第2話 出会い
Twitterのリンクを貼るので、気軽にフォローしてもらえたら嬉しいです!
https://twitter.com/ Shura_Punipuni
「あれ?珍しいね、こんなところに人が来るなんて」
どこからともなく無邪気な声が聞こえた。閉じかけてた目を開き、ゆっくりと体を起き上がらせ、辺りを見渡してみたが、声の主らしき人は見当たらない。だとしたら、一体どこにいるのだろうか。
「あはは、あたしがどこにいるのか、分かってないみたいだね。ほら、給水塔の上を見てごらん」
言われた通りに給水塔の方を向き、上を見上げてみる。すると、給水塔の上に1人の少女が立っていた。給水塔には大きなはしごがついているから、そこから給水塔の上に登ったのだろう。
その少女はかなり明るめの茶髪に高い位置のポニーテールで、大きなピンクのリボンをつけていて、パーカーを腰に巻いていたり、スカートをかなり短めにしていたり、ルーズソックスにしていたり…制服をかなり気崩していた。
少女を見ているうちに、頭の中で様々な疑問が浮かんだ。同学年だろうか。後輩だろうか。それとも先輩だろうか。この少女は、屋上によく来ているのだろうか。こんなに派手な見た目をしているにも関わらず、なぜ入学してから1度も見たことがなかったのだろうか…あれこれ考えてるうちに少女は給水塔から飛び降り、俺の元へとやってきた。
「きみはどうやってここに来たの?あたしが来た時には鍵は閉めておいたはずなんだけど…閉め忘れたのかな?」
「…職員室から屋上の鍵をこっそり取ってきました。こういうことは、あんまりするべきではないかもしれないけど…」
「ふーん…きみ、意外と大胆なんだねぇ、もし先生が鍵がないことに気づいたら、きっと大騒ぎになるだろうに」
「あはは…まぁ、そうですよね…でも、ちょっとこういうことを1回してみたくなっちゃって」
俺は苦笑いをしながらそう言った。嘘をついて授業をサボっている上に学校の鍵を盗み、入ってはいけない屋上に無断で入り込む。普通なら、人に見られるとか、先生に怒られるからとか、そういった理由をつけてやろうとしないだろう。でも、俺はそうじゃなかった。むしろ、「どんな形でも構わないからいつもと違うことをしたい、ちょっと悪いことをしてみたい」…そう思っていた。だから、はっきり言って先生に怒られるとか、友達に変な目で見られるとか、そんなことは俺にとってはどうでも良い事だった。
「一回してみたくなった…ってことは、普段は超真面目な優等生くん!ってことかぁ〜」
「い、いや、別に真面目ってわけじゃ…」
あ、ちなみにあたしはピッキングツールを使ってここに来たよ。あんまり目立つことはしたくないし、何よりもここに来た証拠が残らないからね」
少女はポケットから解錠に使ったであろうピッキングツールを取り出し、プラプラと振り回し始めた。
「ちょっ…!ピッキングツール持ってるって…それ犯罪じゃないですか…」
「だいじょーぶだいじょーぶ、もし誰かにバレてもお父さんが鍵師やってて、お父さんが持ってる道具を間違えて持ってきちゃいましたーって言えば、なんとかなるよ」
「何そのむちゃくちゃな言い訳…」
「もー、大丈夫だって言ってるのに〜犯罪だーとか言い訳がむちゃくちゃだーとか…やっぱりホントは真面目くんじゃん」
「うぅ…」
俺は何も言い返せなくなってしまった。学校でのルールを破るだけならまだしも、犯罪となるとさすがに黙ってはいられなかった。でも、本物の不良なら犯罪の1歩手前くらいまでの悪さは平然とするだろうし、自分の「いつもと違うことをしたい、ちょっと悪いこともしてみたい」という思いは実際は大したことないものだったのかもしれない。しょげている俺を見て、少女はクスクスと笑い始めた。
