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2-31. 居なくなったところで事故かどうかも分かりはしませんから!ちゃんと誤魔化せますよ!

「これくらいにしておきましょうか。」

「そうですね。例の部屋にもご案内したいですし。」

「もう少し教えたかったのですが、仕方がありません。」

「ほんのさわりの部分だけでしたが、とりあえずご納得されたようですし。」


かなり詰め込まれた感があるが、インナーたちからすると、ほんのちょっぴりの量らしい。


あれでぇ!?

総量が怖い!!


と驚愕だが、一生懸命教えてくれたのだから、身についていてほしいところなのだが…


「忘れちゃったらごめんなさい。」


忘れられる。多分簡単に…。

流石に、一度に詰め込みすぎだと思う。

メモも取れないし、質問もほとんど出来ないし。

疑問に思った事も次の話で流れていっちゃうし。


魂レベルとか、難しかった。

どうしたらレベルが下がるとか上がるとか、その曖昧な情報がどうしても掴みきれなかった。


なので、もう先に謝っておく。

ごめんなさい。


「とりあえず、比較対象が自分であれば良いでしょう。」

「本来は大きな目標となる自分、“大いなる自分“と呼びますが、そうですねぇ…ルーク様の前世で言う“ハイヤーセルフ”や“高次元の自分“などを指標とし、その相対値を考え、絶対値に至る。が正しいですね。」

「ルーク様が転生なさってから徐々に比較するのが他人という思考の方が続々と入ってきまして。」

「少ない数ではありますが、一定数この星の魂に徐々に刷り込まれてしまって、肉体を脱いでここに来る魂のクレンジングに時間がかかるようになったんですよ。」

「再教育ですよ。」

「本当に黒霧には困ったものです。」


自分と他人を比較…か。

その比較は辛いだろうな。何しろ終わりがないのだ。

羨ましく思う気持ちが育ち、さらに他人に認められたい気持ちが育ったりしたら最悪だ。


他人に自分の価値を決めてくれ。と言っているのと同意であり、とても危険な思考だ。


インナーたちの言う“大いなる自分“と今の自分を比較して、何が足りないか、何をしたら良いのかを考え生きていくとしても、終わりがないじゃないか。と思うかもしれないがそうではない。


“大いなる自分“はいつか必ずたどり着ける。

その下地をしっかり持っているからこその目標という事なのだ。


それなら努力のし甲斐がある。

他人との比較はただの無いものねだり。

どんなに頑張ってもそこには辿り着けないのだ。


それが個性なのだが、そこに気が付いても納得できない魂がよその星から入り込んできてしまい、その波動と思考でこの星の魂に影響を及ぼしてしまっているという。

確かに困ったものだ。


「ゴールも通過点も、自分だけのものなのに他人と比較して落ち込んでしまうのは時間の無駄なのよ。」


いつのまにかやってきたルチルがルークの後ろから声をかけた。


「うん。」


「魂一人一人にやるべきことがあって、それぞれがそれぞれを支え合って。誰も欠けたらダメなように出来てるのに無いものねだり。虚栄心なんて要らないのよ。どの魂も必要で尊いのにね。」


ルチルはため息をつきながら悲しげに言う。あっちで何かあったのだろうか。


インナーたちはルチルがやってきたので、ルークの座っている椅子を横長に変形させ、その隣に座るようにぴこぴこ三角を動かして促した。


「あぁ、ごめんなさいね。インナーたちの働きで黒霧はここまで入り込んでなかったのだけど、ジンについての取りまとめを聞いてね。少しだけ落ち込んだだけよ。」


ルチルは座りながらため息をつく。


「ジンかぁ。その取りまとめは俺が見たらやばいやつ?」


ルークは何か役に立てることがあればと思って聞いたが、やることがあるならルチルから言われるだろう。言われないと言うことは必要がないのだろう。


「ごめん。いいや。ちゃんと待つよ。」


「ありがとうね。どうしたらいいのか世界樹の精霊と相談して決めることになるから、それまでちょっと待ってて。」


「了解。え?世界樹の精霊!?」


またしても初耳だ!


