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145.皮の茶葉までお土産コーナーの商品に?

ルークがマンゴーの皮で作った茶葉をビンに詰め、広げた紙を畳んでいる間に、大人たちは朝ごはんの準備をしてくれた。


広げていた紙を折り畳み、ダイニングに移動する。紙はカゴに入れておいた。


「「「「いただきます!」」」」


今日の朝ごはんは、スープに数種類の豆ときゅうりのサラダだ。ドレッシングは二種類。


さっぱりしたハーブドレッシングを選んだ。

豆を咀嚼しながらなんとなく思い出した。


「大豆ミートって肉をほとんど食べないこの世界なら、有効なんじゃない?このサラダの豆、大豆だよね?」


「「「大豆ミート?」」」


「あ、またやっちゃった?でもまぁ良いか。大豆ミートっていうのは、大豆で作った擬似肉のことで、まず大豆を豆乳にしてニガリで豆腐を作るんだ。豆腐…を…」


ん?豆腐?何が忘れているような…?

???


「いや、なんだ?大豆から作る方法もあったはず。うん。えーっと、大豆の水煮とココナッツフラワーを五対一の割合でひとつまみの塩と一緒にミキサーにかけてひとまとめにして、冷蔵庫でしばらく休ませてから、更にさっきのココナッツフラワーの半量とミキサーに入れてゆっくり攪拌。それを多めの油で炒めると出来上がり…。」


「あら、簡単なのね。」


「それはうまいのか?」


「その出来上がった大豆ミートを料理に使うんだ。どんな味付けでも美味しいはず。まずは濃い味付けのもので試した方が良いかも。」


「お昼に試してみる?」


「なら、ご飯を食べたあとに試作しましょうか?」


「今日は何か予定があったかな?」


三人が会話を続けているようだけど、あれあれー?なんだろう。豆腐で何か思い出せそうなのに、思い出せない。引っかかって出てこない。


「んー???」


大人たちは食事も後半になると、今朝の出来事を話し始めたようだ。


「そんなわけで、ボビーを含めあっちの従業員はこの敷地内に侵入禁止としたが、異議はあるか?」


「仕方ないわね。」


「使いたいと申し出があった時、私たちは軽く止めたのよ。所有権はルークちゃんだから。言い方が弱かったのかしらね。眠くて判断力が落ちていた可能性もあるけど…。」


概ね理解されたようだ。

だが、眠くて判断力が落ちたとは…?


ボビーさん、一体何時頃までここに居たんだろう…。

客間を借りて休めばよかったのに。

マー君のことが心配だったのかもしれないけど。


慌てて帰ったボビーを思い出す。

変だったよね。ボビーさん。

ねぇ、ユキちゃん。さっき聞いた時答えてもらえなかったけど、なんかあったのか知ってる?


キッチン横でのんびり寝ていた雪豹の精霊に心で語りかける。


「はぁ。ねぇ、ルーク。あんな調子のボビーにマーモットの精霊を任せておけると思う?だから、契約を白紙にしたのよ。」


え…契約白紙って、そんなことできるんだ…。

あの鑑定結果は、そう言うことか。

契約前というか、本来のボビーさん本人の能力に戻ったって感じなのか…。


「ボビーが、しっかり反省して、マーモットの精霊が復活すれば、また変わるでしょ。」


そっか。

解った。ユキちゃんありがとう。教えてくれて。


まぁ、仕方ない、のか?

精霊と人間の契約の在り方を俺はきちんと理解しているわけではない。

精霊にとって状況が悪いと判断されたら、契約白紙にされることもあると言うことなんだね…。


初めて知った精霊との契約白紙という状況に、ルークはボビーを慮る。


やって見えたマー君が、見えなくなるって、ボビーさん落ち込むだろうなあ…。

しかも、ここに立ち入り禁止ではなく、侵入禁止。

この星に置いてこの言葉は、犯罪組織相手などに使うようで。

つまり、君たちの中に、犯罪者がいるんだぞ。

という圧力的な言葉。しかも、それを犯せば即拘束となる。


ルークとデイジーの身の安全を考えれば、それが一番なのだ。

基本平和なこの世界では、宮廷で働いてきた者でも、どこの出身かは自己申告。

嘘つき放題なのだ。ラグラーのように。


ビルの『顕在化』のような真偽を確かめるスキル持ちは少ない。

鑑定でもそこまで解らない。


「今日はサイラスさんとサティさんが職場見学に来るって話じゃなかったっけ?あれ?サイモンさんももしかしたら来るかも?」


「あー。目が輝いていたからな。お土産コーナーも見ておきたいだろうし。来るかもしれん。」


「なら、先にそっちに行って確認した方が良いよね?サイモンさんが王都に帰ってないとも限らないし。」


「だな。じゃあ、とりあえず食後は旅館に行くか。二人はどうする?大豆ミートの試作をしてるか?」


「出来上がった商品の納入もしてしまいたいし、私も一緒に行くわぁ。」


「お。そうだったな。なら俺も、たわしを持っていくか!」


「なら私も手伝うわ!デイジー、石鹸と、あと何が出来てるの?」


「頭用と体用のあわあわ液と、ジュースの実の殻で出来たお皿類、美容オイルね。ハンナちゃんは?」


「旅館とスーパー温泉で使用したものと同じタオル類とパンナコッタ三種類のセットね。保存魔法をジェイクにかけてもらったの。消費期限は十日ほどだから、十セットだけだけど。」


