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105.ゴミ問題?

家のキッチンに実を持ち込んで、作業台に並べてもらう。


フルーツナイフを持って、分厚い方の白い果実を削いで、ある程度のサイズにカットすると、ミキサーに入れていく。成熟前の美味しくなさそうなジュースの実から取れたジュースを瓶から注ぐ。


水でも良いけど、美味しくなさそうなジュースは、裏庭でとれるくらいなら、売るほどのものじゃないので使ってしまう。


「これ、ミキサーで粉砕したら良いの?」


ハンナが手伝いたそうなので、お願いしてしまおう。


「お願いしまーす!」


ハンナは蓋を押さえて、ミキサーのスイッチをポチっと指で押す。

ウィィィーン、ガガガッ

と羽根が回り始めて透明なジュースとココナッツが混ざりあって、白い液体のようになっていく。


「本当は、この白い果実の部分をおろし金でおろす方が良いみたいなんだけど、力がいるし、今はミキサーでやっちゃうね。」


蓋を押さえている手が、実が崩れる衝撃が無くなったと感じた瞬間、ハンナはスイッチから手を離す。


「こんな感じかしら?もう固体を感じなくなったのだけど。」


蓋を開けて中味を確認しているハンナに


「うん!それで十分!そしたらそれを鍋に入れて加熱してくれる?」


「はいはい。」


加熱盤の上に鍋を置いて、鍋にミキサーから液体を注いでいく。


「これを加熱しないで布で濾すと、ココナッツミルクになるんだよ。」


「こっちは、さっきのココナッツウォーターより、香りが濃いのね。好き嫌いが分かれそうだわ。」


香り好きのハンナが言うなら間違いなさそうだ。なら、この星の人には、ココナッツウォーターの方がウケそうだね。


「ゆっくりかき混ぜてね。焦げない様に温度も調整するの。」


「わかったわ。」


ハンナが加熱してくれてる間に、未成熟の果肉も同じように削いで、ミキサーにかけ、こちらはデイジーに加熱してもらう。


並んで鍋を混ぜている二人が不思議そうな顔をしているので、


「実験。こっちもうまくいったらゴミが減るしね。」


と簡単な説明をした。


「あら?なんか分離し始めたわ。」


「こっちもよ?」


ルークが覗き込み、分離した液体がしっかり透明になったところで加熱をやめてもらった。


「で、次はどうするの?」


「うん。冷えたら布で濾して、分離してもらいたいんだ。」


「するとどうなるの?」


「布に残った方は、お菓子に使えるよ。乾燥させてからミキサーにかけたら、ココナッツフラワーっていう粉になるから、クッキー作る時の粉の代わりに使える。」


「え!なんですって?ココナッツフラワー、ココナッツフラワー!!」


ハンナに刺さったらしい。


「他のやり方もあるんだよね。加熱すると一部の栄養素が壊れるとも言われてるから、ミキサーをかけた後に布で濾して、液体の方を時間をかけて冷やしていくと分離するんだ。そっちでも良いんだけど、今はすぐに見せたかったから加熱した。」


「「うんうん。」」


「で、分離した液体の方が、今回欲しかったココナッツオイルです!」


「「ココナッツオイル?」」


「オリーブオイルの代わりに使えます!栄養たっぷり!」


「「へぇ!良いわね!使ってみたいわ。」」


「液体だから、母さんのスキルで鑑定出来そうだよね。」


ルークはそう言うと、二人が加熱してくれた鍋を確認していく。


「うーん。やっぱり未成熟の方は香りがイマイチだなぁ。好き嫌いがあるか。香りがしない方が好きと言う人もいるだろうし。鑑定結果によりけりだけど、こっちもちゃんとオイルになってる。と。」


「このオイルは両方とも食用になるの?」


「多分。でも、俺的には、成熟した方を食用にしたいかなぁ。好みだな。」


「好み好みって、香りってこと?」


「うん。ココナッツの香りって好き嫌いが分かれるでしょ?この独特な甘い香りが好きな人は成熟したものが良いだろうし、そうじゃない人は未成熟の香りが薄い方なら使えるだろうし。」


「まぁ、そうね。」


「どっちにしろ、ゴミで燃やすしかなかったジュースの実が使えるって言うのは良いわね!あの大量のゴミからオイルと粉が取れるのよ?」


ハンナはお菓子作りに使えるレシピが浮かんだのだろう。なら、


「粉にせず、この細かいまま乾燥させたものをクッキーにまぶして焼いても美味しいんだよ。」


と教えておく。


「うわぁ。頭に色々浮かんできたわ!これ、誰も知らないから、最初はお試しで配るところから始めると良いかも!」


ふっふっふ。

これでココナッツ系のおやつが色々食べられそうだ。続くと嫌だけど、時々なら作ってもらいたい。


「で、ばあちゃんたち。ここからが本題だったりします。」


「え?これが結果じゃなく?」


「はい。次が目的のものです!」


「「はぁ…。」」


ピンときていないようだが、絶対に喜ぶはず!


