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5.ラップって便利だよね

「ほい!スイッチオン!」


ウキウキしたアーサーの声と共に、更に機械音がし始める。

やっぱりあの物体は機械なのか。


配線に繋がれている俺、特に何も感じない。

本当にスイッチ入ったの?


「どーれどれ、ふむふむ。」

「ほほう。そうかそうか。」


なんの刺激もないので、両親の嬉々とした声に、薄目を開け顔を向けてみる。

アイリスの前に置かれた板状の何かはモニターの役割をしているのか、アイリスの顔に動く光が反射している。

アイリスの後ろからアーサーがモニター(もうモニターでいいでしょ)を覗き込む。

一体何が見えていると言うのか。


「じゃあ、スキルを唱えてみてくれる?」


アイリスに促され、天井に目を移しスキルを唱える。


「はい。『鑑定』」


あれ?何も起きない?出てこない?

昨夜のは幻だった?夢だったり?


「ふんふん。もう一度お願い。」

「『鑑定』」


カチカチ


「ほほう。もう一度お願い。」

「『鑑定』」


カチカチカチ


「んー。もう一度お願い。」

「『鑑定』」


こうして研究熱心な両親により、何時間も何も起きない鑑定を唱えさせられる。


何も起きない?鑑定、出来なくなってる。


まだ自立しなくて良いと喜ぶ自分と、生えたと思った鑑定スキルを失ったのだという喪失感がダブルで押し寄せ、ぐちゃぐちゃな気持ちになる。


「ね、大きな問題は起きなかったでしょ〜。」


イタチ君は笑いながら天井を見上げたルークの視界に飛び込んでくる。

じゃあ、小さい問題ってスキルを失ってるって事実なの?


「ううん。でも魔力の使い方、知らないでしょ〜?知らないものは使えないんだよ〜。」


え?そうなの?でも昨夜は使えたよ?


「それはあの精霊様が原因だね。その場を見てないから断言は出来ないけど〜。あの精霊様なら何が起きてもおかしくないしぃ。ねぇ?」


んー。俺の『鑑定』スキルは生えているが使えない。魔力はそれなりに使い方がある。ってことだろうか。


「うん。スキルの反応が確認されないな。おいルーク!スキル唱えてもスキルは発動しなかったよな?」


モニターから顔を上げこちらを見ているニコニコ顔のアーサー。スキルが確認出来なかったことによる安堵が少し見られる。少しがっかりもしてそうだけど。

研究対象を失った事によるガッカリだろうな…。


確認できていたら、鑑定を寝ずに使わされていたことだろう。

俺、魔力多いらしいし。

魔力切れがなさそうな言い方されたし。


「うん。何度も唱えたけど発動しなかったし、魔力切れみたいなのもないよ。」


あれだけ詠唱させて、発動していたら、そして普通の魔力量だったなら、魔力切れで今頃虫の息だっただろう。


「そりゃ、発動していないを確認していたもの。発動していたらこんな無茶させないわ。」


とモニターから目を離さないアイリスは


「後はこれらの結果を精査したら…面白いわぁ!」


ふっふっふと笑いが止まっていない。めっちゃ喜んでるぞ。

アーサーは、俺のスパコン世界一〜と自作の歌を口ずさんでいる。


ううぅ…

何がどうなってるんだか、説明してほしい。

そして何より、これらの初お目見えの謎物体についても!多分スパコンとモニターなんだろうけどもっ!(もうそう呼ぶ事にしちゃう!)


