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ヴァイオレットは警戒中?・前編

いつも応援いただきまして誠にありがとうございます。

お陰様で7/18に第6巻が発売されることになりました! 現在ご予約承り中です。


6巻発売を記念いたしましてSSをお送りいたします。

今回のSSは6章辺りの、学院の新学期が始まった頃の一幕です。


 プレクラスの授業が終わったヴァイオレットは、図書館に立ち寄るという名目で学院内を偵察中であった。気合の入った表情であちらこちらを見回しては、頷きながらノシノシと歩いている。


 アスカルド王国唯一の王子であるアーノルドの入学に合わせたように、数日前に開設されたプレクラス。……もちろん、王子の入学に合わせて開設されたものだ。


 王妃が学院にゴリ押しをして来たのであろうというのが外部の大方の予想であるが、実際は近からず遠からずといったところだったりする。


 というのも、実は以前から学院側でも対象年齢の変更をしたいと考えていたからだ。

 こちらは純粋に子どもの能力の底上げやら引き延ばしやらをしたいからである。


 その行き着く先は、将来の指導者としての能力の向上、からの国力の底上げ。

 より高度な研究と研究者の育成、そして人類にとってより有益なあれこれを人々に還元する……ということを考えてのこと。何度も国に掛け合っていたのだが、なかなか承認されないでいた。


 今回王子の入学を機に、ちょっと趣向が違ってはいるがチャンスが転がりこんで来た。学院の教師たちにとって、渡りに船というやつである。


 一度決めてしまえば変更はし難い。先ずは前例を作ってしまえばいい。


 内容なんぞ、上の人間が興味を失った頃に見直しをすればいいのである。……元々上の人間どもは非常に忘れっぽく、興味も移ろい易い……というのが教師たちの一致した意見である。


 そんなこんなで、各方面の思惑が錯綜しながらスタートしたプレクラス。

 表向きの名目は、学院側は入学を控える子どもの特性を把握し、きめ細やかなサポートをすること。

 未来の紳士淑女たる子どもたちは、未来の同窓や先輩、教師たちとの交流を深め、入学後にスムーズな学院生活を送れるように務めるための準備期間とされている。


 なんのことはない、アーノルドのより良い側近の補強や選別のため、はたまた側妃になり得る人間に目星をつけるための手回しである。

 ……正式な学院生としての入学ではないため、あくまで希望者による自由参加というテイが取られている。


 せいぜい一年もあればいいだろう準備期間を、あえて正式入学の二年下にまで広げているのは、マグノリアがプレクラスに参加することを見込んでのことだ。

 ……悲しいかな、その参加を見込まれたはずのマグノリアは王家の予想も学院の期待にも反して、プレクラスどころか二年後の正規入学すらも回避する気満々であるのであるが。


 そんなプレクラスを、違った意味で享受しまくっている人物がヴァイオレット・リシュア子爵令嬢である。


******


「……あの、木と木の間からじっとりとこちらをみつめているご令嬢は、もしかしなくてもディーンの知り合いなのかな?」


 ふたり……ユリウスとディーンが図書館へ向かう途中、木と木の間から凄まじい念を放っている人物がいた。


 その鋭い視線は、間違いなくふたりをロックオンしている。


 しばし気がつかないふりをしていたユリウスであったが、さすがに無理があると思い、何ともいえない表情でディーンに向き直った。


 ディーンも気遣わし気と言うか気まずいと言うか、やはり微妙な表情で頷く。


「……ああ、うん……。知り合いというか、主家のお嬢様のご友人……? みたいな感じかな?」


 こっそりと示された先にいるのは、まるで害虫か汚物を見るようなまなざしのヴァイオレットであった。

 そしてその視線はディーンを通り越し、間違いなくユリウスに注がれている。


 恨まれる覚えも嫌われる心当たりもない初見のユリウスは、心の中で盛大に首を傾げた。


 それと同時に、『推したち尊い……っ!』というらしい(ヴァイオレット談)、行き過ぎた憧れと愛情と、別の何かが混じったようなおかしな視線と言うか圧と言うか……しか見ていないディーンは、これまたいつもとは違うヴァイオレットの様子に、やはり首を傾げていたのである。 

お読みいただきましてありがとうございます。

前後編に分かれており、後編は7/18公開予定となっております。

少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。

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