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3-34.知らない方が幸せなこともある。それは相手を気遣ってのことだ

唖然とローゼリアを見つめる。

多分、彼女自身も自分の身に何が起きたのか理解していないのだろう。


「え?ルーク君?どうしかましたか?」


なんて、いつも通りの顔で尋ねてくるのだから。


そんなローゼリアの頭の上でカナリアの精霊は歌を歌う。めっちゃ綺麗な声で。


仮の友達精霊だったミツバチの精霊は、お役御免を喜ぶように、カナリアの精霊の頭の上をぐるりと一周すると、空の彼方へ飛んでいった。


一体全体どう言う事?


カナリアの精霊はこちらをみてピロロロローとひと鳴きすると、


「ローゼリアは私の親友です。先程はローゼリアを見つける事ができて感極まってしまいまして、クィーン様と共に歓喜の唄を歌わせていただきましたの!今頃あのカナリアもクィーン様と一緒に歌っている事でしょう。」


親友…?

ミツバチの友達精霊(仮)っていうのと関係があるのか?

歓喜の唄って、あのペンギンの精霊のペーペーに合わせた歌のことだろうか?

それを今あのタープの下で歌ってる…?あのきな粉の串団子を喜んで食べていた初見のカナリアの精霊も親友と会えたって事?


色々聞きたいが、この場所では人目がつきすぎる!どうかまた後で教えてくれる?


「承知いたしましたわ!」


ローゼリアの頭の上のカナリアの精霊は、ご機嫌にピロロと歌う。落ち着きがないのか、カナリアの特性なのか、ちょこちょこと首を傾げては頭の上で跳ね回る。

可愛いけれど認識したら、あれでは頭の上がこそばゆすぎるだろう。せめて肩の上にしてやって!


「ルーク君?私の頭に何か?もしかしてゴミとか付いてます?そしたら取ってくださいー!恥ずかしいですー!」


「いや、ゴミはついてないよ?」


ちょこまか動き回るカナリアが乗ってますけど。


「ホントですか?もし変な事になっていたら教えてくださいね?ルーク様の方が背が高いんですから、私の見えない頭の上とか見られると恥ずかしいんですからね?」


そういうものだろうか。

恥ずかしがらせるつもりはないが、確かにここに来て少し身長が伸びた。とはいえ、まだまだ小さい方ではあるが、ローゼリアはこの星の住人にしては小柄なので、気になるのかもしれない。


「ゴミがついていたら、さっと取りますよ。紳士の真似事くらいはさせてください。」


と言って笑いを誘ったつもりが、真面目に受け取られた。


「紳士…。そう言えばルーク君って小さな頃から紳士ですよねぇ。可愛かったし、格好良かったです。ただあんなに可愛い見た目で「俺」って言うから違和感だらけでしたけど。」


「え?そう?違和感ありました?」


自分の中の年齢は前世の記憶のニ十代くらいだった。仕事をバリバリしていた頃だ。会社では「自分」呼びだったが、普段友人の前では「俺」呼びだったので、それをそのまま使いっていた。

確かに五歳頃にはすでに「俺」と言っていたが、言われてみたら、確かに違和感がある気もする。


「見た目とのギャップですよね。可愛い見た目で自分を「俺」だなんて言うから、生意気だって思う人も居たようですよ?あそこで働いている人の中にはいませんでしたけど。」


「そうでしたか。」


それ以外なんと言って良いのか解らない。

そんな呼び方ひとつで生意気とか思っちゃうような魂がこの星の子とは思えないからだ。


よそ者になんと思われてもどうでも良い。


侵略目的でやってきた魂は、見つけ次第片付けていけば良いだろう。

少し乱暴かもしれないが、この星の魂を守るためにも、“郷にいれば剛に従え“が出来ない魂は必要ないのだ。しかも、許可なく入り込んだ新略者に慈悲を与えるつもりはない。


それよりも今は、目の前の水晶のペンダントだ。


「ローゼリアさんは気に入ったモノがありましたか?」


「んーっと、これが素敵だなって。でもお値段も素敵すぎて…。ちょっと手が出ません。えへへ。」


ローゼリアが指差したペンダントは雪ちゃんの体の模様と同じ雪の結晶だった。ちらりと頭の上のカナリアの精霊を見ると、少し不機嫌に見えた。

…もしや、嫉妬か?