二人がこうなってる時、質問しても無駄なことも知っている。伊達に五年この二人の息子はやっていない。

落ち着くか、自ら我に帰るまでは放っておくのが一番短時間で済むのだ。


落ち着いてきたルークは喉がめちゃくちゃ乾いていることに気がつく。

この別棟に捕縛連行されてから、いったい何時間経過したんだろう。気のせいかお腹まで空いているような気がしてきた。


グゥゥゥ〜


あぁ、お腹が鳴っちゃった。


「ルーク、お腹が空いたの?」

「お、なんだ。日暮はとっくに迎えてるみたいだ」

「え?!もうこんな時間!急いで夕食作るから!あなた、全身模写してから、ルークのどこにどの配線が繋がっていたのか全部メモして巻きつけておいてね!終わったらダイニングに集合よ!夕食作ってくるわ!」


と慌てて研究部屋からガシャンと音を立てて出ていった。

アイリスが、窓のない研究部屋の扉を開いた時、外からの光は一切感じられなかった。もしや、かなり良い時間なのでは…。


通常の夕食の時間は、室内灯が普及した今もいわゆる夕方と呼ばれる時間なので、まだ日が感じられるのだ。


しかし外の暗さからすると今は良い子はスヤスヤ寝ている時間なのではなかろうか。さすが、両親。研究熱心。お腹だって空くはずである。


「ほいほい。わかってますよー。じゃあルーク、ヘルメットだけ外してくれるか?後は父さんが外すから動かないでおいてくれると助かる。」


アーサーの指示に従い、なかなかに重みのあるヘルメットを外そうとして自分の手をみる。まだ配線が貼られたまま。重くて外せそうになかった。

アーサーの方へ顔を向けると気がついたようでヘルメットを外してくれた。

目を瞑って脱力する。


やはり力が入ってしまっていたらしい。


一つずつ丁寧に取り除かれていく配線。付ける時は無造作っぽかったのに。

取り外しては、その配線にナンバリングされたメモを巻き付け、なにやら紙にも対応した番号をふっているようだ。

じっと見ているルークに気がつき


「どれが何処に対応しているか解らなくなると、もう一回同じことしなくちゃいけなくなるだろう?そしたら、ルークの背中とお腹がくっついちまう」


と、説明して笑う。

背中とお腹がくっつくのもごめん被りたいが、もう一度これをやるのも、出来ればやめてほしい。


微妙な笑顔でアーサーを見ると、笑って頷かれる。

大人しくしておこう。


ヘルメットが無くなり、頭が軽くなったので、首を動かし天井付近を探し見る。イタチ君は既に帰っていたようだ。


俺を癒してくれるために来てくれたように感じた。今度イタチ君が好きなお菓子をご馳走しよう。


「さぁ、終わった。お待たせ、ルーク!父さんもお腹ぺこぺこだ!」


ベッドから抱き起こされ床に降ろされ、手を繋いで研究部屋を出た。


ガシャン


外は既に夜の帳が下りており、星が見えていた。青白く光っている惑星が見えた。地球だろうか。もしあれが地球なら、ここは銀河系の惑星の一つなのかもしれない。この星では夜は寝るものとされてきたので解らない。もし時間が許されるなら、見える宇宙の観察するのも面白いだろう。大きな天体望遠鏡とか、ロマンを感じるなぁ。


家に着くまでの短い間に、地球は今どうなっているのだろう。俺が生きた時代から今は何年経過しているんだろうと考えセンチメンタルな気分になってしまった。


ダイニングに到着すると、ダイニングテーブルには夕食が並べられていた。夕食後のフルーツは、くし形にカットされた甘夏のようなオレンジ色のフルーツだった。

ダイニングテーブルの端に、申し訳なさげに置かれているのは今朝食べ損ねたフルーツだ。赤いイチゴのようなフルーツは少し萎びていた。


「ラップが欲しいな。あると便利だし。フルーツ死なないし。」


「「なにそれ?ラップ?」」


両親は手を止め、爛々とした目でルークの顔を覗き込む。

本日二度目のワクワクという文字が両親の後ろに見えるようだ。


失敗した。心の声が口に出てしまったらしい。


「う、うん。また今度ね。お願い、お腹が空きすぎて死にそう。」


と伝えると、渋々夕食にしてくれるようだ。でもあの顔は絶対諦めていない。

明日はラップの話なのか。いやもしかするとまた食後のフルーツの前に連れて行かれるパターンか?



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