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星屑列車  作者: 108
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願いを紡ぐ旅

 星屑列車は、夜明け前の薄明かりの中を走り続けていた。


 リクとルリは、食堂車で朝食を共にしていた。


 窓の外には、どこまでも続く大草原が広がり、朝日が地平線を黄金色に染め上げていた。


「リク、見て! あそこに何かある!」


 ルリが指差す先には、小さな灯台が立っていた。


 列車は速度を落とし、灯台のそばに停車した。


「ここはプレアデス・ハーバーだよ」車掌がにこやかに告げる。


「降りて、灯台を見ていくといい。きっと君たちの旅の助けになるだろう」


 リクとルリがプレアデス・ハーバーで降り立つと、そこには美しい光の街が広がっていた。


 クリスタルの柱が空高くそびえ、建物はまるで宝石のように輝いている。


 しかし、街には不思議な緊張感が漂っていた。


 二人は、街の住民たちから奇妙な伝説を聞くことになる。


 その伝説とは、願いを叶える星の欠片を探す旅に出ることだった。


 そして、その旅の鍵を握るのが、この「希望の灯台」だという。


「ここは?」


 リクが尋ねると、車掌が近づいてきた。


「ここは『希望の灯台』と呼ばれている場所です。星屑列車に乗る人々が、それぞれの願いを祈る場所として知られています。そして、この灯台には、人々の願いを星屑へと変換し、宇宙へと届ける力があるのです」


