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第7話 教育機関=洗脳施設

佐条凛花が体育教師山崎正和の姿で殴り掛かってきた瞬間、俺は後悔していた。

早くこの場から離れていれば、彼女が()()()になることはなかったのに。

恐怖とかそういった類の感情はなかった、なぜなら暴力により怪我を負うのは俺ではないから。

それは確定事項だった。

俺の防衛本能は身体の危険を察知すると、全力でその危険を取り除こうとする。

それがたとえ暴力という名の外的要因だとしても。

俺の体が拳を作ると同時に彼女の体は硬直し、そのまま糸の切れた人形のように地に伏せた。

「っ!?な、にが…」

その瞬間、俺は歌苗の仕業だと悟った。

横たわった佐条凛花の横から小柄なアルマジロのような動物が路地に逃げていくのが見えた。

それは彼女の後方から飛んできたものだった。

これは歌苗の能力によるものだ。

「…間一髪セーフってとこかしら?」

「歌苗…」

「久々に能力使ったから加減できてないかもだけど、能力者なら大丈夫でしょ」

彼女の能力は生物創造(アニマクリエーター)と呼ばれるらしい。

自分の想像通りの生物を無から創造できる力であり、その有用性から彼女は俺の暴走を止めるべく監視係に任命された。

創造される生物は現実の法則に縛られることはなく、実際には何でもありだ。

「…その子はどうなるんだ」

「まあ、十中八九教育機関からの諜報員入り。あんたも知っての通り天然の能力者は貴重だから」

一般市民から能力者が発見された場合、大抵は国の諜報機関で働かせるべく教育機関もとい洗脳施設に送られる。

「今回だけ、例外ってわけには…」

「何、出会って数日の女の子に情でも移った?」

「そういうわけじゃ…今回のは俺のミスでもあるわけだし…」

そう、俺がこの場からすぐに立ち去っていれば歌苗の強制介入は避けられた。

こういった事態が発生しない限り、俺も歌苗も能力者発見の報告を機関にすることはない。

なぜなら教育機関送りにされた能力者の末路は悲惨だと俺も歌苗も身を持って知っているからだ。

「今回は見逃すのは難しいわね…理由は主に2つ。一つ目は能力を利用しての犯罪行為が常態化していること。こんな調子じゃ私たち以外にもいつかはバレる」

「…もう一つは?」

「二つ目は能力の特異性!体系、性別、声帯全部無視の変身能力なんて各国の諜報機関、能力者組織が喉から手が出るほど欲しがるに決まってる。放っておけばそのうち拉致られて頭の中いじられまくるわよその子。故に!ただ見逃すわけにはいかないって訳。…そんくらいあんただってわかってるんでしょ?」

「…あたまん中いじるのは俺らが報告したって変わらないだろ」

しかし歌苗の言うことは正論だった。

このまま放置して他国の組織に狙われるよりも、少しでも俺らの目が届くところに確保した方が彼女にとっても幸せかもしれない。

しかしそれは―――――――――

「そこで折衷案!!!私から部長に掛け合ってなんとか教育機関行きは避けられるようにしてみよう!!」

「マジでか!?…ちょっと待て」

安堵したのもつかの間、というのも歌苗からこう言った提案があった時には大抵ろくでもない条件がセットになっている。

人の命であってもタダでは救わない、彼女はそういう人間だ。

「ふっふっふ…察しがよろしいようで」

「…なにが望みだ」

「まぁ~まぁ~まぁ~、それはあとでいいじゃですか八海クン!あんたはこの後デートがあるんでしょ?帰ってきてからゆっくり話し合おうじゃないの~」

「ぐあああああああああ!!!」

あれは絶対ろくでもないことを考えている顔だ。

問題は山積み。

しかし俺は赤穂さんとのデートをすっぽかすわけにもいかず、口から泡を吹き地に伏せる佐条凛花を歌苗に任せ駅に向かうのであった。

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