「このココナッツオイルを原料にして、天然グリセリンの透明な石鹸を作ることができます!」


「グリセリン?グリセリン!!」


今度は化粧品オタクのデイジーばあちゃんに刺さったらしい。


「ルークちゃん。刺さったわ!これは、最高に嬉しい!!多分スキルで作れそう!!」


デイジーの後ろの花豹がピカリと光っていた。

スキルを与えたのかもしれない。


「透明な石鹸が作れるの?そんなの見たことないのだけど?」


「宝石みたいな石鹸にしても良いし、透明だから、中に綺麗なドライフラワーを入れても綺麗で良いよね!」


「でもココナッツの香りが邪魔をして、他のハーブで香りはつけられなそう。」


ハンナが少しがっかりしてるみたいだけど、それは…


「ハンナちゃん、それは大丈夫よ。ココナッツの香りは残らないから。まずは両方のオイルを作りましょう。宮廷窓口でサンプルを配ってもらいましょうか。」


「なら、化粧品としても出したら?」


「え?ルークちゃん!詳しく!ええと、あぁ!解る!解るわ!万能!ココナッツオイルが万能すぎるわ!」


「デ、デイジー?大丈夫?万能なのね?じゃあそっちはお任せするわ。」


「ええ。ハンナちゃん。やりたいことが沢山あるの。今やった製法じゃなくて、圧搾した方が好きだわ。確かに加熱はしないほうが…。」


「ル、ルーク、デイジーは大丈夫かしら?」


トリガーが刺さったままのデイジーに、慄くハンナに


「ココナッツオイルって、美容オイルとしても肌や髪にも使えるんだよ。肌を乾燥や紫外線から守って潤いも保ってくれるから、この星の人には喜ばれると思う。髪のケアにも使えるんだ。

今デイジーばあちゃんが言ってた圧搾で取り出したオイルは、エキストラバージンココナッツオイルと言って、栄養も豊富でだから美容効果も高いみたいなんだよね。だから、デイジーばあちゃんの『化粧品オタク』が反応しちゃったんだと思う。」


「あ、そういうことね。じゃあ私も専門のココナッツフラワーを作ってみようかしら。これを乾燥させて粉にしたら良いのよね?」


「そうそう!」


ハンナはリビングへドライヤーを取りに行く。


ハンナもデイジーもスキルが色々教えてくれるから、ルークの出番は終了だ。


ガチャリと音がしてジェイクがキッチンに入ってきた。後ろからレイギッシュが入ってこようとしているのに気が付かず、ジェイクは扉を閉める。

その瞬間のレイギッシュの顔が少しだけ見えたのだが、明らかに「がーん」という顔をしていた。


じいちゃん、まだ慣れてないんだよ。

ごめんねレイギッシュ。


「お?なんだ?甘くて良い香りがするな。スイーツの試作か?」


「ううん。ココナッツオイル作りをしていたんだよ。」


そうジェイクに言いながら、扉を開けてやると、しょんぼり項垂れているレイギッシュがいた。


「ん?おぉ!すまん!まだ慣れてなくて…。気をつける。もっと…。」


「うん。気をつけてあげて。」


ルークはレイギッシュを撫でてやりながら入室させる。


「で、なんだ?ココナッツオイル?」


「うん。万能オイルだね。この実から取れるんだ。」


と、半分に割られたジュースの実を見せる。


「おいおい。それは国で一番のゴミ問題の主役じゃないか!」


「え?不名誉な主役だね。」


「乾燥させてから燃やすと火災になるし」


そりゃ、オイルが取れるくらいだし、外皮はたわしになるくらいだし。


「そのままだと嵩張るし、放置すれば腐敗して匂いがする。」


硬いからね。植物だし、腐れば匂いも出る。


「昔から川のない地域での水分補給といえば、ジュースの実だったからな。なかなか処分が進まないから、保存魔法を定期的にかけて倉庫を圧迫し続ける嫌われ者だ。」


「えぇ!!そんなっ!ココナッツに捨てるところがなしって有名なのに!」


「なんだって!?」「「何ですって!?」」


「だって、外側はたわしの材料になるし、内側はジュース、果肉はオイルやココナッツフラワー、どこを捨てるっていうのさー!」


「たわし!?おい。ルーク。これは大変な発見だぞ?」


「そうよ?事業になるわ。公共の。」


「あぁ。嫌だわ。やりたくないわ!今更この歳になって!」


えー。なんか、ごめんなさい?