 車掌は穏やかな笑みを浮かべながら説明した。


 リクとルリは、他の乗客たちと共に灯台へと向かった。


 灯台の中は、静かで厳かな雰囲気に包まれていた。


 中央には、大きな燭台(しょくだい)があり、無数のろうそくが灯されていた。


 それぞれのろうそくは、過去の乗客たちの願いが込められた星屑でできており、淡い光を放っていた。


 リクとルリは、それぞれろうそくを手に取り、火を灯した。


 リクは、心の中で、この列車に乗った理由、そしてルリとの出会いに感謝の気持ちを込めて、願いを祈った。


 ルリもまた、静かに目を閉じ、自身の願いを祈っていた。


 ろうそくの火が揺らめく中、リクは突然、過去の記憶のような、未来のビジョンめいた、不思議な映像を見た。


 それは、自分とルリが手を取り合い、星屑を集めながら、様々な星々を旅する姿だった。


 緑豊かな惑星、氷に覆われた衛星、ガスに包まれた巨大な星。


 そして、その旅の終わりには、二人が新たな星を生み出す場面が映し出された。


 ルリもまた、何かを感じ取ったのか、リクの手を握り返した。


「リク、なんだか懐かしい気がする。私たち、きっとまた会えるって、約束したよね?」


 リクも同意した。


「僕もだよ。まるで、昔来たことがあるような…」


 二人は、不思議な懐かしさを感じながら、手を取り合って灯台を出た。


 灯台の周りには、色とりどりの花が咲き乱れ、小鳥たちがさえずっていた。


 しばらくすると、二人は小さな丘の上にたどり着いた。


 そこからは、一面に広がる大草原と、遠くに見える山々を一望できた。


「リク、見て! 虹が出てる!」


 ルリが空を指差した。そこには、七色の虹が架かっていた。


「すごい! 綺麗だね」


 リクは、ルリの笑顔を見て、心が温かくなるのを感じた。


 二人は、虹を見つめながら、静かに時を過ごした。


 この瞬間、二人は、互いの存在がどれほど大切なものかを改めて実感した。


「ルリ、これからもずっと一緒にいようね」


 リクは、ルリの手を握りしめながら言った。


「うん、リク。ずっと一緒だよ」


 希望の灯台での出来事は、リクとルリの絆をさらに深めた。


 二人は、この列車の旅を通して、それぞれの願いを叶え、新たな未来へと進んでいくことを誓い合った。


 その夜、星屑列車は再び走り出した。


 窓の外には無数の星が瞬き、その輝きは、まるで星屑を集めるように列車へと吸い込まれていく。


 リクとルリは、展望車で他の乗客たちと語らい、笑い合った。


 歌を歌い、ダンスを踊り、カードゲームに興じる人々。


 それぞれが星屑列車に乗った理由を語り合い、互いの夢や希望を分かち合った。


 その中に、どこか影のある青年がいた。


 アステルと名乗る彼は、シャドウギャラクシーの科学者だった。


 星々の輝きを守るという組織の理念に共感して入団したものの、その強引な手段に疑問を抱いていたのだ。


 リクとルリの純粋な心に触れ、アステルは自らの信念と向き合い始める。


 リクとルリは、ある老紳士から、星屑列車の秘密を聞く。


 それは、単なる列車ではなく、宇宙のバランスを保つために、星屑を集め、新たな星を生み出す使命を担っているという。


 しかし、その使命を妨害しようとする謎の組織「シャドウギャラクシー」の存在も明かされる。



 静寂を破る轟音。


 突如、星屑列車は激しい揺れに襲われた。


 窓の外を、不気味な影を纏った戦闘機が、まるで獲物を狙うかのように追尾する。


 漆黒の機体に浮かび上がる不吉な紋章。


 それは、宇宙の秩序を乱すことを目論む悪の組織、シャドウギャラクシーの象徴だった。


 リクとルリは、恐怖で身を寄せ合う乗客たちを前に、互いに視線を交わし、決意を固めた。


 二人は、手にした星屑の欠片を固く握りしめ、その力を解放する。


 すると、星屑はまばゆい光を放ち、列車全体を包み込んだ。


 それは、希望の灯台で灯したろうそくの光とは比べ物にならないほどの、力強く、温かい光だった。


 光は、シャドウギャラクシーの戦闘機を弾き返し、乗客たちを安全なバリアで守った。


 さらに、星屑の光は、傷ついた乗客たちの身体を癒し、恐怖に怯える心を穏やかにする。


 幼い少女の擦り傷は瞬時に消え、老人の咳はぴたりと止まった。


 リクとルリは、星屑の持つ計り知れない力に驚愕し、同時に、その力に希望を見出した。


 劇戦激戦の中、一機の戦闘機が黒煙を吐きながら墜落し、中からシャドウギャラクシーの兵士レオンが這い出てきた。


 彼は重傷を負い、血まみれの身体を引きずりながら、助けを求めるように手を伸ばしていた。


 敵である彼を救うべきか、リクは迷った。


 しかし、ルリの「星屑は分け隔てなく、誰をも救う力を持っている」という言葉に心を動かされ、リクは星屑の力をレオンに注いだ。


 レオンの傷はみるみるうちに癒え、意識を取り戻した。


 彼は、敵である自分を救ってくれたリクとルリの優しさに深く感動し、シャドウギャラクシーの非情なやり方に疑問を抱き始める。


「なぜ、こんなにも優しい人々を傷つけようとするのか…?」


 彼は、自らの信じてきたものに迷いを覚え、組織を離れ、新たな人生を歩むことを決意した。


 星屑列車は、その後も様々な星々を巡った。


 緑豊かな惑星では、環境破壊に苦しむ人々を助け、氷に覆われた衛星では、孤独な研究者を励ました。


 ガスに包まれた巨大な星では、嵐の中で迷子になった子供たちを救出した。


 喜び、悲しみ、そして希望。


 それぞれの星で繰り広げられるドラマは、リクとルリを大きく成長させた。


 そして、二人は、互いへの愛を深めていった。


 長い旅路の末、星屑列車は、ついに新たな星が生まれる星雲「ネビュラ」へと辿り着いた。


 そこは、星屑が集まり、光り輝き、新たな生命を育む、宇宙のゆりかご。


 リクとルリは、その荘厳な光景に言葉を失い、ただただ、その美しさに見惚れていた。


 色とりどりのガスが渦巻き、星屑がキラキラと輝き、まるでオーロラのような光が夜空を彩る。


 しかし、その瞬間、暗黒の影が星雲を覆い尽くした。


 シャドウギャラクシーが、新たな星の誕生を阻止しようと現れたのだ。


 巨大な宇宙戦艦が星雲を包囲し、無数の戦闘機が飛び交う。


 絶望的な状況の中、アステルがシャドウギャラクシーの戦艦から脱出し、小型艇で星屑列車へと向かう。


 彼は、リクたちに加勢することを決意したのだ。


 激しい攻防が繰り広げられる中、アステルの小型艇が放った光線が、シャドウギャラクシーの戦艦に命中する。


 戦艦は大きく揺れ、制御を失い始める。


 その隙を突いて、リクとルリは星屑の力を最大限に解放し、シャドウギャラクシーの戦闘機を次々と撃墜していく。


 ついに、シャドウギャラクシーの戦艦は轟音を立てて爆発し、星雲は再び光を取り戻した。


 そして、新たな星が誕生する。


 輝きは、希望に満ち溢れ、宇宙全体を照らし出した。


 それは、リクとルリの愛の証であり、新たな未来への希望の光だった。


 レオンは、リクとルリに感謝の言葉を述べ、新たな人生を歩み始めた。


 アステルもまた、星屑列車の新たな乗客となり、リクたちと共に旅を続けることを決意した。


 リクとルリは、星屑列車の旅で多くのことを学び、成長した。


 そして、二人は、新たな星が生まれる瞬間に立ち会い、永遠の愛を誓い合った。


星屑列車は、新たな仲間たちと共に、次の目的地へと出発する。それは、まだ見ぬ星々への、新たな冒険の始まりだった。

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