「そりゃ、木の精霊だって居るわよ。ある程度の巨木になって、精霊が生まれたらそのまま大きくなるし、生まれなかったら寿命で枯れる。ルークの前世の星でもそうよ?ケヤキとかヒノキ、イチョウの巨木なんてわかりやすいんじゃない?あとはそうね、御神木?って呼ばれる木には大抵居るわね。」


「俺の記憶では、万年ケヤキ、いや、これは俺の記憶か?二宮神社の御神木より、周囲にあった巨木の方がエネルギーがあると言われた気がする…。まぁ確かにあの樹には精霊が居そうだなって思って見ていかも。」


前世の記憶だからあまり鮮明に思い出せないが、万年ケヤキは用水路を跨ぐように根を伸ばしていて、そっと触ったような薄い映像が差し込まれた。


これは誰の記憶?


「そのケヤキたちにもちゃんと居たわよ?その子から精霊ネットワークで情報上がってるもの。確認してみなさいな。」


「はぁぁ!?精霊ネットワークってこの星だけじゃないの!?」


ルークは慌てて精霊ネットワークを確認する。


「木に宿る精霊は、どの星の子か見分けて情報をその星に届けてくれるのよ。だからルークの触った木の精霊からも情報がもらえるの。」


「ほ、本当だ。万年ケヤキ、命主社のムクノキ、伯耆の大シイ、法隆寺のイチョウ、二宮神社のイチョウの精霊からの情報が!何故か恥ずかしいけどめっちゃ嬉しい!」


他にもいろんな場所の巨木からの情報が得られた。前世で記憶がない巨木もあるが、前世の前世で触れ合ったのだろうか。


「うーん。よく見ると、この御神木は家族四人でやってきたって書いてあるな。ん?こっちも、こっちもだ。俺、結婚したことあったんだ。なんかイメージが全くないんだけどなぁ。」


ルークが自分の結婚歴に疑問を持つのでルチルも精霊ネットワークにアクセスする。


「どれ?どの御神木?」


「これこれ。この神社の御神木、こっちの御神木も。」


「かなりの量ね。ほら、ここでこうやってソートして、こっちにアクセスすると、この結果が出るでしょ?」


ルチルは前にルークから教えてもらったやり方をルークに教える。そんなことは覚えていないルークは、へぇ。こんなやり方があるのか。と嬉しそうだ。


「ルーク。この四人家族の時代、楽しかったはずよ。この星の子達の集まりだもの。」


ルチルは、ルークの奥さんの魂も二人の子供の魂もこの星の魂だったという。


「え?本当?じゃあなんでジェイクじいちゃんとの前世しか思い出せないのかなぁ。」


「それはジェイクと出会ったからでしょうけど、幸せだけじゃなかったからよ。幸せだと心底思って人生を終えたら、その記憶はほとんど思い出せないわ。人は幸せになるために生まれるから。」


ルチルが言ったのは、幸せだったとその生を終える事が出来れば、それで一つの生が完成する。納得の大往生。すると後悔がないと判断されるので、その人生をわざわざ思い出す必要も繰り返す必要も無い。

