1.帰ってきた世界
ここは地球ではない。いわゆる緩い感じの異世界。に感じている。今のところ。
この世界のある一部の土地や鉱山地区には魔獣がいたり、“星の精霊“や“神獣“と呼ばれる大切な存在はいるが、いわゆる魔王は存在しない。
謎の“精霊の鍛錬所“となる孤島は存在する。
精霊はいつも穏やかであるが、一度怒らせると溜飲を下げるまで時間がかかる。
しかも、基本死ぬことのない精霊の時間感覚は人間のそれとは違う。
精霊が怒っている間はそこから加護が失われ、気象や大地が安定しないので、敬う対象になっているのも頷ける。
俺の住んでいるこの王国は、王国というだけあって王侯貴族がいるにはいるが、何の諍いもなくかなり穏やかなものだ。
それはひとえに精霊の加護と王族の気質にある。
精霊の加護を得た土地の王族に1人でも問題児であると解った瞬間、その者は密かに王族としての地位は剥奪され、精霊の鍛錬所である孤島に移送される。
そのままにしておくと、その問題児の気質が王国中に流れ、争いごとが頻発するからだ。
そんなバカな。
と思うこと勿れ。
俺の生まれる少し前、確か7年前。
精霊の加護の力の強い隣国の見目麗しい賢王のところに、友好の証として加護が薄れて長いスライ王国の王女が輿入れすることになった。その王女は問題児であることを隠されたまま、王女のデザインした馬車にのり、かなり着飾っての輿入れだったそうだ。
問題を隠されて、かなり着飾った、の表現でわかる人にはわかったと思うが、誰よりも強欲で贅沢が当たり前というのがその王女。一目惚れした見目麗しい王様にバレて離縁されたら大変とばかりに、結婚式まではと頑張って猫を被ったまま生活していたのだが、たった1ヶ月でその性質が明らかとなる。
誰よりも美味しいものを食べたい!
誰よりも金銀宝石を集めたい!
美しい服を手に入れたい!
誰よりも何よりも綺麗になりたい!
ペガサスに乗りたい!
と仕事を放棄した人が、その王国中にじわじわと現れて大いに荒れたのだ。
その原因はすぐに特定されることとなり、件の王女
は国に帰されることになった。
加護のある大地の王国の王族の気性が穏やかであれば、王国自体が穏やかに。
気性が激しいものが王族に1人でもいれば、その人数の割合に応じて、同じ気性のものが現れる。
この現象は聖霊の加護が強ければ強いほど顕著に現れ、この世界の常識なのだが、何故スライ王国側はバレないと思ったのか。
その問題児を輿入れさせたスライ王国は、精霊の加護が無くなり薄くなって月日が経過しており、この世界の常識から外れてしまっていたようだ。
輿入れ先の状況や歴史を聞いてはいたが、自国でそんな状況は顕現していない。伝説か何かだと思うくらいは年月が経過していたのかもしれない。
誤魔化し切れる程度だと安易に考えていたらしいく、娘にも結婚式を終えるまで、もしくは子供が出来るまで我慢しておれば、その後はどうにでもなるだろうといい含めていたらしい。
ふぅ。。
人間は自分で経験しなければ理解出来ないタイプの者がいるものだ。
精霊の加護が薄い大地とは、精霊に見放されつつある土地ということだ。精霊を怒らせたのだから当然だろう。
長らくその状態だったのだろう。
年々大地からエネルギーが減り植物は育たなくなり、地震は頻発し曇天で陽は差さない。天候も安定しないので、どんよりした曇り空か雨、大雨が増えていく。
食料品に関しては、室内での水耕栽培では賄えないので98%は隣国との輸入に頼りきりではあったが、技術力の高さで地震対策、周囲の国からの冒険者的な人たちによる魔獣の狩りと鉱石採掘、更にはガラス産業が活発でこちらも技術力が高く、人気の輸出品だったので実入は良かったのだ。
加護がなくてもどうにかなっていたから、精霊についてあんまり考えなくなっていったんだろうな。
結局、加護を甘く見ていた問題児をもつスライ王国と隣国の友好関係は破綻。スライ王国への食品の輸出を禁止され、ガラスの取引は終了。食料が入ってこなくなったことで、冒険者たちも生活はできないと、自国へ帰って行ったのだ。
