクエン酸イオンを競合する能力が自身の最大半分ということになるが、それではわかりにくいので、ここではiMgの代わりに、iCaと共存し、iMgと同じ程度にiCaとCitrate 3-を競合する架空の金属イオンiMを考えることにする(iMは Citrate 3- と[M(Citrate 3-)2] 4-  のように錯結合すると仮定する)。するとiCaの側から見て、共存するイオン比は9:3:4ではなく、9:1.5:4(iMg → iM補正 3×0.5=1.5)→ 18:3:8(整数比)→ 126:21:56(クエン酸イオン数で割り切れる整数比)と補正されることになる。

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

 {(18 + 3)-(8/2)}/12 = {(126 + 21)-(56/2)}/84 = 1.42(遊離のiM濃度)。1.42×(18/21)= 1.42×126/147 = 1.21(1.2143)mmol/Lとなるので、ひとつ前の仮定における遊離の

iCa濃度より若干外れるが、実験値1.18~1.20 mmol/Lとかなり近くなる。これもカーボスターに塩化カルシウムを添加した実験結果に合わせて修正するとと、マグネシウムイオンの結合能がカルシウムイオンの1/6のとき遊離のカルシウムイオン濃度は1.18(1.1842)mmol/Lと算出される。



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