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【コミカライズ2巻8/19発売・小説6巻発売中】転生アラサー女子の異世改活  政略結婚は嫌なので、雑学知識で楽しい改革ライフを決行しちゃいます!【Web版】  作者: 清水ゆりか
第五章 王都王宮・お見合いそして出会い編

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召喚状が届きました

お待たせいたしました!

5章が始まります。

どうぞよろしくお願いいたします。

 お披露目会から二年が経った。

 その間にも色々あったけど、充実した楽しい毎日だったと思う。

 

 まずはパッチワーク。

 今までの食品に比べて、ゆっくりとした需要の上がり方だった。

 王都で流れを見るために一か月程先行販売をしたが、じわじわと伸びていく感じだったので、ストック作りに余裕がありそうだと思ったのもつかの間。


 誰かが宣伝をしたのか、超大量買占めがあったのかは解らないが、ある日を境に物凄い勢いで売れ倒す事になったのであった。


 とても手芸部隊だけでは間に合わないとなり、協力してくれている工房も加わっての人海戦術で乗り切る事になった。

 経営状況が芳しくなかった幾つかの工房がパッチワークの専用工房になりたいという話も出て、手芸部隊のメンバーがリーダーとなる形で作業の指導などにあたることになり現在に至る。


 今はだいぶ落ち着き、綿を挟んだパッチワークキルトも販売を始めた。



 同年の冬にはニュータウンが全て完成。

 薄暗く饐えた感じの街並みから一転、名前に相応しい綺麗な通りになった。


 教会や要塞に間借りしていたアゼンダ商会の各部署部隊は、新しく出来上がった工房兼商会に移動し、活動を始め、順調に滑り出す。

 

 地域活性化のために余分に作った店舗や工房にも、若き会頭や親方達が入居し、活気に満ちている。

 かつてここがスラム街だったなんて、言われなければ解らないだろうと思う程に変化した。



 学校の運営も順調である。


 元々基本の読み書き計算を主に、商売で使う技術(帳簿関連)の基本を学んでいる。


 無事一年の課程を修了した人々は、日々の仕事に活かしているようだ。

 口コミや紹介で受講を決める人も出て、受講者数は確実に増えている。


 仕事や生活で活かせるようにという事で学びに来ている人ばかりなので、これ以上の学びを提供するというのが現時点ではなかなか難しい。

 多分、提供しても必要とは思われないであろうと予測できる。


 よって、数年は今のままで領地全体の識字率を上げていき、ある程度学ぶ事に対しての土壌が出来た頃、本格的な学校の設立を考えたいと思っている。

 なので、どんな内容にしたら良いかは構想途中である。



 次の年は新しい事をするというよりは、今まで興した事業などの地固めをする一年となった。

 一時的な流行ではなく、しっかりと産業として根付かせるための活動に力をいれる。


 とはいえ殆ど商会のみんなに任せているので、実際にマグノリアがする事はだいぶ少なくなり、会議で進捗を聞き、意見を纏めたり改善提案をする事が主となった。


 勿論経営状況をきちんと確認しつつ、時折見学に行ったり、商品開発をしたりもしている。



 空いた時間で足りない分の教育……念のためクロードの協力の下、王立学院で学ぶ範囲の座学を浚ったが、充分に足りていると判定され、芸術系の実技などを行ったり貴族特有の采配やマナーを学ぶ事に充てた。


 芸術系はディーンと一緒に、采配やマナーはリリーも一緒に学ぶ。


 ダンスはだいぶ上達し、楽器や絵画もそれなりだ。


 采配やマナーについては、男爵令嬢であるリリーもお年頃である。

 ……どちらかというと、大陸ではやや行き遅れに片足を突っ込んでいると思う。

 

 家を支えるために早期に就職したリリーが結婚した際に困らないように、復習というか追加というかなのだが。

 

(うーん。リリーってクロ兄と同い年だから、今年二十三歳なんだよね……ここだと、そろそろ結婚しないと不味いのかなぁ……)


 まだまだ若いではないか! と言いたいが、世界が違うのである。

 移領する時には家族のため、兄弟の学費のために働くのだと言っていたが……今までの仕送りに加え、持ち直したらしい(?)男爵家の今現在。


 多分結婚したとしても収入的には問題無いようなのだが。

 結婚するのが当たり前の世界で、このまま未婚を貫くのだろうか……?


 何と言うか、変にお節介をしたい訳でもない。だが……出会いも無い配慮もしないだと、やはり主としてイカンのではないだろうかと思う今日この頃なのである。


 かといって、余計なお世話なのは自分がよーく解っているのだ。色々事情も、本人の気持ちもあるだろうし。


 なんせ、リリーよりずっとずっと結婚しないで生きてきたのである。言えた義理ではないのだ。


(私を放っておけないとかもあるのかなぁ)