強気に出ていたスライ王国も破綻に追い込まれ、賠償金をたんまり払い、また、属国になることで終了となった。
そうして7年経過した今、その属国にも本当に徐々にではあるが、精霊の加護が行き渡るようになっていっているようだ。
件の王女を含む当時のスライ国王の一家は、精霊に認められるまで鍛錬所である孤島に住まいを移したとされる。
光に包まれてその場からふっと居なくなるようだ。これが“精霊の鍛錬所送り“と言われている。転移だろうか。
処刑とかはないけど、島送りはあるらしい…。
認められたら帰って来られるっぽいし、更生施設みたいなものなのかな。強制労働施設でないことを祈ろう。うん。
その後は、今の王様が即位してのんびり穏やかなスライ国として栄え始めているそうで何よりだ。
王位継承がかなり上手く運んだのと、今の王様が精霊大好きを公言しているためだろうか。
そのうち名前も変更になるんじゃないかと言われている。スライ(狡猾)王国って。。名は体を表すというしね。
まぁ、大地の怒り(地震)もほとんど無くなり、光も差し込み始めたようだしね。
でも、7年経過してやっと光が差し込むって…怖くない?
曇天や雷雨の毎日なんて俺は嫌だな。
ちなみに俺の生まれたこのホーネスト王国は、この星の大地で最も精霊に愛され、強い加護を受けている王国だ。
建国以来一度として問題児による波乱なく、のんびり穏やかで気候も良いと聞いている。実りも他国に比べるまでもなくかなり多い。フルーツがてんこ盛りである。
とっても良い国に生まれたのだ。前世で徳(!)を積んだ甲斐があるってもんだ。
そう。
俺には前世の記憶があり、転生者であり帰還者という者の1人だ。
転生や帰還はまぁまぁあることらしく、それほど珍しくもない。
しかし、3歳程度でその記憶を忘れてしまうので、過去の自分が何を成したのか成さなかったのかなど、幼児期に前世を話したとしても
「あら、上手にお話しできたわねぇ。凄いわぁ」
と、話ができた事を褒められはするが、覚えておいて貰うことは稀だし、話しても聞いてもらえないんじゃ、話さなくなるってもんで、その後忘れていくのだろう。本人が知ることは殆どないようだ。
俺の祖父母たちは珍しいものが好きだったこともあって、子供が前世の話をし始めた時、積極的に話した全てをメモっていた稀側の人間だった。
両親共に他の星から『戻ってきた』『帰ってきた』と3歳頃から熱心に話し出したのだそうだ。
ただ、なんとなく聞き出すことはしなかったそうだ。
祖父母たちは、子供が話した前世の話を、事あるごとに本人たちに語って聞かせていたらしい。(祖父談)
そんな風に自分で話した前世の話を繰り返し聞かされた両親なので、前世に関する研究にかなり精通している。つまりは色んな道の第一人者なのだ。
どんな人間にも前世があり、その前世の記憶から
この王国をもっと住みやすくする方法
とやらを研究課題にしている。
(王様の管轄内の研究機関なんだって、まじかー。)
そのため、俺が前世の話を話し出した時には、それはもう真剣に且つ積極的に俺から聞き出したため、強く記憶を引き出す事に繋がったようだ。
今も、慈しみつつ、育てて(研究して)くれている。
現在5歳の俺は、通常3歳程度では失われる前世の記憶を残している。というか、今も結構引き出せる感じ。両親と同じように、『帰ってきた』という感覚も強いし、なんなら日本人だと言う意識が強い。
そんな両親の研究?のおかげで、この世界に室内灯と街灯というものを両親は生み出した。
この星に電気はないので、魔獣の住む鉱山から採れる、紫色に光る魔石を円柱に『加工』したものをエネルギー源にしたんだって。
3歳の俺が電池を説明したようだ。。四角くても良かったのに。円柱、転がっちゃうよね。不便じゃない?
初作品、初投稿、なろうデビューしました。
稚拙な物語ですが、楽しんでもらえたら嬉しいです。
メンタルが絹豆腐ですので、生温かな目で見てください。