「じゃあさ、企業を立ち上げたら?精霊のいる里、VE会社設立。販路は父さんと母さんの会社に丸投げしちゃう。」


「ルークちゃん、それだと初期費用が必要になるわ。」


あ、その問題があったか。一番ネックになるやつ。


「私たち、ここを整えるのにお金はぜーんぶ使っちゃったし。ね?ジェイク?」


「か、金ならあるぞ?」


「「え?」」


「え?でもひと財産使っちゃったって、言ってなかったっけ?」


そんな話をじいちゃんとしたはず。


「さっきキースと安心君で話してる時、預金の残高を調べてみろって言われたんだよ。」


「残高って、私たちみんな同じ様なものでしょ?ね、デイジー?」


「そのはずね。」


「だろう?そう思うだろう?じゃあ二人とも、調べてきてみろ。驚くから。」


「え?」「ええ、わかったわ。」


二人はそれぞれ部屋に近い扉から出ていった。

精霊さんたちは、作業台のところで待っているようだ。


少しだけ待っていると、二人が血相変えて部屋に戻ってくる。


「な、な、なんなのあの金額!!」

「ま、丸がいっぱいあったわ…」


「だろう?使ったひと財産とまではいかないが、さっき俺も同じ金額をみて、途方に暮れたよ。通話なんてあっという間に終わったのに、立ち直るのに時間がかかってしまった。」


確かに、俺たちがここでおしゃべりして、畑に行って帰ってきて、お試しで実験して。かなり時間がかかったはずだ。その時間のほとんどを立ち直るための時間に使ったの!?


「「「はぁ。」」」


「また、使い道を考えなくちゃいけないのね…。」


「そうね。持ってて邪魔になるものじゃないけど、回してこそのお金だもの。」


「なら、使おうよ!VE会社の設立!」


「そうだな。」「「そうね。」」


「ただし、ルークが社長な。その方が長くごまかせる。」


「へ?」


「あら、良いわね。五歳の天才とか言われちゃうだろうけど、実際そうだしね。」


「発案者はルークだし、いいわね!サポートにボビーをつかせたら良いんじゃないかしら?有能っぽいし。」


「「それいいね!」」


「もう一人くらい有能な人が欲しいな。」


「お金関係なら、メーネにお願いしたら良いじゃない?王宮の全てを任されてたらしいし、あの子は有能よー。」


「あ、ボビーか?メーネと一緒にこっちに来れないか?あぁ、急ぎで。はい。じゃよろしく。」


ジェイクはさっさと安心君の通話を切った。


ゴ、ゴリ押し!!オーナーに言われたら断れないやつ!?


こうして、俺の祖父母がどんどん決めてく…。

自分たちも有能すぎるんじゃ。いや、思い切りが良いだけかも。思い切りが良くなきゃ、この土地に住んでない気もするけど。


「えっと、二人が嫌そうなら、他の人を探すってことで良いんだよね?」


「「「もちろん。」」」


「嫌なことはさせないわ。そんなのつまらないだけでしょう?人生の無駄よ。」


「商品開発には、私たちが携わるわ。」


「え?いいの?」


「ただし、顔は極力出さないで、レシピの提供って感じね。」


「わぉ!心強いよ!でも、ボビーさんとメーネさん、スーパー温泉のやりくりだけでも大変そうだけど?大丈夫かなぁ?」


「あの二人なら問題ないと思うわ。」


「ボビーは暇そうだったわよ?」


「「え?暇なの?」」


ハンナとデイジーは、スーパー温泉の施設を案内している時に色々話をした様だ。

ルークが悲しみに暮れている時なので、ジェイクはルークに付きっきりでその時のことは知らないのだ。


「まだ始まってないからじゃなくて…?」


「まぁ、それもあるだろうけど、やるべきことが全部頭の中に出来上がってるみたい。」


うわぁ!本当に優秀なんだな!

良かったよ、こっちに就職してくれて!


