表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星屑列車  作者: 108
9/10

星屑列車と二人の誓約

 星屑列車の秘密を代々守ってきた一族の末裔であるルリは、ある日、運命的な出会いを果たした。


 古びた天文台で星を観測する、物静かで知的な老人、ゲンとの出会いだった。


 ルリは、ゲンの瞳に宿る星々の輝きに惹かれ、彼に打ち明けた。


 星屑列車の秘密、そして妹ユリとの約束を。


 ゲンは、ルリの話を静かに聞き終えると、穏やかな笑みを浮かべてこう言った。


「君のような若者が、星屑列車の未来を担っているとは、心強い限りだ。私も微力ながら、君の手助けをしたい」


 ゲンは、ルリに星屑列車の運行に必要な知識や技術を惜しみなく伝授した。


 星のエネルギーを最大限に引き出すための儀式、星座の位置と運行スケジュールとの関係、そして星屑列車が持つ特別な力。


 ルリは、ゲンの温かい励ましと深い知識に支えられ、星屑列車の運行を成功させることができた。


 しかし、ゲンの体は病に蝕まれていた。


 ルリが星屑列車の旅に出る前夜、ゲンはルリを天文台に呼び出した。


 満天の星の下、ゲンはルリに一枚の手紙を手渡した。


 それは、リクに宛てた手紙だった。


「ルリ、これはリクに渡してほしい。彼には、君を支える力があるはずだ」


 ゲンは、ルリの手を握り、優しく微笑んだ。


 その瞳には、ルリへの深い愛情と信頼が溢れていた。


 ルリは、ゲンの言葉に込められた深い意味を感じ取り、涙をこらえながら、ゲンに誓った。


「必ず、リクにこの手紙を届けます」


 翌朝、ルリは星屑列車に乗り込んだ。


 窓の外には、ゲンの天文台が見えた。


 ルリは、ゲンとの別れを惜しみながらも、星屑列車の未来を守るために、旅立つことを決意した。


 ゲンは、天文台の窓から、小さくなっていく星屑列車を見送った。


 彼の心には、ルリへの深い愛情と、星屑列車の未来への希望が溢れていた。


 ゲンとの出会いと別れは、ルリにとって、かけがえのない経験となった。


 ゲンの教えと手紙は、ルリの心の支えとなり、彼女を困難な旅へと導いた。



 星屑列車が夜の帳を裂き、満天の星の下を滑るように進む。


 無数の星々が、漆黒の空を埋め尽くす宝石箱のように煌めき、車窓を流れる光は、まるで天の川が地上に降り注いだかのよう。


 その幻想的な光景は、ルリの心を一瞬だけ悲しみから解き放つ。


 しかし、すぐに妹ユリの笑顔が脳裏に浮かび、ルリの瞳は再び哀愁を帯びた。


「リク、実はね、私には妹がいたの。名前はユリ。ユリは体が弱くて、いつも星を見るのが好きだった。ユリは星屑列車に乗ることを夢見ていたけれど、その願いは叶わなかった……」


 ルリの言葉は、ポツリポツリと途切れながらも、リクの心に深く響いた。


 ユリは、幼い頃から病弱で、外で遊ぶこともままならなかった。


 そんなユリにとって、星屑列車は、自由と希望の象徴だった。


 ユリは、いつか星屑列車に乗って、無限に広がる星空を旅することを夢見ていたのだ。


 ルリは、ユリが大切に集めていた星屑を、小さなガラス瓶に入れて肌身離さず持っていた。


 それは、ユリの夢と希望のかけらだった。


 ルリの瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちた。


 星明かりに照らされたその涙は、まるで零れ落ちた星屑のよう。


 リクは、ルリの震える肩をそっと抱き寄せ、何も言わずに彼女の言葉に耳を傾けた。


 ルリの悲しみは、リクの胸にも深く突き刺さる。


 まるで、自分のことのように。


「ユリが亡くなった夜、私は星屑列車を見たの。それはまるでユリが星になったかのように輝いていた。その時、私はユリとの約束を果たすことを決心した。ユリのために、そして星屑列車のために……」


 ルリの言葉は、決意に満ちていた。


 それは、妹への深い愛情と、星屑列車への強い使命感から生まれたもの。


 リクは、ルリの心の強さに心を打たれ、彼女への信頼を深めた。


 ルリの決意は、リクの心に眠っていた冒険心をも呼び覚ます。


 ルリはリクに、自分が星屑列車の秘密を守る一族の末裔であることを打ち明けた。


 一族は代々、星屑列車の運行を支え、星々の輝きを守ってきた。


 星屑列車は、単なる列車ではない。


 それは、星のエネルギーを動力源とし、特別な儀式によってのみ運行される、神秘の列車。


 ルリの一族は、代々その儀式を司り、星屑列車の運行を支えてきたのだ。


「リク、あなたに会うまでは、この秘密を誰にも打ち明けられなかった。でも、あなたとなら、この秘密を共有できると思った。あなたは私にとって、たった一人の希望だから」


 ルリの瞳は、リクをまっすぐに見つめていた。


 その瞳には、リクへの信頼と、未来への希望が宿っていた。


 リクは、ルリの言葉に込められた想いの強さに、胸が熱くなるのを感じた。


 そして、ルリの秘密を守ることを誓った。


「リク、実はあなたの叔父さんに会ったことがあるの。リクに渡してほしい手紙を託したけれど、あなたに会ったこともないのに、こんな手紙を渡せるだろうかと不安だった……」


 ルリの告白に、リクは驚きを隠せない。


「叔父さん? ...ゲンさんのこと?...」


 リクは、言葉を詰まらせた。


 ゲンは、リクの両親が亡くなったあと、唯一の肉親だった。


 リクにとって、ゲンは、父親のような存在であり、尊敬する師でもあった。


 ルリは、リクの反応を見て、すべてを理解した。


「そう、ゲンさんよ。彼は、あなたが星屑列車の秘密を知る運命にあると信じていた。そして、あなたが私を助けてくれると」


 リクは、ルリの言葉に言葉を失った。


 まさか、自分の叔父が、星屑列車の秘密に関わっていたとは。


 そして、ルリと出会う前から、自分たちの運命が交わっていたとは。


 リクは、驚きと同時に、不思議な運命を感じずにはいられなかった。


 しかし、彼らの前には、大きな試練が待ち受けていた。


 星のエネルギーが弱まりつつあり、星屑列車の運行が困難になっているのだ。


 このままでは、星屑列車は永遠に失われてしまうかもしれない。


 ルリは、ゲンから受け継いだ知識と、リクの叔父であるゲンとの思い出を胸に、この危機を乗り越える方法を見つけ出す使命を背負い、リクは、星のエネルギーを感じ取る特殊な能力と、ゲンが残した言葉を胸に、ルリと共に困難に立ち向かうことを決意する。


 二人は、愛と希望を胸に、星屑列車の未来を守るため、壮大な冒険へと旅立つ。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


ぜひ『ブックマーク』を登録して、お読みいただけたら幸いです。


感想、レビューの高評価、いいね! など、あなたのフィードバックが私の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 運命!またまたまさかの展開ですね!!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