おお。なんだかんだでいろんな種類ができたんだなぁ。

たわし、石鹸、シャンプー、ボディソープ、皿、美容オイル、タオル、スイーツ。


「なら、さっき梱包してもらったドライマンゴーも持って行っても良い?」


「「「もちろん!」」」


「値段、どうするべき?」


ルークが一番気になっているのはそこだ。

この世界の値段の付け方は知らない。


「なら私が値付けしてあげるわ。値段表にも追加しましょうね。」


「よろしくお願いします。」


ルークはデイジーに頭を下げお願いした。


「お任せあれ!」


食後のお茶は、デイジーが入れてくれた作ったばかりのマンゴー茶だった。


「「「うんま!!」」」


「ほんとだ。思ったよりも美味しい!」


「これも売れるわ!限定商品にしましょう!」「よし、梱包だ!パッキングだ!」「値段表に追加しなきゃ!」


ビンに入ったマンゴーの皮、いや、マンゴーの茶葉を一回分ずつに小分けしたものを五つ、紙の箱に入れた。それが十個出来上がったので、それも持っていく事に。

残りの茶葉は、試飲用にするそうだ。

試飲用のポットとカップも持っていく事になった。


マンゴーの皮でこれほど美味しい茶葉になるなら、他のフルーツの皮でも試す価値はあるんじゃなかろうか。



朝食を終え、みんなで倉庫前に集合した。


三輪駆動車に商品を詰め込み、ハンナとデイジーが後ろに座る。


初めてみる子供が乗れる椅子が着いた三輪駆動車に、ハンナもデイジーも興味津々で、荷物を詰め込んだあとは、サドルに座ったりして座り心地を確かめていた。


ジェイクはこのままの高さで、誰がルークを乗せて使っても問題ないと判断した。


「忘れ物はないか?」


「「はーい!」」


「よし!行くぞ?」


ジェイクはペダルを踏むとすいーっと動き出した。


「何度乗ってもこれ良いわねぇ!」


「そうね。リヤカーの後ろの横幅を半分程度にしたら、王都の中でも乗れるだろうし、王都の家の裏庭にも余裕で置けるものね。」


ルークの耳にも届いた。

前世で自転車の事故が多かったことを思い出して少し悲しい気持ちになった。


「俺、出来れば王都内では乗って欲しくないな。前世で似たような乗り物の事故が多発したんだ。道路事情の整備が先じゃないかなぁ。」


「「「それはもちろん!」」」


「え?」


「考えられる事故を全て出して、王都内においての安全面のオッケーが出ない限りは、宮廷で販売は認められないの。」


「だから、ルークちゃんが思うような事にはならないと思うわ。」


そうなんだ!そう言うことは後手に回るのしか見たことがなかったから、不思議な感覚であり、感動的な気持ちでもある。


「なら、お任せするよ〜。」


「任された!キースがな。ほら、もう到着だ。」


スーパー温泉経由でやってきたので、馬房と倉庫がよく見えた。


「やっぱりこの三輪駆動車はめちゃくちゃ良いな。サイモンが欲しがるのも頷ける。」


「え?サイモンさんが?」


「あっちの畑で使いたいから買わせて欲しいって。見ただけなのに予約が入ったんだよ。」


あはは。とジェイクは笑う。


サイモンさん、目利きなのか?

乗らずに欲しがるとか、停車したのを見ただけなのか、俺たちが乗ってるのを見たのか。

どちらにせよ。ボビーさんよりすごいかも。


ジェイクはそのまま見えていた倉庫に入って停車させた。

ルークは三輪駆動車から下ろしてもらって馬房の馬の方へ行ってみた。


馬房はとても明るく、風通しも良い。草の香りがしてくる。馬車の荷台が五台停車していたので、馬も沢山いるようだ。


「おお。馬はやっぱり可愛いなぁ。目が良いよねぇ。優しくて。」


ヒヒン、ヒヒン。


返事をするように鳴いてくれた馬がいる。


「うひゃー!嬉しい!」


近くによって見る。

怖がらせてはいけないので、近寄りすぎないように気をつけていたが、一頭やけに近寄ってきて、ルークの髪の毛を食む。


「うはは!やめ、やめてよ!あはは!」


なんとなく見覚えがあるような気がしたが、白馬に知り合いはいない。


んー??