つまり思い出せる人生、前世は、幸せではなかった人生ということでやり直す必要があるため、次の人生で同じ相手を切望するし、子供の魂も強く引き寄せてしまうのだそうだ。

これは魂の理で、肉体を持つ世界では必ずこの理が作用するという。


『幸せだったなら、その人生も思い出したいな。』と呟くルークは、その四人の家族だった時の記憶は思い出さないかもしれない。それが幸せだった証拠だ。

だから今のルチルの姿を見ても何も思い出せないのだ。今のルチルはこの星のファースト女子の最後の姿。

艶やかな薄い金色の髪、金色のまつ毛に縁取られた髪より薄い金色の瞳。ルチルは一番思い出すことができる女の子の姿を借りたのだ。


「その人生を思い出せなくても、会えたら分かるわ。早く帰ってきてくれると良いわね。」


ルチルはルークに届かない声で呟いた。


ルークは頭の中の精霊ネットワークを眺めた。

そして、ある一点に気がついたのでルチルに尋ねる。


「ねぇ、ルチル。知っていたらで良いんだけど、この四人家族のうち、俺の奥さんだった人の記載部分だけ色が違うのはなんで?」


「あら。気がついちゃったのね。」


ルチルは一瞬だけ悲しげな表情をしたが、それもすぐに隠してしまった。


「その子だけまだ帰還してないの。」


「そうなの?」


「ええ。本来ルークの次に帰還する予定だったんだけどね。前世のルークの子供二人を先に帰還させたのね…。」


「まだあの星にいるのか。やるべき事が残ってるのかな。」


ルークはなんとなく気になったが、ふと今朝の騒ぎを思い出した。


「ねぇ、帰還したセカンドの二人って、もしかして、この四人家族の時代の俺の子供ってことになったりして?」


「そうね。」


「まじかー。」


ルークは軽く目を瞑って天を仰いだ。

少しだけそうした後、頭を戻してルチルを見る。


「さっきさ、ルチルと離れている時にインナーさんに教えられたんだけど、ファースト、セカンド、サードまではどの星の魂であっても、エネルギー量と魂レベルの差が大きすぎるって理由で、羨望や嫉妬、憎しみの対象になるから、育ちにくかったり、育てられなかったりするって話をきいたんだよ。」


「ええ。」


ルチルは頷く。


「それ以外の魂がうっかり親になったりすると、親が耐えきれずに失踪したり自害したりするって。そんなわけで、サードまでの子供を産む場合は、サードまでの両親の元、家族として集める事が多いってほんとなの?」


「良い事を教えてもらったじゃない。だから今もそうでしょ?」


ルチルはだからどうしたの?と言う表情だが、今世の話ではない。いや、今世の話も気になるが、今気になり確かめたい二つの事は今世の話ではない。


まず一つめは…


「だからこの星出身で残ってた四人を揃えて家族になったって事?」


インナーたちの話からすると、そうとしか考えられない。揃えた方が子育てがしやすいと言う事なのだ。

そうであるなら、ちょくちょくそう言った家族構成になる。同じ星から帰還したジェイクやデイジーとも、あの星でいつも一緒だった可能性があるじゃないか。


「そうであってそうでないわね。」


「と言うと?」


「あえて揃えたのよ。だから半分正解。半分不正解。」


ルチルが言うには…


前世のその四人を家族にしたのは、セカンドの女の子とルークのためだったらしい。


セカンドの女の子の方はあの星に転生してから、一度もこの星出身の魂と出会えずにいたそうだ。

八十億分の八名。確率を考えたら当然のように感じるが、母数は星×六(ファーストからサードの六名)なのだから、億年いたなら出会えるはず。

なのに誰とも出会えず、ずっと一人で成せばならない事をひたすらにひたむきに行い耐えていたらしい。つまり、もう、寂しさがピークだったそうだ。

これ以上その子を一人で誕生させたら魂が壊れてしまうと判断され、ご褒美の人生を与えられたそうだ。

彼女が望んだのはファースト二人が結婚したら子供として生まれ、二人を守り支えて生きる事だったそうだ。


ルークの方は、魂の片割れとも言えるファーストの女子と数回の人生で出会う事が出来ず、殺され続けたため、魂が萎縮し始めたそうだ。


セカンドの女子と男子がどれほど頑張ったかがわかるのではなかろうか。ファーストが数回魂の片割れと出会えずに死にかけたが、この二人は億年出会う事ができなかったのだから。


その数回の人生、ルークは生まれてこなかったファースト女子を探し求めた。その前の人生でその子が殺されてしまった温かい海にその子を探しに行っていた。前世の記憶はないにも関わらず。

意味も分からず温かい海に潜るだけのスキューバダイビングを続けた当時のルーク。そこに行けば何かを見つけられると思っていたようだ。


魂の萎縮の始まっていたルークだけではファースト女子を探す事が叶わない。二人のご褒美の人生のため、セカンド男子が協力を申し出たそうだ。


「ボクがパパの後ろでママを探すよ!」


自分もファースト二人の子供として生まれることがこの時点で確定したわけだ。ちゃっかりしている。

そんなわけで肉体を持つ結婚適齢期に差し掛かったルークの後ろに、魂の状態でくっついたセカンド男子。時々おかしな女子に捕まりかけるルークをセカンド男子は後ろでサポートしつつ、十年ほど頑張ってついにファースト女子を探し出したのだ。


