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大好きな彼へさようならを言えるように

作者: ラー油

こんにちわこんにちわ。

 月明かりが私の部屋を照らす夜の十時。節電をしてる訳でもないのに、部屋を暗くしているのは彼からの別れのメッセージが原因だった。

 突然の出来事だった。いつもののようにお風呂に入って、ドライヤーで髪の毛を乾かしていたらスマホが振動してメッセージが来たことを教えてくれた。唯一のイレギュラーになるとはこの時は思わないで、私は呑気にスマホを開いて絶望をした。

 光る画面には「別れよう」と淡白で味気の無い言葉が一つ表示されていて、顔から血の気が引いて、世界が反転したような気持ちになった。目を逸らして、また画面を見るけどそいつは確かにそこにいて、私を見つめていた。

 震える指を必死に必死に止めながら、私は文字を打とうとするけど無理だった。口から臓腑が出てきそうなほどに、体は強ばって吐き気がした。


 心臓が耳の真横にあるのかと錯覚してしまうほどに、ドッ、ドッ、ドッ、と心臓が鳴っている。目には雨が水たまりを作り出して、瞼という堤防はそれを抑えることが出来ずに頬を伝わらせる。

 私はやっとの思いでたったの四文字を打つ。「なんで?」と。精一杯で、これ以上、これ以下の言葉が今は思い付かないでいた。


「他に好きな人が出来た」


 彼からそう返ってきた。付けっぱしのドライヤーが飛行機のエンジン音のようにうるさく聞こえて、当たり散らかすようにコンセントを抜いた。


 なんで、どうして、私じゃダメなのか、なんで、どうして、同じ言葉がぐるぐる回る。部屋に飾ってある彼とのツーショット写真が今ではとても憎く思えて、でもやっぱり彼の顔を見ると愛おしいという感情が湧き出てきて。こんなに酷い仕打ちをされたと言うのに、私はまだ彼のことが好きなようだ。行き場のない好意と怒りは心を痛めつける。


 彼に大好きという感情を抱いているが、いつかさようならを言えるようになって、憎めるようになれますようにと月に願いを込める。

さよならさよなら。

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