「今日来たの?今日帰るの?解らないけど、楽しめたら良いな。またね!」


ルークは馬たちに手を振って三輪駆動車の元へ戻った。


「馬を見ていたのか?って、すごい頭になってるぞ?」


「やっぱり?なんか髪を食む子がいたんだよ。随分人間に慣れてる感じ?」


「あら、珍しいわね。引っ張られたりしたわけじゃないんでしょう?甘噛みは親愛の証だったりするんだけど。気に入られたのかしら?」


「ほら、ルークちゃん。髪を直してあげるわ。」


ルークはデイジーに髪を整えてもらってから、みんなで手分けして商品を持って、倉庫と旅館の間にあるスタッフ外通路から内通路に入り、倉庫に商品を積んでいく。

何度か往復して全て置き終わると、ホールに繋がる扉から出ていく。


正面にお土産コーナー、左正面にエントランス、左真横にはサティが勤める予定の案内所兼販売所が見えた。


「「こんなだったっけ。」」


ルークとハンナの声が揃った。あの日はバタバタしていたので、二人とも覚えがなかった。


顔を見合わせて笑い合っていると、エントランスから、カゴを片手に持ってメーネに連れられたサイラスとサティ、サイモンさんが真面目な顔をして入ってきた。


「おはよう!サイラス、サティ、サイモン!」


「「「おはようございます!」」」


「メーネはお疲れ様。今日も頑張ってくれ。」


「はい!ありがとうございます!皆様もおはようございます!」


「「「おはようございます。」」」


みんなで挨拶をしあって、早速仕事の話になった。


「メーネ、うちから今出せるお土産用の商品を持ってきた。そこの倉庫に搬入済みだから、後で確認してくれ。これが一覧な。」


「承知いたしました!」


「あ、うちの酒もお願いしても良いですか?一応持ってきたんですが。」


え?見学や付き添いじゃなかったんだ。

でも来てくれてよかった!

下手したら入れ違いになるとこだった。


「全て持っていらしてください。サティさんもサイラスさんもあればどうぞ。」


「「はい!」」


三人はそそくさと外に出て行ったので、メーネは慌てて後を追う。スタッフ通路をお知らせするようだ。


「待ってるのもなんだし、一通りお土産コーナーに展示してしまうか。」


「「「はーい!」」」


倉庫に逆戻りして、商品をひとつずつ持ち出して展示していく。


たわし、石鹸、シャンプー、ボディソープ、皿、美容オイル、タオル、パンナコッタ、ドライマンゴー、マンゴー茶。

とりあえず、ここか?と言う場所に展示する。

試飲用の諸々は案内所兼販売所のカウンターに置いた。


案内所兼販売所のカウンターにはガラス張りの冷蔵庫があるので、そこには今後ドリンクや甘味が並ぶはず。


そのカウンターの冷蔵庫の下の棚と、後ろ一面の棚、展示の場所は、今後サティの采配で使ってもらう事になる。


倉庫に繋がるスタッフ専用の扉が二枚目開いた。

一枚はルークたちが使った扉。もう一枚は案内所兼販売所に直接入れる扉だ。


サイラスとサイモンはホールに繋がる扉から、商品を持って出てきた。そのままお土産コーナーに行って棚に飾る。

醸造酒が三種類、葡萄酒二種と清酒のように見えた。

それとチーズ二種とその二種の食べ比べセットの三種類。


そして、フェイスブラシ、ファンデーションブラシ、チークブラシ、ハイライトブラシ、アイシャドウブラシ、リップブラシ、の七種類が入った高級ブラシセットが、商品説明のポップと共に飾られた。

ただし、このセットは持ち手をうまく作るのが難しかったらしく三セットのみらしく、限定品とある。早い者勝ちだ。


チーズは小さくカットしたものを案内所兼販売所に置いて試食にするようだ。


案内所兼販売所の内側にはサティとメーネが入ってきて、内側の紹介と、自由にして良い範囲を説明しているようだ。


「宮廷窓口とほぼ同じ作りですね。冷蔵庫がある以外は。これなら、慣れてきたらサクサク動けそうです。」


サティは久々の仕事にワクワクしているようだ。


「無理でなければ、今日から働きたいのですが。」


と言うサイラスとサティの二人に、メーネは二人にカゴを渡した。

カゴの中は、制服とスーパー温泉で使う作務衣と湯浴み着、タオル、スリッパの入ったセットが入っていた。


「この裏のスタッフルームがロッカールーム兼休憩スペースになっていますので、名前の付いているロッカーをお使いください。」


カゴを受け取ると、二人はウキウキとスタッフオンリーの扉に消えて行った。

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