そうしてルークは魂の片割れと出会い結婚し、二人の子宝(セカンドの二人)を生み、四人で仲良く幸せに暮らした。

二人のご褒美人生だったが、家族になった他の二人にとってもご褒美になった。


よって正解は“ご褒美の人生“だ。

四人が揃う事で、四人の魂が潤ったしその幸せの波動でその星の波動が整う方向へ動き出したのだから。


「ご褒美の人生か。みんなが幸せか。あの星で…。」


そして気になるもう一つは…


「ジェイクじいちゃんがじいちゃんだった時の人生ってさ、生まれる前に亡くなった父、小学生の時に亡くなった母親…。それって、俺のエネルギーが強すぎたのが原因なの?」


そうだとしたら辛すぎる。折角自分の親になってくれた魂たちに申し訳ない。


少し目を潤ませて尋ねるルークにルチルは言葉に詰まる。原因がなんであれ、幼少期に両親を失うと言うのはどれだけ辛く悲しかっただろうか。


「その件ですが。」


突然インナーの一人が口を挟んだ。


「うん?」


「その件ですが、その時の父親はたまたまの事故です。妊娠を大層喜んだとの記載がありました。なので、ルーク様が原因ではありません。」

「母親も因果応報の病気ですね。」

「前世でその病気にかかった周囲の者に対して理解できずに傷つけたため、自身に返ってきたのです。どれだけ相手を傷つけ、辛い思いをさせたのかを知るための人生だったのです。ルーク様が原因ではありません。」


嘘がつけない剥き出しの魂の姿のインナーの言葉は真実味しかなかった。


「そっか。ありがとう。インナーさん。でも因果応報って怖いね。」


自業自得とはいえ、知るために子供を置いて死んでしまうなんて、どれほど辛く、後悔しただろう。


「怖いですか?」

「自分で選んだ人生設計通りだったようですし、あの者は大満足の人生だったようですよ?」


「は?そうなの?」


インナーたちは形を上下に潰したような姿に変えた。頷いているらしい。


「肉体を持つ時…生まれる時ね、自分の人生設計を“神書“として書き出したものをうちではインナーに提出するのよ。ルークの前世の星では相手は神様と呼ばれる存在になるのだけど。」


ルチルが説明してくれる。


「人生設計を書いたのが神書?自分でこんな人生にします。って選択できるって事?」


インナーたちは再び横に伸びた。


「魂それぞれが個別にいろんな選択をするの。この王国、これくらいの寿命、この死に方、この両親、前回自分が良い親じゃなかったから片親にします。とかも選べるわ。却下されることもあるけどね。」


「魂の成長に合わないと判断されたら却下ですね。」


インナーがルチルの言葉に追従する。


「容姿もまぁ、選べるには選べるけど、魂が持つエネルギーで肉体の遺伝子のオンオフが決まっちゃうから、肌、髪、瞳の色、太め、細め、くらいなものね。だから顔の造りはあまり変わらないわね。人種による違いはご愛嬌。お陰で顔を見ただけで、前世出会ったかどうか知り合いかどうかも一目見て解るように出来ているのよ。」


「それだと前世で整形してる人は出会いたい人に会えても分からないって事にならない?」


ルークの言葉にルチルは目を細め、インナーたちは三角のような形に変化した。


なんだその形は。初めて見たぞ?


「整形?メスを使って顔を変えるってやつね?あれはどの星でも許されてないわ。他人を羨んで自分は劣ると考えるから行うのでしょう?自分の魂を貶めているのよ?」


ルチルは怒っているようだ。


「見た目を重要視する星が存在しまして。」

「見た目以外でも優劣を付けたがる星なのです。」

「その星出身の魂が、ルーク様のいたかの星に大勢移り住みましてね。その思考を持ち込んだ事で、広がった文化なのですよ。」

「かの星の四分の一の魂がその星出身の魂でしたな。」

「顔の造りは合図なだけでしたのに。」


は?八十億のうちの四分の一がその星からの転生者ってこと!?もう星の乗っ取りじゃん!?