「ぷっ…あははは!ごめんごめん、冗談だよ冗談、このピッキングツールはレプリカだよ〜、ただ銀色の絵の具を塗ってそれっぽくしただけ」
「えっ…?」
少女はそう言って俺にピッキングツールのレプリカを手渡した。よく見ると、銀色の絵の具に入っていたであろうラメがキラキラと光っているだけで、金属特有の光沢ではない。
「あはは、びっくりした?本物だと思ったでしょ〜ドッキリ大成功だね♪」
「ちょっ、冗談でも言っていいことと悪いことがあるでしょ!!」
俺は思いきり赤面した。こんな簡単な嘘に騙された自分がとても恥ずかしかった。穴があったら今すぐ入ってしまいたい。そんな俺の表情とは対照的に、少女ははにかみながらケラケラと笑っていた。
「あ、そうだ、自己紹介がまだだったね、あたしは3年の星野佳奈。きみは?」
「俺は影山秀、2年です…」
「秀くんね…よろしく。あ、そうだ、あたしの方が先輩だけどタメでいいよ。せっかく屋上で出会えたわけだし」
「い、いや…そんなの悪いですよ…」
「タメでいい。よね?」
星野さんが急に詰め寄ってきた。突然の事で俺はドキッとして固まってしまったが、少し間を開けた後にゆっくりと頷いた。
「は、はい…」
「よろしい。あと、あたしのことは佳奈って呼んでね」
「うん…分かったよ…佳奈…」
佳奈はうんうんと満足気に頷いた。なんだろう。さっきまでただの明るい女の子だったはずなのに、急にガタイのいいラグビー部の先輩のような圧力があるように感じた。まるで、「逆らったら命はないぞ」と言われているよう感覚だった。可愛い見た目からは全く想像できない威圧感に少しだけ恐怖を感じていた。どうしよう。気まずい。なるべく早くここから離れたい。そんなことしか考えていなかった。
キーンコーンカーンコーン…
あれこれ考えている間にチャイムがなった。ちょうど良かった。これなら「教室に戻ってご飯を食べたい」という口実でここから逃げることが出来る。
「あ、じゃあそろそろ戻るから…俺はこれで…」
「あれ?もう帰っちゃうの?せっかく昼休みになったんだから、もう少しここにいればいいのに」
「もう少しここにいろって言ったって…俺、昼飯食べたいし、クラスの友達と喋りたいし、鍵もさっさと返したいし…」
思いついた言い訳を片っ端から言ってみたが、上手く言葉がまとまらない。言い訳が下手なせいなのか、1発で嘘だと見抜かれるような言い訳しか思いつかない。そんな俺を見た佳奈は、ケラケラと笑いながらそうかそうかと頷いた。
「そっか…やっぱり秀くんは真面目だねぇ〜。わかった、今日はもう帰ってもいいよ」
「ありがとう、じゃあ…」
「ただし、あたしの趣味に付き合ってくれたら…だけどね」
「え…佳奈の趣味…?それってなんなんだよ…」
「それはね…」
唾をごくりと飲み込む。
「催眠術だよ」
おはしゅら、こんしゅら、ばんしゅら!☆しゅらいむ★です!
今回入れた挿絵はTwitterの相互さんの茶々丸さんに描いてもらいました、ありがとうございます(*´▽`*)
最初は自分で描こう!と思って描いてはみたものの、思うように描けず、Twitterでふざけ半分で「誰か専属絵師になってくれ〜」とツイしたところ、茶々丸さんが描いてくれることになりました。絵柄がとても素敵でわたしが描きたかったイメージを忠実に再現してくれてるのがほんとにありがたいです✨ぜひこの小説と一緒にじっくりとご覧下さい!茶々丸さんのTwitterのリンクも貼っておきますので、フォローよろしくお願いします!
茶々丸さんのTwitter
https://twitter.com/chacha_tyanoma