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第5話 ストーカーでメタモルな親友

赤穂紗由美の姿から変形し、そこに現れたのは佐条凛花その人だった。

約束をしたあの日に赤穂さんを迎えに来た彼女の友人。

「ちなみにどこらへんで気づいたの?見た目は完璧になるはずなんだけど」

「…赤穂さんは生粋の僕っ娘だ。自分のことを()なんて呼ばない」

「あぁ、なるほど…よくミスるんだよね一人称。しぐさとか口調とかイントネーションは練習してたんだけど、うっかりしてた」

そう言い彼女はめんどくさそうにため息をついた。

「俺からも質問させてもらう。どうやって姿を変えた?」

目の前の佐条さんと赤穂さんでは背丈も体系も違う、見た目を装うだけではあの姿は説明がつかない。

「三年ぐらい前かな、さゆが中学の先輩に告られた。学校でも人気のある先輩で、私も悔しいけどお似合いだと思ってた。でもその男の女癖が悪いって噂を聞いてね、後輩を手を出しまくるヤリ逃げ野郎だって。それで」

彼女は頭を掻きながらべらべらと脈絡のない話を続ける。

「…そんなことは聞いていない、質問に答えろ」

「まあ聞きなって。それでね、私はその噂の真偽を確かめようと思った。親友がクソ野郎と付き合おうとしてたら止めるのが親友の役目だと思って。でもその男に直接聞くわけにもいかないしどうしようか悩んでいたとき変わったの、姿が」

「さっきのと同じようにか」

「そう、まあその時はさゆじゃなくてクソ野郎の友達の姿だったけどね。どれだけ鏡を見ても身長も性別も違う男子中学生が映っているからビビったよ。でもその時直感した、これは神様が私にくれた力なんだって。さゆを守るために与えられた力なんだって」

神様に与えられた力、か。

「…それでそいつの姿でクソ野郎にさりげなく聞いたら、噂は本当だった。男子の姿をした私を友達だと疑わずに、まるで武勇伝を語るかのようにこれまでの悪行を全部話してくれた。吐き気がした、さゆがそんな目に合わされると思ったら頭に血が上って」

「殺したのか」

「まさか、ちょっとその場でボコっただけ。どうやらこの力で変身するとその対象と同じ身体能力を得られるみたいでね、か弱い私でも簡単に病院送りにできた。しかもその犯行はクソ野郎の友人の仕業として処理されて、私には疑いもかからなかった。気の毒だとは思わなかったよ、そいつもおこぼれをもらっていたみたいだし。それから私はこの力を使ってさゆに近づく悪い虫をはらってきたってわけ。あんたに近づいたのもおんなじ理由」

「なるほど、完全に理解した」

この際彼女が理由があるとはいえ友人の恋愛を全力でつぶしてきた過保護ガードマンであることには目をつぶろう、変身に関しても俺にとってはそこまで驚くことではない。

なぜ目をつぶるのかって?

俺はこの後赤穂さんとのデートが控えているんだ!

こんな女に時間をかけてデートに遅れたら目も当てられない、早いところ俺が信用に足る誠実な男だということを説明したうえで駅前に向かわなければ…

「…あんまり驚かないんだ、変身のこと。もしかして嘘だと思ってる?」

「いや、目の前で見させてもらったわけだしそこは疑ってないよ。俺の知人にも変身じゃないけど同じような人が何人かいるし。俺も変な体質持ってるし…」

「変な体質?」

「とにかく!俺は君が話してくれたようなクソ野郎じゃない、真摯に赤穂さんと仲良くなりたいんだ。彼女に危害を加えたりは絶対にしない、誓ってもいい!それと手当たり次第に赤穂さんに近づく男をボコるのはやめた方がいいぞ!大体俺にそんな要素ないだろ!いったいどんな理由があって」

「スマホ、どうやったのかわからないけどメッセージの文面変えたよね」

「ギクゥ!」

な、なぜそれを…

「あんたがさゆにメッセを送った日と次の日で文面が変わってた。あのアプリは送信済みのメッセージ文面の変更はできないはず、当然送信取消も。それはどう説明するの?」

説明…できない!

メッセージを改ざんした理由は説明できるが方法が説明できない。

国内では認証されない違法な危機を赤穂さんのスマホに接続して書き変えました~なんて言ったら言い逃れできない、完全に不審者だ。

いや…しかし…

「俺が文面を変えていたとして…どうして、前日のメッセージの文面を知っているんだ」

「…?そんなのさゆに画面を見せてもらえば」

「赤穂さんはあの日スマホを教室に忘れていった!」

「ギクゥ!!!」

「俺がメッセージを送ってから彼女が目の前でスマホを確認するまで既読はつかなかった!そして彼女がスマホを手にした早朝、スマホの充電は切れていた!それでも放課後彼女の机を漁りスマホの通知画面を見ればメッセージの内容を知ることはできるだろう…しかし!赤穂さんがスマホを忘れていることを知ったうえで彼女に知らせないのは親友の行動としては不自然だ!そして今君は動揺したな!」

「どっ、動揺なんか」

「嘘つけ!」

彼女の呼吸は浅くなり、額には尋常でない量の汗がにじみ出ている。

「つまり君はあの日、彼女がスマホを学校に忘れていったことを知らなかった!そんな状況でなぜ放課後に送られたメッセージの内容を知っていると言い出したのか…お前赤穂さんのスマホをよからぬ手段で監視してるだろ!」

「ウボァ!」

歌苗と関わり常日頃監視されている俺だからこそたどり着けたこの結論は間違ってはいなかったようだ。

赤穂さんを守るために赤穂さんに加害しているという事実を突きつけられた彼女は、ショックのあまり道路に横たわったのだった。

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