「これを選んだ理由をお聞きしても?」


嫉妬であれば、買ってあげた後も嫉妬は続く。

当然大変面倒なことになる。それは出来る限り避けたい。


「んー。あの方の模様と同じと言うのもありますが、初めて見た記念でしょうか。後は、色ですね。この淡い水色がめちゃくちゃ気になるんです。あの方の色合いとは違うんですが、なんでしょう。心がこの色を欲していると言いますか…。不思議なんですけどね。えへへ。」


ローゼリアの言葉で頭の上のカナリアの精霊がばっと両翼を広げ、嘴を大きく開けて天を仰ぎピカリと光る。


よ、喜んでる…。


ローゼリアの言ったあの方とはルークの肩の上で見かけた雪豹の精霊の事だが、色合いは水晶のペンダントとは異なる。雪豹の精霊もカナリアの精霊も同じ淡い青系であるが、雪豹の精霊の方がずっと白に近いのだ。ローゼリアが選んだのは、カナリアの精霊と同じだった。


レイギッシュが喜ぶと、歯茎出して喜んで光っちゃうのと同じ感じか。可愛いじゃないの。


ルークはそれなら買って渡しても問題無さそうだなと思えた。カナリアの精霊もめちゃくちゃ嬉しそうだ。


「すみません。これと、これ、それ、三つをいただけますか?これはそのままで、こちらの彼女に渡してください。支払いは俺が。」


「はいよ。」


ランニングシャツの人はプレゼントだと思ったのか、それとも全てに対してそうしているのか、丁寧に個包装し始めた。


「え!?ルーク君に買ってもらうなんて!」


とローゼリアは遠慮するが、お礼も兼ねているので気にせず受け取って欲しいと伝えると、露店の人から受け取って、嬉しそうに早速首から下げていた。

紐の部分も革紐で中に芯が入ったモノだ。


見た感じしっかり作られているので、長持ちしそうだな。


「これ、紐もこだわって作られてますよね?」


と、言えば、革紐は俺が作ってるんだ。と、存在しない職人を殺してしまった人とは別のランニングシャツの人が教えてくれた。


今回この国にやってきたのは、職人二人と商人の三人組で、氷の国では大きめの商会に所属しているそうだ。


この国には、魔牛の硬い皮で物作りをしているという人がいると聞いて、遥々この建国祭を目指して長旅をしてきたのだそうだ。

露店でお客様と会話しつつ、その職人を探すつもりの長旅なのだとか。


「技術を学びたいんだ。魔牛のほとんどが硬くて処分に回されちまう。勿体無いと常々思っていたが、技術が足りなくてな。いつか使えるとみんなが処分する魔牛の皮をこっそり溜め込んでいるんだが、もうでかい倉庫が限界で。」


と、恥ずかしそうに笑っているが、目は真剣そのものだ。


「あぁ、すまん。これはお返しするよ。大切にするんだよ?」


と自作のルチルカラーのダイヤがぶら下がったイヤーカフを返された。

すみません。これは別に遺作でもなんでもないんです…。


「魔牛の硬い皮…。」


ローゼリアは何処かで聞いた事があるような、ないような?と呟きながら首を捻る。

頭の上のカナリアの精霊も同じように首を傾げている。可愛い…。やばい。鳥は何をしても可愛い…。


「何か知ってるなら、小さなことでも良いんだ!教えてもらえねぇだろうか!」


ローゼリアさん!頑張って思い出して!とルークは両掌を握りエールを送る。


「ん?」


ローゼリアの目の前の革職人の方のランニングの人が、ローゼリアの腕に巻かれた安心君の皮バントに気がついた。それはキースが作ったモノだ。


「おい…おいおいおい!!お嬢ちゃん!その皮バントは何処で手に入れたんだ!?それが正しく魔牛の硬い皮で出来た製品じゃないか!!」


「「え。」」


ローゼリアとルークは固まって顔を見合わせる。


「どうかお願いだ!何処で買ったんだ?なんて職人だ?その職人のことを教えてくれ!!!」


ものすごい切実な顔で懇願されるが、どうしたものか。キースからは内緒だとは言われていないし、確か専門のスキル持ちなら時間はかかるが加工できると子供の頃に聞いた覚えがある。