「……難しい顔をしてどうしたのですか?」


 気分転換を兼ねて、今日はクルースの町へ来ていた。

 ディーンは勉強、リリーは休暇なのでガイのみ伴っている。


 商品化するかは別として、昆布だしが欲しくて海藻について漁師さん達に聞きに来たのだ。

 ついでにわかめや海苔なんかもあれば嬉しいのだが。

 海藻を食べる習慣が無いらしく、食べれそうなものを探しておいてくれるとの事であった。


 確認が終わって歩いている所を丁度詰所に来ていたユーゴと鉢合わせて、ちょっとお茶でもと相成った。

 珍しくイーサンを伴わずに一人だったので確認すると、彼も休暇との事であった。



 ちゃっかりとガイも一緒にお茶を飲んでいる……というか、館に居ない時は、ディーンもリリーも一緒にテーブルを共にしてもらう事にしている。

 未だ日本人気質のマグノリアが落ち着かないからだ。


 初めは頑なに固辞していたディーンとリリーだったが、しょんぼりするマグノリアに勝てずに、流されるままに共にするようになったのだった。



 一応伯爵家の人間であるユーゴは当たり前のように一緒のテーブルにつく護衛に、初めは鳶色の瞳を瞬かせていたが……主従関係というよりは友人判定しているであろうマグノリアの気質を知ってか、何も言わずに納得した様子を見せた。

 マグノリアもガイも、きちんとその場のTPOに合わせて対応するであろうことは言わずもがなだ。


「ちょっとリリーの婚姻事情をね、考えてまして……」


 まるで子どもらしからぬ内容の言葉をため息交じりに呟くお嬢様に、ユーゴとガイは顔を見合わせた。


「あー……リリーさんも、結婚にはまあまあいい年っすからねぇ」

「侍女殿なら気立ても良いし、狙っている騎士達が沢山いそうですがね?」

「それなら良いのですけど」


 如何せん、今ここに居る三人はいい年を超えても独身を貫いている(た)人間ばかりである。


 納得出来ないような声を出す主に、ガイはぐふぐふと変な笑い声を立てた。


「リリーさんよりお嬢の方が問題じゃないっすか?」

「私はまだ八歳だよ?」


 眉を寄せるマグノリアに、とんだとばっちりを受けて大変だったユーゴが眉を八の字にしてため息をついた。

「……もう、自分の名前を出さないで下さいよ?」


 実家の父達を見送る際に、冗談半分でヴィクターの仮の婚約者の話をしたら……後日セルヴェスとクロードに絶対零度の視線で詰め寄られたヴィクターが、『マグノリアちゃんはデュカス卿が宜しいみたいですよ』とユーゴの名前を出したのだった。


 クロードはともかく嫉妬心(?)露わのセルヴェスが、孫可愛さに訓練にかこつけて、暫くの間ユーゴをしごいて大変だったのである。

 

「残念っすね、お嬢」

「本当にねぇ。デュカス卿は理想的ですのに」


 振られちゃいましたねと言う主従ふたりの言葉に、ユーゴは肩を竦めた。


「しがない中年の伯爵家次男に、ギルモア家のお嬢様は荷が重いですよ……後二十五年ぐらい若かったら是非ともお願いしたい所ですが」


「二十五年若かったら、洒落にならないので言わないけどねぇ」

 今度はマグノリアが肩を竦めた。


「甥っ子で宜しければご紹介いたしますが」

「……良心の呵責に耐えられないから要らないわ」


 マグノリアの七歳上の甥っ子の名を出したが、すげなく断られた。


 何せ、マグノリアの中身は三十過ぎの成人女性である。マグノリアにしてみれば、ユーゴの立場なのである。

 

(事案臭がするじゃん……)


 物理的にはこちらの方が問題が少ないのであるが、彼女の心持ちの問題である。

 マグノリアはショタコンの気質はないらしかった。


「お嬢は中身年齢がおっさんっすからね?」

「……それ、年齢よりも性別が違うけどね?」


 相変わらず何処までが本気なのか解らない主従に、ユーゴは苦笑いと共にお茶を飲んだ。



 館へ帰ると、セルヴェスとクロードが難しい顔をして執務室にいた。

「……戻ったか、マグノリア」

「どうかしたんですか?」


 ふたりは顔を見合わせ、小さくため息をついた。

「また、王宮から手紙が来た」


 お披露目をしたことは、アスカルド王国内の貴族にもあっという間に広まった。

 ギルモア家に隠された女児がいた事と、六歳でのお披露目はセンセーショナルな話題であったからだ。


 一応、当初の予定通り元々身体が弱く、空気の良い辺境の地で暮らしているという事になっている。


 盛っていると思われていた数々の功績も、他国からの問い合わせに対応し、航海病解決への感謝状などが続々と舞い込むにつれて、事実であるらしいと認識され始めた。


 そうなると、王家としてはどんな娘なのか確かめたいのであろう。

 理由は言うまでもない。


 何度となく、セルヴェスやクロードと共に登城するように言われたが、まだ体調が万全ではないと言ってははぐらかしてきたのだ。


 せめて午餐会かお茶会でもと言われたが、時に体調不良、時に事業のあれこれで都合がつかないと言っては断り続けてきた。

 そこまで身体が弱い人間ががっつり事業をしているのも、まあ、仮病だと思われているのだろう。


(確かに仮病だけどね……)

「あれ……?」


 いつもと違う色と紋様の封蝋に、小さく首を傾げる。


 セルヴェスは苦々しい顔で説明した。

「召喚状だ。まったく、小さい子どもになんてものを送り付けてくるのか……!」


 召喚状?

 物騒な名前に、じっと封筒をみつめる。

 ……幾ら言っても登城しないから、痺れを切らしたとか? 


「おおぅ……本気って事?」


 強制力。

 そんな字づらが頭を掠めては消えていく。


(どうしてか、面倒事の予感しかしないのだが……)


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