第1話 屋上
時刻は午前11時40分。俺は仮病を使って授業を抜け出し、廊下を歩いていた。
にぎやかで人が多くいる休み時間と違って誰もおらず、しんと静まり返っている。唯一聞こえるのは先生の大きな声と、外で風が吹きつける音だけ。普段は中々味わえないような静けさを感じながら、屋上へと繋がる階段に向かった。
コツ、コツ、コツ…と、自分の足音が階段に響き渡る。屋上及び屋上へと繋がる階段は立ち入り禁止となっているため、人がいることはまずない。その上、近くに教室がなく、常に静まり返っているため、ちょっと足音を立てるだけでもコンサートホールのように音がよく響くのである。
俺は日々の学校生活に退屈さを感じていた。勉強は常にトップ、運動は高難易度の技も出来るし、心から気を許せる友達もいる。どんなことでも大抵のことは難なくこなせていたので、学校生活において、何一つ不自由はなかった。
だが、何でもできるが故に、いつからか物足りなさを感じるようになっていった。勉強でわからないところを友達と共有することが出来ないし、体育でできない技を友達と一緒に練習することも出来ない。みんなは協力し合ってお互いが色々なことを身につけたり感じたりしているのに、俺はただ淡々とこなすだけで何も身につかないし、みんなと同じ気持ちを感じることが出来ない。
だから、屋上に向かうことにした。授業を仮病で抜け出したり、職員室から鍵をこっそり盗み、入ってはいけない屋上に入ってみたり…いつもは絶対にしないようなことをしてみれば、何かが変わるのではないか…そんなことを考えながら、淡々と屋上へと続く階段をのぼっていった。
そして最上階まで上り、屋上の扉の目の前に立った。扉には小さなガラス窓がついており、外の様子を見ることが出来る。窓に近づき、少しだけ背伸びをして外の様子を見てみた。見たところ、先に来ている生徒はおらず、実質貸し切り状態であるようだ。俺はポケットから職員室からこっそり盗んだ屋上の鍵を取り出し、扉を開けた。
ガチャッ――
扉を開けた瞬間、暖かい風がぶわっと吹いてきた。ポカポカしていて、春の香りを漂わせる、子守唄のような優しい風だった。その場に寝転がり、空を見上げると、雲一つない澄んだ空で、散った桜の花びらがくるくると踊るように宙を舞っているのが見えた。優しく暖かい春風に吹かれながらゆっくりと目を閉じたその時。
「あれ?珍しいね、こんなところに人が来るなんて」
どこからともなく、無邪気な明るい声が聞こえたのだった。
☆しゅらいむ★と申します。素人なので至らないところも沢山あると思いますが、温かく見守って頂けたら嬉しいです。一応学生なので、更新日は不定期になります、ご了承ください。次回はTwitterの優しいフォロワーさんが描いてくださった挿絵も入れていきますのでお楽しみに✨
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