それほどの技術だとは思えないが…。


「ええと…。どうしましょう。ルーク君。」

「うーん。この人達になら紹介しても良さそうな気もするけど…。」


俺レーダーにも引っかからないし、ペンギンの精霊をここまで連れてきてくれたって事は、ひと月半も精霊のイタズラに遭いながらも文句も言わずにこのホーネスト王国までやってきたってことだ。(いや、文句の一つ二つはもしかしたら言ったかもしれないけど。)

ペンギンの精霊は勝手についてきちゃっただけだけしね。


どんな人たちか知りたいからって簡単に人の鑑定をするのは良くないだろう。他国の人間だし。自分の懐に入れるつもりがない人たちだし。


善人のふりをして悪人って例もある。ラグラーのように。いや、ラグラーは善人の皮も被りきれてなかったけども。なんか嫌だなって思ったけれども。


なんて思ったからだろうな。

二人の上に白くて半透明なのと、矢印が表示された。


---

善人。信頼に足る。帰還者。

---


何この鑑定結果。

自由自在すぎるでしょ。有り難いけれど。


「ちょっと待ってもらって良いですか?」


ルークはスクっと立ち上がって人気のないタープとタープの間が広くとられている場所に行くと安心君のイヤーカフでキースに連絡をする。


「どうした?何かあったか?」


「ごめんね。忙しいでしょ?」


「問題ない。ルークからの連絡ならいつでも大歓迎だ。」


キースの声の後ろから、きゃー!!と黄色い悲鳴が聞こえたのは、キースが笑ったからだろうか。変装しているはずだが、元が良すぎるキースのことだ、そう言った信用度は低い。それにザワザワと人のざわめきが聞こえているので、キースの屋台は盛況なのだろう。