ルークは驚愕したが、その話を始めたら、また話が戻ってこなくなってしまう。一旦忘れて話を続けることにした。インナーたちもルークの思いを受け取って、その話をスルーしたが、一部のインナーたちは、四分の一発言をしたインナーを取り囲んで別の部屋へと消えていった。


「顔が合図?」


「自分はここにいるよ。ですね。」

「先程のお話にあったセカンド男子がファースト女子を見つけたのも、その合図があったからです。」

「仮にファースト女子がその整形とやらをして顔を変えていたら、セカンド男子は見つける事が叶わなかったでしょう。」


「魂の輝きとかで判断しているわけでは無いんだね。」


「相手は肉体持ちですからね。」

「ルーク様がジェイク様を前世のお祖父様だと理解出来たのも、合図があったからでしょう?」


そうだったかな?とルークは思いを馳せる。

ジェイクを前世の祖父と重ねたのは、性格による行動もだが…


「うん。笑顔だ。おんなじ笑顔だったからだ…。」


「その顔が違えば?」

「ジェイク様だと理解できたと思いますか?」


インナーたちの言葉をルークは再び考える。

ジェイクのあの顔が、仮にボビーやサイモンだったとしたら?同じように顔の筋肉を動かして笑ったとしたら?同一人物だと分かっただろうか。

ボビーやサイモンが前世の父親だったと言われたとしたら?そう思えるか。


「わかんなかったと思う。」


うん。あの二人は全然思い出せないし、繋がりがあったとは思えない。それは多分、この星で生きていた一億年前の時代の記憶たちをなぞったとしても、近くにいたことがあると言われても、嘘だと思えるほどに。


ルチルはニコリと笑う。


「ボビーとサイモンね。初めましての魂よ。あの子達はルークが転生して行ってから生まれた魂だからね。」


ルチルのこの言葉に、あぁ、やっぱりな。と思えた。


「そっか。顔の造りは合図なのか。」


「顔の好き嫌いも合図なのよ。」


ルチルは言う。

前世で嫌な思いさせられた顔は嫌いなのだそうだ。魂が記憶しているらしい。危機管理も出来るようだ。


「いろんな顔があるのは、その星が時代によって好みを変えるからなのよ。どんな顔もその時代、その時代によって、好まれたり嫌われたりして、順番に回るように出来ているの。」


「だから合図を変えたらダメなのです。」

「時代にそぐわなくても、その合図を探している魂は必ずいますから。」

「番のように結婚できる相手は神書にて数人自分で選んでいます。」

「一人の方もいますね。絶対にその人以外ありえないからと。」

「その相手が全員整形して顔を変えていたら?出会う事が出来ずに魂は悲しみに包まれます。」

「続けば萎縮して生まれてくる事が出来なくなります。」

「最悪の場合、魂が消滅してしまうのです。」


「そんな大事なの!?」


「大事よ。魂の理の一つに、魂は二人で一つというのがあるの。必ずペアになるのよ。運命の相手というやつね。」


運命の相手か。

それが俺の場合は今他の星にいるのか。


「今のところ寂しく感じることはないけど、いつか悲しくなるのかなぁ。」


まだ子供だからかな。と安易に思うルークだが、前世においてその相手と出会えずに消滅しかけ、ご褒美の人生を貰うに至ったのだ。寂しいとか辛いとかの比ではないのだが、肉体を持って生まれてきたのだ、覚えている訳がない。


「今世、ルーク様の神書にどのように書かれたのかにもよりますね。」

「お相手の欄に誰かを書いたのか、誰でも良いと書いたのか。」

「必要ないと書いた場合もございます。」

「出会えるまで待つと書いたかもしれません。」


書いた内容は、自分の魂と担当したインナー、そして大いなる自分しか知らないらしい。


「俺、覚えてないけど?」


「今のルーク様は肉体をお持ちですからね。」

「剥き出しの状態になれば閲覧可能ですよ?」

「肉体をお脱ぎになられます?」


またっ!!

肉体脱いだら死んじゃうでしょ!?

インナーさんたち、どうにかして俺を一度殺そうとしてくるーーー!!


ふるふると小刻みに震えるインナーたちは、笑っているようだ。揶揄われたらしい。


「肉体は脱ぎません!いつか死んだらその時に!」


とはいえ、不老不死なのだが。

そんなことをルークが考えていると


「あら。誰が口を滑らせたのかしら?」


不穏な雰囲気になってしまった。

ふふふと口から漏れ始めたルチルさん?いったん落ち着きましょうか。


「雪豹か牡鹿の精霊あたりかしら。ま、仕方ないわ。どうせいつかバレるのだしね。死なないのだから。」


どういうことかな?


