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【コミカライズ2巻8/19発売・小説6巻発売中】転生アラサー女子の異世改活  政略結婚は嫌なので、雑学知識で楽しい改革ライフを決行しちゃいます!【Web版】  作者: 清水ゆりか
第二章 アゼンダ辺境伯領・新しい生活編

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閑話 もう一人の転生者Ⅱ(リシュア子爵令嬢視点)

 ????改め、リシュア子爵令嬢には前世の記憶がある。

 多分体調が急変したまま病死し、生前にどハマリしていた『みんなあなたに恋してる!』の世界に転生したらしかった。



 彼女は異世界転生ものの鉄板設定であるヒロインに転生するでもなければ、もう一人の重要人物である悪役令嬢に転生したのでもなかった。


 名前すら出て来なかった、モブ中のモブである人物に転生したのだ。


 ――せっかく転生したのに! 持てる知識でヒロインならより楽々ハッピーに。

 悪役令嬢ならばフラグを回避して自分がヒロインに、もしくはざまぁ展開・全開バリバリ夜露死苦! がお約束じゃないかって? 


 いやいやいや。


 ちょっと考えてもみて欲しい。

 地球の現代日本に暮らす十四歳である。ただの中学生である。それも病弱な為殆ど寝たきりと言っても過言でない程で、社会経験など無いに等しい十四歳である。


 そんな派手な役割は荷が重いだけである。完遂する自信がこれっぽっちも微塵も無い。


 何だったら陰謀渦巻く社交界を立ち回ることも容易でなければ、貴族として生きる事すらビビりまくりである。

 大体、中世なのか近世なのか解らない設定の世界で生きる事自体が、無理難題であるのだ。


 中世、ヤバい。色んな意味で。

 現代人はすぐあの世行きであろう。


 なので、中世ヨーロッパ()で良かった! 名も無きご令嬢で良かった! それも低位貴族で良かった! 更に成金なので経済的な心配が無くて良かった!! なのである。


(この世界の知識は完璧だもの。めっちゃ特等席であれやこれやを是非この目で、生で見ちゃるんだ~♪)


 彼女はコミカライズもノベライズもゲームの攻略本も舐めるように眺めきった、勿論ゲームも全ての対象を攻略済みの。推しに至っては何周目?な『みん恋』のガチのヲタ勢なのである。

 イベントというイベントは全て頭の中にインプットされている。


『みん恋』の、文字通り生き字引。


 内心彼女がちょっと残念なのは、出来れば外国人らしく、金髪碧眼美少女が良かったなとは思っている。

 鏡を見ると、茶髪に茶目の、美人でもなければ不細工でもない、目立たないその他大勢を体現するような見た目。


(そういえばこの顔、群衆の中によくいる()()ご令嬢の顔だ!)


 まだ小さいけど面影がある。

 ヒロインにマグノリアがやらかして、人だかりが出来ている時にはその中に必ずいた人。

 ガーディニアがヒロインを窘めている時にも、ヒロインが攻略対象者とキャッキャうふふとしている時々も。

 王子の卒業式の時の断罪シーンにも居た。


(おお、リシュア子爵令嬢も誰かの追っかけだったのかな? ただの野次馬? 至るところに居たね!)


 彼女は成金貴族のリシュア子爵家のご令嬢に転生したのだ。

 そのありようにちょっと親近感がわく。

 ……もしかすると描きやすい顔だから描かれていただけかもしれないけど。


 正に各種イベントの最前列に並ぶ彼女は、『彼女』の望む立ち位置。



(……そう言えば、そろそろマグノリアの四歳の誕生日じゃない? お披露目ってもうしたのかなぁ)


 マグノリア・ギルモア。

 『みん恋』の第二悪役令嬢で、ギルモア家で隠されて育つお嬢様。

 リシュア子爵令嬢の推しである、攻略対象者の一人、腹黒宰相ジェラルドの娘。


 両親に疎まれて育つマグノリアだが、父であるジェラルドが宰相になるにあたり、王家との縁を強くする為に王太子妃候補にねじ込もうと画策する。

 乳児の期間にする筈のお披露目をしなかったのだが、病弱だったが回復したとして四歳の誕生日に大々的なお披露目をするのだ。



「お父しゃま、ギルモア家のご令嬢のお披露目は最近、ありましたか?」

 食事の時間にリシュア子爵に尋ねる。

 呼ばれていてもいなくても、大貴族の娘の四歳でのお披露目だ。噂にならない筈が無い。


 父は彼女に甘い。

 話し掛けられて嬉しそうに相好を崩した。


「うん? ギルモア家には確かご令嬢は居ないよ?」

「え!? マグノリアしゃまでしゅよ!?」


 彼女は『さしすせそ』の音が弱い。

 十四歳の意識がある彼女にとって、今更赤ちゃん言葉というのは居た堪れない。

 ……内心めっちゃ痛いと思っている。


「ギルモア家ってギルモア領の? それともアゼンダ辺境伯領の?」

「ギルモア領の……宰相をしゃれている、ジェラルドしゃまのお家でしゅ!!」


 リシュア子爵は困った様に愛娘を見る。


「ジェラルド様は宰相ではないよ? 宰相はブリストル公爵だよ」

「えぇぇぇぇぇぇ!?」


(なんですとーーーっっ!!)


 驚いた。めちゃんこ驚いた。

(どういう事!? ジェラルド様が宰相じゃない? マグノリア・ギルモアはいない!?)


「ど、どうしたんだい!?」

「大丈夫!?」


 余りの娘の驚いた様子に、両親は目を白黒させる。

 しかし、彼女も彼女でパニックで、両親に構っている余裕は全く無かった。


(え?……もしかして、まだマグノリアは産まれていないの? 同い年の筈なのに!!)


 先日王子の話が出て、年齢を聞くと二歳差だったので、てっきり自分はマグノリアと同い年だと思っていたのだ。


(ましてジェラルド様が宰相になっていないって、どういう事? アスカルド王国最年少宰相の記録は!?)


「……ガーディニアしゃまは? シュタイゼン家のガーディニアしゃま!」

「ガーディニア様はいらっしゃるわ。あなたの一つ年上よ……良く知っているわね?」


 感心したように両親が頷く。

 しかし彼女の耳には届かず、素通りしていく。


(ガーディニアは通常通り、王子も通常通り……ギルモア家だけ、ずれてる? 違う?)


 なんで!?

 彼女の心の叫び(血反吐つき)は誰にも届かない。

 


 自分が転生したから、何か歪みが生じたのか?

 それともここは『みん恋』に似て非なる世界なのか?

 自分以外にも転生者がいて、何かを回避しているのか?

 ……宰相でないのなら、ジェラルドは攻略対象者ではないのか?


 リシュア子爵令嬢は、せっかく転生した世界に初めて、疑念と絶望めいた落胆を感じていた……

 

(えーー!? ちょっとぉ、誰か! 答え!! 答えプリーーーーズ!!!!)



*****


 彼女の探すマグノリアは、悪魔将軍とアゼンダの黒獅子、陽気な隠密暗殺者と元気印な侍女を従え(?)アゼンダ辺境伯領の入口に入り、今まさにジャイアントアントとマジでタイマン五秒前である。


 モブ令嬢ことリシュア子爵令嬢が、もう一人の転生者マグノリアと遭遇するまで、後、約四年。


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