「実は、他国の人なんだけど…。」


と、端的に彼らについて説明をする。


「ルークが問題なしと見たなら連れてきたら良い。明日なら時間も取れるしな。」


「じゃあ、明日の…学校終わってからでも良いかな?俺も同席したい。」


「承知した。ルークは今から祭りの参加か?」


「うん。」


「じゃあこっちに来たら声をかけてくれ。」


「はーい!」


ルークは音声通話を終え、ローゼリアの元へ戻る。先程購入した残りの二つは個包装してくれたようで、ローゼリアの手に渡されていた。


「明日のおやつの時間くらいになら。と先方と話がついた「よろしく頼む!何時でも良い!有り難い!ありがとう!」あ、はい。では、えっと…。」


食い気味に返事をしたランニングの革職人の人の腕周りを見るが、安心君は持っていなそうだ。まだ氷の国にまでは普及していないのだろう。

となると、連絡をどうするか。


「失礼ですが、何処に宿泊されてますか?」


「ええと、北地区の“風の花“というとても可愛らしい宿だ。」


へぇ。そんな宿が出来ていたとは知らなかった。北地区には四つの宿屋を作ったが、何処だろうか。


「あ!知ってます!どの部屋にも花が飾り付けられててめちゃくちゃ可愛いうえ、料理にも花を使ってるって評判の宿屋ですよ!」


「「「へぇ。」」」


え?ルークが知らないのは当然だが、泊まっているはずの二人も知りませんでした。という表情だ。


「あぁ、いや、昨日遅くにチェックインしたから夕食はそこで食べていないし、朝もこの場所の確認やらなんやらがあるから、朝食は付けてなかったのさ。」

「内装を見る気力もなかったもんで…。惜しいことをした。」


二人は少しがっかりしたようだが、まだ何日か泊まるのであれば堪能出来るはずだ。


明日ルークが学校帰りに、そこまで迎えに行くと伝えたが、それでは申し訳ないからと、学校の前で待ち合わせとなった。

キースには後で伝えれば良い。


ルーク達の屋台の方から、トレーにかき氷を乗せたランニングシャツの人が落とさないように慎重に歩いているのが見え、ルークとローゼリアは手を振ってその場を離れた。


「すごい偶然でしたねぇ。」


「私たちが倒れたおかげとも言えますね。」


ローゼリアは冗談っぽく笑って言うと、今度はあっちです!とルークの手を取り足早に歩く。


今の露店で大分時間をロスしてしまったのだ。


二人は早歩きで目的の露店へと向かうのだった。




---


ペーペーぺー。

ピロロロロー!


