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星屑列車  作者: 108
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過去の傷跡

 星屑を乗せた列車は、深い緑の森を縫うようにゆっくりと進んでいた。


 木漏れ日が車窓を万華鏡のように彩り、リクの顔を優しく照らす。


 彼は食堂車の片隅で、一人コーヒーを啜っていた。


 苦い液体が喉を通り過ぎると、過去の記憶が不意に蘇る。


 幼い頃、燃え盛る炎に包まれた家、両親の悲鳴、そして、全身を焼く激痛。


 あの日、リクは全てを失った。


「リク、どうかしたの?」


 ルリの優しい声がリクを現実に引き戻す。


 心配そうな彼女の瞳を見つめ、リクは深く息を吐いた。


「実は…、僕には、星屑列車に乗らなければならなかった理由があるんだ」


 リクは、これまで誰にも打ち明けることのなかった過去を語り始めた。


「ルリ、実は僕にはね、ずっと叶えたい夢があるんだ」


 リクは、涙を拭い、少し照れくさそうにルリに語り始めた。


「それはね、世界中の子供たちに笑顔を届けることなんだ」


 リクは、孤児院で過ごした日々を振り返った。


 親のいない寂しさ、将来への不安、孤独感。


 そんな子供たちの心を少しでも明るくしたい。


 それが、リクがずっと抱き続けてきた夢だった。


「僕は、いろんな国を旅して、子供たちに絵本を読んであげたいんだ。星屑列車みたいに、彼らの心を温かく照らせるような物語をね」


 リクの瞳には、強い決意が宿っていた。


 ルリは、リクの言葉に心を打たれた。


 彼の優しさと、誰かのために何かをしたいという純粋な気持ちに、心から感動したのだ。


「リク、それは素敵な夢ね。私も応援するよ」


 ルリは、リクの夢を叶えるため、自分にできることはないかと考え始めた。


「そうだ、私の故郷には、古い図書館があるの。そこには、世界中の絵本が所蔵されているのよ。きっと、リクの夢に役立つと思うわ」


 ルリは、リクに故郷の図書館のことを話した。


 リクは、ルリの言葉に目を輝かせた。


「本当? それはすごい! ぜひ行ってみたい!」


 二人は、リクの夢を叶えるため、終着駅に着いたら、ルリの故郷へ向かうことを約束した。



 その夜、星屑列車はネオン煌めく大都市ネビュラに到着した。


 喧騒と活気に満ちた街並みは、リクにとって刺激的だった。


 リクは、ネオンの光が反射するガラス張りの高層ビル群を見上げ、子供の頃に夢見た未来都市を思い出していた。


 ルリと二人で街を散策していると、路地裏からギターの音色が聞こえてきた。


 音のする方へ導かれるように足を進めると、ストリートミュージシャンの青年が歌っていた。


 彼の名はアキ。


 夢破れた若者の瞳には、どこか諦めのようなものが浮かんでいた。


 アキの歌声は、どこか哀愁を帯びていて、リクの心を揺さぶった。


 それは、まるで自分自身の心の叫びを聞いているようだった。


 リクは、アキの姿に過去の自分を重ね合わせた。


 そして、勇気を出して彼に声をかけた。


「君の音楽、すごく心に響いたよ」


 アキは驚きながらも、リクとルリを自分の隠れ家へと招き入れた。


 そこは、古いビルの屋上にある、秘密基地のような場所だった。


 ネビュラの夜景を見下ろしながら、三人は語り合った。


 夢、希望、そして絶望。


 アキは、音楽で人々に感動を与えたいと願っていたが、現実は甘くなかった。


 オーディションに落ち続け、自信を失っていたのだ。


 リクは、アキの言葉に深く共感した。


 自分も同じように、希望を失い、絶望の淵に立たされたことがあるからだ。


「諦めるなよ、アキ。君の音楽には、人の心を動かす力がある」


 リクは、自分の経験を語りながら、アキを励ました。


「僕だって、火事で全てを失って、生きる希望を見失ったことがある。でも、星屑列車とルリとの出会いがあったから、今こうしてここにいる。君にもきっと、君の音楽を必要としている人がいるはずだ」


「リク…」


 アキは、リクの言葉に心を動かされた。


 そして、再びギターを手に取り、歌い始めた。


 それは、希望に満ちた、力強い歌声だった。


 アキの歌声は、ネビュラの夜空に響き渡り、人々の心を照らした。


 翌日、リクとルリは、ネビュラにある星屑列車研究所を訪れた。


 そこは、星屑列車の謎を解き明かすために、世界中から科学者や研究者が集まる場所だった。


 リクとルリは、そこで星屑列車の驚くべき秘密を知る。


 星屑列車は、単なる乗り物ではなく、宇宙のエネルギーを集め、星々の寿命を延ばす役割を担っていたのだ。


「星屑列車は、希望を運ぶだけじゃない。宇宙の未来を支えているんだ」


 リクは、星屑列車の壮大な使命に心を震わせた。


 そして、この列車に乗ることができた自分の運命に、感謝の気持ちでいっぱいになった。


 ネビュラの高層ビル屋上。


 リクは、ルリを夜景の見える場所に連れて行った。


「ルリ、君と出会えて本当に良かった。これからもずっと一緒にいたい」


 リクは、心の奥底から溢れ出る想いを伝えた。


 それは、ルリへの愛の告白であり、未来への誓いでもあった。


 ルリは、リクの言葉に涙を浮かべ、そっと彼の胸に抱きしめられた。


 二人の心は、星屑のように煌めく夜景の中で、永遠の愛を誓い合った。


 それは、決して消えることのない、永遠の絆の始まりだった。


 星屑列車は、夢と希望、そして愛を乗せて、無限の宇宙を駆け抜けていく。


 リクとルリの旅は、まだ始まったばかりだ。


 二人は、これからどんな景色を見て、どんな人々と出会い、どんな経験をするのだろうか。


 それは、誰にもわからない。


 しかし、一つだけ確かなことがある。


 それは、リクとルリが、星屑列車とともに、希望に満ちた未来へと進んでいくということだ。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


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[一言] 主人公の2人みたいに、与え受け取る事ができる愛で世界中の全てが回ってたらいいのにと夢見たくなりました!
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