「ルーク良い?よく聞いてね。この星の意向よ?」


真剣な眼差しを向けるルチルに、ルークは背筋を正す。きちんと聞かなきゃダメなやつだ。


「はい。」


ルチルも姿勢を正してルーク体を向け告げた。


「この星は、この星生まれの帰還者は全て不老不死としました。」


インナーたちも続く。


「不老不死はルーク様の思うものとは少し異なります。」

「事故で亡くなることはあります。肉体が死ねば死んでしまいます。」

「殺されたら死んでしまいます。」

「病気にはなりませんので、病気で死ぬことはありません。」


病気にならない。つまり皮膚がんには侵されないということだ。

病気で死なないけれど殺されたら死ぬ。

つまりは刺されたり、毒でも死ぬし、事故に遭って肉体が死ねば当然ジ・エンド。

ただし、死ににくいらしい。出血は人より早く止まるし、怪我の治りもかなり早いそうで、そう言った意味で死ににくいらしい。


「肉体は全盛期の状態を保っていくから、老化はないわ。こういう意味の不老不死ね。」


そうか。肉体が死ぬことはあるが、死ににくく、老けしまうことは無い。不老不死と聞くと、殺されても死なないイメージだった。


「なんで、そうしたのかは聞いても良いの?」


「ええ。入り込んだ魂なら老化するし死ぬでしょ?炙り出し程度ね。転生したことのないうちの子たちも死んでしまうから。死んだら魂はインナーの元へ帰ってくる。で、話し合い。そうやって繰り返していくわ。最後は自分たちの星の子だけにして、昔のような大地に戻すのよ。」


「昔の大地…。引き裂いた大地を地上に戻すって事?」


俺が転生してこの星から離れてから、ほぼ海抜の高さで大地を削り取り、空に持ち上げたのはルチルだったらしい。意向は星が示したのかもしれないが、実行したのはルチルだ。

空に引き剥がした大地は、大昔のまま保存のスキルをかけて保たれているそうで、いつでも戻せる準備があるのだとか。


ルークの言葉にルチルもインナーも頷く。


「帰れる魂はどんどんその子たちの生まれた星に返してるし、帰れない魂は、元の星との繋がりをしっかり切って、強力なクレンジングを繰り返して教育しているわ。かなり綺麗になった魂なら、他の星も受け入れてくれるし、元の星に帰還を許されることもあったしね。」


綺麗になったから受け入れるとは、その元の星もどういう考えなのか。自分の星で綺麗に出来ないの?こっちに丸投げしているのとなんら変わらないじゃないか。と、ルークは少し腹を立てるが、インナーたちは気性を荒立てることはない。


「精霊王たちの“精霊の鍛錬所送り“と一緒に行っております。」

「ルーク様のいる王国に限ってですが、入ってきた魂が一番多かった頃より半数以下となりました。」

「ルチル様が帰ってきてくださったので、今後はかなりスピードアップができると思います!」

「ルーク様の鑑定眼で見つけた場合もお知らせください!」

「サクッとこちらに連れて参りますので!」


「分かった!って…そうすると、地上では死人や行方不明者が出るってことだけども。それって大丈夫?」


そろそろ学校に行くので王都へ向かう事になる。

人通りが格段に増え、すれ違う人間が多くなる。

学校にも通うし、俺の鑑定眼は自由に使えるわけではなく、勝手に鑑定しちゃうのだ。すごい沢山見つけちゃいそう…。


「大丈夫です!この王国に残っているよその星の魂は他国に比べるとそれほど多くはありません。」

「他の王国からやってきた魂なら、居なくなったところで事故かどうかも分かりはしませんから!」

「ちゃんと誤魔化せますよ!」


「それ、ダメなやつじゃーん!」


ルークは叫ぶが星の意向として示されたのだ。なんら問題は無い。

星からしたら勝手に入ってきた異物である。排除して何が悪いのか。なのである。


星に住むとは、そういうことなのだ。

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