ペンギンの精霊に合わせて串団子を喜んで食べたカナリアの精霊が歌う。

歓喜の唄だが、ここにいるどの人間たちにも聞こえやしない。


「カナリアの親友がロロガンだったなんて。歓喜の唄がロロガンに聞こえないなんて残念ね。」


忙しい手を休めて雪豹の精霊はカナリアに伝える。

ロロガンのカナリアの精霊はローゼリアのカナリアとは色合いが違う。尻羽の先が淡い黄緑色だ。


「我ら鳥型の精霊が居ない間に人間達も精霊達も随分とその有り様を変えたのだな。」


カナリアの精霊はあたりを見渡す。

精霊の存在を感じない人間に精霊たちがへばりついているのが見える。

精霊たちが膝に乗っていたり、肩や頭に乗っていたり、腕や背中にへばりついていたりする。


カナリアの精霊がまだ地上にいた時代には見られなかった光景だ。


「そうね。認識されないから魔力のやり取りはくっついてないと出来ないし、認識されない寂しさから離れたくないって気持ちが溢れちゃうのよね。」


「そうか。だから皆あのようにくっついて離れたがらないのか。」


雪豹の精霊の横でフルーツの凍結を手伝うペンギンの精霊は合点が入ったという表情だ。


「しかし、星の意向としてはまだしばらくこの状況を変更するつもりはないようだ。」


カナリアの精霊はため息混じりに言う。


「さもありなん。」


ペンギンの精霊は頷く。


「そうなのね…。地上に残った精霊は星の意向が聞き取れないから、知らなかったわ。」


「地上に残ることを選択したことは、別に悪いことではない。人間の魂に寄り添ったまでのこと。気にするでない。」


カナリアの精霊は雪豹の精霊に優しく伝える。


星の意向を聞き取れるのは神獣と一緒に故郷に残った鳥型の精霊と神獣、ルーク、インナー達だ。

神獣とルークは直接聞き取れるが、他の者はインナーか神獣経由で知らせが入るようになったという。


「ん?という事は神獣様は帰ってくるの?」


「「んん?」」


ペンギンの精霊とカナリアの精霊はしらばっくれる。


「だって、神獣様経由で知らせが入るってことは、目覚めてらっしゃるってことよね?」


「「え?」」


「え?違うの?あなた達鳥型精霊は一緒に故郷に居たのだから何か知ってるんでしょ?」


雪豹の精霊に詰め寄られ、カナリアの精霊は首を伸ばしすぎて顔の羽と体の羽との間に隙間が出来た。どうやら誤魔化すのが下手なようだ。

ペンギンの精霊はフルーツの凍結を行う手を緩めずに言う。


「インナー経由から知らせが入る。フェニックス様の話はしてはならぬといわれておる。すまんな。」


嘘は言っていない。

精霊は嘘はつけないので、これでうまいこと誤魔化せたはずだ。


「……。」


雪豹の精霊にじっとりと見つめられるが、フェニックスが既に地上に帰ってきている事は絶対に内緒の話。言うわけにはいかないのだ。


「はぁ。そう言うことにしておくわ。鳥型の精霊にも何か事情もあるのだろうし。」


雪豹の精霊は諦めたように小さく笑う。


しかし、ここでホッとしてはそうだと言っているようなもの。ペンギンの精霊は知らん顔のまま作業を続け、カナリアの精霊はロロガンの頭の上へ移動したのだった。



---


ルークとローゼリアは目の前の音楽隊を体育座りで眺めていた。


放送盤から流れてきていたように、今年の音楽隊はフルート、ハープ、クラリネット、オーボエの四種類の楽器で構成されている。

音楽隊は一人でそれぞれ歩きながら楽器を演奏出来るのだろうし、昨年まではそうしていたらしい。ハープ奏者だけは大型だと持ち運びが出来ないため、小型のハープだったそうで、曲の幅があまりなかったそうだ。


しかし今年は違う。


屋根のついていないパレード用の真っ白な偽装馬車にはあらゆる色合いのバーベナで美しく装飾されている。

奏者達もギリシャ神話に出てくる神々が着ているような、布地をたっぷり使った衣装を着用し、とても幻想的だった。

使われている楽器も管楽器とハープで魅惑的で、楽しみにしていたルークの心は鷲掴みだ。


それだけであれば。


美しい偽装馬車は比較的小さなもので、先程王族が乗っていた四頭引きの物とは全く異なる。


二人乗れたら御の字という小型なもの。それが四台一列に繋がっていた。

それぞれに、フルート二人、クラリネット二人、オーボエ二人、巨大なハープ奏者が一人ずつ乗車して、一列につながっているのだ。まるで汽車ポッポのように。


しかもその汽車ポッポを引いているのは、うちの馬。歌う馬、ユニコーン一頭だった。

耳のピアスが赤く輝いている。間違いない。


大変力持ちだが、気になるのはそこではない。


何故か御者がいない。

うちの馬たちは大変賢く、自動運転が可能だからだろうか。


しかし、そうなればユニコーンの思うがままになってしまうではないか。


ユニコーンはルークを一瞬で見つけ出し、本来のルートとは異なる道のりで動出したのだ。

音楽隊の皆さんは大変困惑している。


「え?そっちじゃないよ?」「戻って!いや連なってるし無理か!」「一体何処へ!?」「どうなっちゃうの!?」


と、奏者達の表情が物語る。


そんな事はお構いなしで、ユニコーンはルークの近くに寄って来たり、ウィンクを繰り返すなどをして、ルークに猛烈アピールをし続ける。


「見てみて!凄いでしょ?」


と、己も装飾品で飾り立てられた姿を首をピンと伸ばして自慢げに見せつつ、ヒンヒンと曲に合わせて歌う。


可愛いのだが、楽器の音と馬の鳴き声が抜群に合わないのだ。


ずっと不調和音を繰り返している。


ルークの周囲にいる子達は、「ウィンクされちゃった!」「めっちゃ可愛い!」「歌ってるわぁ!」「ウィンクは私にしてくれたのよ!」と、それはもう大盛り上がり。


曲を台無しにしていることよりも、馬が歌っている事の方が注目を浴びるというこの現実。

良いのか?それで。


ルークがこの場から動けば絶対に着いてきてしまうだろう。ユニコーンは。

それでは、今自分にされたと喜ぶ民衆は、自分へのウィンクのではないと気づいてしまうだろう。

更に原因が自分だと晒すようなものだ。


ルークは音楽隊が居なくなるまで動く事はできず、じっとしているしかなかった。


せっかくの音楽を台無しにしてすみません。音楽隊の人たちごめんなさい。と心で謝罪しつつ、放送盤にユニコーンの声が乗っていない事に心底ホッとする。


隣で見ているローゼリアは、その他の民衆と同じくめちゃくちゃ喜んでいた。


多分ユニコーンだと気がついていないのだ。

精霊のいる里の子だと知らないのだ。(ピアスの話はしてない)


知らない方が幸せだよな。

と、ルークは黙っていることにした。

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