君との頃
あれは、そう、全てが半分だった日。
高校に通い始めて一年と半分。時計を見ると午後十二時を指していた。教室にこもる熱気を逃すために開けられた窓から見える、白と青さえも半分だった。
数学の公式を左の耳から右の耳へ聴き流し、今日のお弁当の中身について考える。
卵焼き、はいってたらいいなあ
そんなことを思いながら妄想が風船のように膨らんでいく。卵焼きから世界の破滅まで考えたところで先生に当てられる。妄想はすぐさまはじけ飛んだ。
何もないようなふりをして、そつなく答えた私は、しつこく高鳴っている私の鼓動を抑えるべく、もう一度妄想にふけった。
ふと、いつもの妄想に取りつかれる。これに取りつかれたら、気が済むまで付き合うしかない。恐怖と虚無が、半分ずつ混じりあって私を支配していく。
いつもの妄想はいつも君のこと。君は私に、快楽をくれる。計り知れない恐怖も後を追って一緒に。いっそのこと捨てたい、けど捨てられない。失うのが怖い。
君に付き合っているうちに、私の奥底に眠っていた希死念慮が目を覚ました。窓から飛び降りたら、と百回はしたくだらない妄想をしているうちに、君は居なくなった。
いつも私をおいていく君は、ずるい。君の手のひらでのうのうと踊っている私をただ見つめているのも。そして最後には君は私を捨てる。
私は考えることをやめ、シャーペンを強く握りなおした。
指からにじみ出る脂汗は、君と私だった。