映画によくある老人同士のカッコいいシーン
「テメェ、あの子らどうすんだ?」
酒を片手に深刻そうな面持ちで聞く
「アイツらか。
皇国の騎士団に、孤児院があったろ?
そこへ預けようと思ってる」
「なんだと!?」
憤慨したように立ち上がるロブ
「落ち着けよロブ
こうして酒を酌み交わすのだって
もう最後なんだぜ?」
「いいやそんなこと関係ねぇ!
あの子たちがどんだけテメェを
信頼してるか、何もかもしらばっくれる気か!?」
鬼気迫る顔で問い詰めるロブ
「なぁ、一体どうしてなんだ?
訳を言ってくれ、金ならいくらだってやるさ」
チェドもロブに続くようにいう
ゲスなヤツなりの思いやりだったのだろう
ッチ、俺だって言いたくはない
「お前、自分の腰が上がらなくなった日を覚えてるか?」
「は?....そりゃぁ、、、まぁ」
急に覇気を失った声で応答するロブ
「同じさ
もう俺たちはおしまいなんだ
どんだけ尊敬されても、
金をいくら注ぎ込もうとも
俺たちの寿命は刻一刻と削られていく」
「それだったら、仕事をやめて...」
「老人介護が、
アイツらのこれからの為になると
本気でそう思うか?」
「そ。それは。。。」
かかりすぎた拍車をゆっくりと巻き戻すように
俺は手元のバーボンを一気に飲み干した
「昔は誰もがそう思ってた
道端にジジイがのさばってようが
持病で母親が寝たきりになろうが
俺はならねぇ、大丈夫だって
でもそれは違った。
初めに老眼と白髪が俺たちに衝撃を与える
そのすぐ後に、関節にガタがきて
怪我の治りが悪くなる、耳だって遠くなった
今じゃこうして一緒に酒を飲む事にすら自由が効かない」
「だ、だからって
今そこまでして別れる必要があるのか?
あの子たちだって、まだまだ不安定な時期だ」
「人間ってのはいつか死ぬ
どんなに頑丈な、剛健な、聡明な野郎でも
最後は皆等しく土に還った
それは最後まで悪運強く生き残っちまった
俺たちが1番分かってることだ」
もはや誰も言葉を返しはしない
「だからせめて、アイツらには
正しい別れ方を、
出会ったことに後悔をさせねぇ別れ方をしたいんだ
それが、別れ多き者の最期の務めだと思ってる」
ひとしきりを話し終えると
それまで静かだったリトが口を開いた
「せめて、君とあの子たちに
悔いなき別れが訪れますように・・・」
そう言い残し
奴は霧となって消えていく、
店内は静まり返り
しばらくの間、晩酌が続いた