「良い人材をヘッドハンティング出来たな!ルークのおかげだ!ボビーがいなければ、それらを俺たちがやらなきゃいけなかったと思うと、ゾッとするな。」


ジェイクが身震いをしてみせた。


ちょっとオーバーだけど、確かにやりたくはない。適材適所ってやつだね。


「じゃあ二人が来るまで、こっちで作業してるわ!ドライヤー借りるわねー!」


ハンナはココナッツフラワーを作って何か作りたいようだ。


「私もグリセリンのソープを作っちゃうわ!うふふ!」


デイジーも楽しそうにキッチンの作業台へ向かう。


「俺たちはお茶でも飲むか。お茶請けに何か良いのがあったかな?」


ジェイクは冷蔵庫の中を探してくれているが、もう夜遅い時間な気がする。


だんだんと瞼が重くなってきた気もするし、寝た方が良いかも。

最近自分で布団に入った記憶が曖昧だし、ちゃんとしないと、みんなに負担をかけてしまいそうだ。

しかし、ボビーさんとメーネさんが来ると言うし、もうしばらく頑張らねば!


「何か面白いことがあれば起きていられる気がするなぁ。あ!鑑定しよっかな。デイジーばあちゃんの後ろで花豹くんが光ってたし。」


ルークは口に出しながら鑑定盤をリビングに取りに行って帰ってくると、作業中のデイジーに向かって鑑定盤を起動する。


---

デイジー・フェニックス 48歳 特別宮廷研究員 

スキル:知りたがり

    全創薬(水・植物)

    化粧品オタク

    ドクター

魔力量B→A+→A++

魔力操作A→A+++→A++++

---


「あれ?スキル増えてないや。化粧品オタク内のスキルってことかな?成熟とパッキングができたってことは、分離とか、抽出?合成なんかが出来たら超便利じゃん!石鹸素地も作れちゃいそう!」


「え?ルークちゃん、それ本当?」


また声に出ていたようだ。


「多分?石鹸素地を作るのって、かなり危ないんだよね。だから、専門家が作ってるはずなんだけど、こっちの世界ではどう?」


「そうね。だから買ってるわ。苛性ソーダが危険だからって。」


「だよね?でもばあちゃんのスキルと魔力量なら、作成じゃなくて、生成できるんじゃない?」


「そうかしら?ちょっとスキルを感じてみるわ。ありがとう!ルーク!抽出、合成ね。」


ルークは続けてハンナの鑑定も行う。


---

ハンナ・フェニックス 50歳 特別宮廷研究員

スキル:知りたがり

    菓子製造技能士

    縫製

魔力量A

魔力操作B++↑

---


「あれ?魔力操作の+が一つ増えてる気がする。」


「え?本当?」


ハンナが嬉しそうに反応したので、結果を見せる。


「あら本当だわ!嬉しい!さっきルークに魔力接続してもらったからかしら?」


「どうかなぁ?きっかけにはなってるみたいだけど、絶対ではなさそうだよ?最初の一回目は魔力詰まりを解消させてくれるみたいだけど。」


「そうなのね。でも嬉しいわ!ルークのおかげだと思っておくわ!」


ハンナばあちゃんはウキウキしながら作業を続ける。


ジェイクに鑑定盤を向けると


「俺はもう変わらんだろう?」


「うーん。まぁ、確かに?でも、レイギッシュが成長したら、もう一人くらいは友達精霊と契約できるって、レイギッシュが言ってたよ?」


「はぁぁ!?どう言うことだ?」


「うむ。そうだ。お主ならもう一人くらいなら契約出来る。我の成長後だから、まだまだ先になるが。」


「そんなこと言って、ルークと接続したら、一発で成長したりするんだろう?」


レイギッシュはちらりとルークを見て


「まぁ、規格外だからな。こんなに強い力を放つ人間に会うのは延べ二人だ。」


「へぇ。もう一人居るのか、居たのか?そいつはどんなやつなんだ?」


「規格外だ。」


いや、それは聞いてるし!知ってるし!


「規格外の人間だった。精霊全てを従えていた。」


それは本気の規格外!!


「そいつは…想像できんな。何がどうなればそうなるのか。」


「我も驚きだ。」


レイギッシュは目線を外してそう言う。


あ、これ、秘密がある時っぽい。目が泳いでるもん。

頑張れレイギッシュー!

と思ってくださった方は、是非グッドボタンではなく、いいねを↓

作者のやる気が上がります。

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