表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ2巻8/19発売・小説6巻発売中】転生アラサー女子の異世改活  政略結婚は嫌なので、雑学知識で楽しい改革ライフを決行しちゃいます!【Web版】  作者: 清水ゆりか
第六章 アゼンダ辺境伯領・バカンスは大騒ぎ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

163/354

プレクラスのあの人は

 【ガーディニアの場合】


 クラスに集まった顔ぶれを見て、いつもの社交とさほど変わらない事を確認する。

 領地がある者は幼少期をそちらで過ごすものだが、近年の有力貴族の子ども達は王都のタウンハウスで過ごしている者が多い。


 それでも数名は慣例にのっとって、領地で過ごしている者もいるが。

 そういった子ども達は今回、プレクラスには参加しないようだった。


 もっとも、そういった者は将来目立った役職に取り立てられることは無いだろう。それは親も織り込み済みか狙っているかだ。


 たった一人を除いては。

(……やはりマグノリア様はいらっしゃらないのね……)


 まあ、本人も周りも、取り立てられない様にとは思っているのだろうが。


 クラスには、今年十一歳と十二歳になる子ども達が集められた。

 少しでも良い王子の側近と側妃を育成・見繕う為だ。


 側妃という言葉に、ガーディニアの胸がツキンとする。

 小さい頃からほぼ決められていた婚姻とはいえ、ついこの前婚約したばかり。お互いまだ子どもだというのに、既に側妃の事を持ち出されなければならないなんて。


 貴族の娘とはいえ、少女である事に変わりはない。

 自分の夫になる人間に想い想われたいと思うのは当たり前だろう。

 ……そんな当たり前な事をほんのひと時、願う事も出来ないなんて。


 側妃を持たない王もいる。現王がそうだ。

 どういう取り決めがあって王妃唯ひとりなのかは解らない。

 長い間懐妊しないにもかかわらず、王は側妃を娶らなかった。

 なのに、自分の息子には当たり前のように娶らせるつもりらしい。王子も特に否定していない……そればかりか、当然のように思っている節がある。


 選ばれる事も、ひいては国の為に生きる事が自分の役目なのだと思って来たが……


 何年前だろう。まだ小さい頃、初めて王子と会った時。

 あの人がお前の夫になる人だと言われた。王子然とした姿と、凛々しい見目に淡い恋心が無かったと言ったら嘘になるけど……


 選ばれて、妻になる事が決まっても。

 プレクラスが始まって、一緒に昼食を摂るでも、様子を見に来るでも無い。


 学年が違うと言われればそうだろうし、新入生としての学校生活や、学友達との交流があると言われればそうなのだが。

 そうだと思うからこそ、黙っているのだが。


(……どうしてかしら、この妙に引っ掛かる感じは……)

 些細な事に、引っ掛かりなんか持っている場合じゃないというのに。


(クラスの在籍者の動向を確認しなくてはなりませんわ)


 自分に求められているのは、このクラスを上手く纏める事だとガーディニアは自分に言い聞かせる。


 そして、王子が恙無く学院生活を過ごせるようサポートする事だ。




【ヴァイオレットの場合】


 両親に何回も何回も頼み込んで、何とか滑り込んだプレクラス。


 万が一にも側妃に選ばれてしまったら大変だと両親は言っていたが……そんな事は杞憂以外の何物でもないと言いたい。

 いや、実際言ったんだが。


 王子と年が近い人間と交流が持てるようにと作られたクラスだが、その実側近と側妃になり得る人間を見繕ったり育成したりするクラスらしい。


(『みん恋』にこんなエピソード、無かったとおもうんだけどなぁ?)


 マグノリアの言う通り、ゲームと現実が、色々ズレて来ているっぽい気がする。


 ……実際ゲームが動き出すのがマーガレットが入学してからではあるので、その前段階は描かれていないという可能性も無い訳ではないが。だが誰の言動にもプレクラスなんて描写は無かった。

 全く引っ掛かって来ないというのも不自然な気がするのだが、どうなのだろう。



 それにしてもだ。

 元々大人たちの話し合いで決まった婚約の為、王子にとって思い入れが無いのは解るのだけど……ガーディニアの所に一度も顔を見せに来ないというのはどういう事なのだろうかと思う。


 婚約したばかりだというのに、全くもってカサカサしている様に感じるのはこれ如何に。

 ――イベントなんて全くもってないというか。


 王子は新生活を謳歌しているようで、ガーディニアの事なんてこれっぽっちも気にしていない様であった。

 婚約したばかりだというのに(二回目)。


 俺様キャラなので、元々ちょっと自分本位な所があるキャラではあるのだが……

 実際溺愛するのもマーガレットだけにであって、ゲームでもガーディニアにもマグノリアにも、何処か冷たい感じではあったもんなぁと思う。


 プレクラスは隔日に開かれており、クラスが無い日は王太子妃教育に邁進しているというガーディニア。

 相変わらず頑張り屋でエライと思う。


 プレクラスの勉強も頑張っているし、クラスのみんなの事もフォローしようと色々苦慮してる様子が見えて……まだ小さいのに、本当にとっても頑張っているなぁとヴァイオレットは感心しているのであった。


 そのヴァイオレットだが。

 プレクラスの生徒になると図書館に入る許可を貰える為、特に予定のない日は学院に入り浸っているのだが。

 図書館に行くふりをして、王子の様子を見張r……見学しているのだが。


 何か、同級生の取り巻きと遊んでいる様子しか見られない。

 こう、女子生徒にちやほや・ベタベタされて喜んでいる風な姿しか見ない。


 ……クラス分けの為の学力テストも、どうも振るわなかったらしいのだ。


 ちなみに例のユリウス皇子がトップ、そしてあのディーンが二位だったそうだ。王子の成績には触れられなかったから、多分そういう事だろう。


 大体、勉強をしっかり身につけて来る王族が成績が良いのはセオリーなので(攻略対象者が頭悪いとか興醒めだからだと思う)、ユリウス皇子が一位なのは解る。


 男爵家子息のディーンが二位って、めっちゃ快挙だと思う。

 通常クラスの低位貴族からは、『低位貴族の星』と呼ばれているそうだ。


 顔も結構格好いいし……まだ可愛いという感じだが、攻略対象者でもおかしくないのに。

 『みん恋』でそうじゃないのは、やっぱり男爵家の人間だからなのだろうか。


 この前寮に会いに行ったら、上位クラスでなかなか大変らしく、めっちゃ萎れていたけど。 


 それに引き換えアーノルド王子はどうしたものか。

 学業はパッとしないみたいだし、婚約者にも微妙な態度だし、何だか女子生徒ばかり侍らしているし……


 確かに、ゲームでも強気で、ちやほやされても当然みたいな所はあったんだよね……

 王子様だから、男女とも忖度するというか、ヨイショしたりベタベタしたりされてたし。


 成績も、どうなんだろう。

 ……ゲームではマーガレットとガーディニアの優秀さを示す為に、ヒロインと悪役令嬢は取り上げられていたけど。そう言えば王子のエピソードは無かったんだよね。


 この前もテストが近いと聞いて、ガーディニアが王子にそれとなく勉強したらどうか、と言っていたのだけど。

 そうしたら、拗ねてちょっと怒っていたしなぁ。


 なんか、真っ当な事を言ってる筈なのに、気を使っている年下のガーディニアが不憫になって来るようで。

 確かに、人に指図されたりが嫌いなキャラだったんだけどね……


 ……うーん……

(何か……ゲームでは気にならなかったんだけど……現実だと、王子ってビミョー……?)


 確かに格好良いけど、今の所見た目しか良い所が見つけられないというか。

 

 そんな事をつらつらと思いながら、取り巻き達と騒ぎながら通り過ぎる王子を見送って。ヴァイオレットは草陰で、何とも言えない微妙な表情をしながら首を傾げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