4話 再会する
今日は俺の誕生日だ。まだ異世界に来て、3か月しか経ってないのに、なんかイベントが発生したんだけど。
まだ五歳の体に転生したことに戸惑いを感じるのに、誕生日を迎えた。正直嬉しいのかどうかもわからない。しかも、今朝ユズハに言われるまで気がつかなかった。
「お兄ちゃん、お誕生日、おめでとう」
「え?」
「だから、お誕生日おめでとう」
「ああ、そうか。ありがとう、ユズハ」
こんな感じで聞き返したのはなかなかに恥ずかしい。だって五歳、いや六歳の子供って、誕生日が来たらめちゃくちゃ喜ぶような一大イベントじゃん。なんで忘れてるの?って感じじゃん。
でも、あれだな。誕生日祝ってもらうのなんて、久しぶりすぎてヤバい。語彙力がいつも以上になくなるぐらいにはヤバかった。
てか、自分の誕生日かどうかも定かじゃないのにさ。未だにこっちの記憶と向こうの記憶が食い違いが発生してるんだ。今日が誕生日ってのを知らないぐらいには、まだ食い違ってんだよ。それでどうやって喜べって言うんだよ。
けど、お父さんはあっさりした感じで、
「誕生日だろ。これを使え。うまく使えよ」
って言って、どっかに行ってしまった。しかも、プレゼントはダガーだ。ちょっと物騒なプレゼントだ。プレゼントに武器って、しかもまだ武器とか握る年齢じゃないだろ、俺は。既に、弓はある程度使えるようにはなったけど。
しかもこのダガーちょっと大きくないか。30㎝ぐらいあるんじゃないか。身長の4分の1ぐらいはあるだろ。明らかにサイズが違うと思う。せめて、20㎝ぐらいのものじゃないの、身長的にも。
まあ使うけど。動物の血抜きや、普通に近接戦でも使える。動物相手に近接戦とか、自殺行為だよね。よくゲームとか、アニメの主人公は怖がらずに戦えるよね。例外な作品もあるけど。
とにかく、これで戦術は一応増えた。したくはないけど。遠距離以外もあるだけでだいぶ変わるかもしれない。安全を考えれば、遠距離でチクチクする方がいいけど。前みたいに仕方なく近接戦になった時とかには使えるかもしれない。もうあんなことはしたくない。あのトラの攻撃は、だいぶ危なかった。
「そういえば、治ったのか、その頬の傷」
「見てわかる通りだよ」
俺も厨二の時期はあったが、もう過ぎてる。だからまあ、ほっぺにある傷がカッコいいとか思う時期は過ぎてる。てかカッコいいとかの前に、傷ができた時の痛みだったり恐怖だったりが蘇って、絶対カッコいいと思える状態にはならないけど。
そもそもカッコいいとか思う前に、あの暗黒期の事を思い出すとなかなか恐ろしい事態になりかねない。まあ陽キャを遠目から見てるような学生だ。そういう人達は全員経験した事あるんじゃないのか?まあ偏見だけど。
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今ではだいぶ魔力の使い方もうまくなった気がする。まず、薪割の時にうまく魔力を籠めれたのか、切り株を半分ぐらい切れた。薪じゃないよ、それを置いておくような木の場所をだよ。もうね、子供のパワーをね、超えてるよね。まあ魔力での強化が無かったら、ただの子供と一緒だけど。
でも多分、素でも日本にいた時よりも力が強いまである。日本の俺、まじ非力すぎる。まあ斧を持って数回振り回せば絶対疲れるだろうから。
そして、武器にも籠めれるようになってきた。そのせいで、切り株にとどめをさした。切り株、すまんな。俺が強くなりすぎた。お前が弱すぎた。
このくらいまでできれば、最初にお父さんがしてたみたいに弓にもできると思ったけど、これがまた、全然違う。魔力を籠めすぎたら、威力が強すぎて、体が絶えれなかった。2、3メートルは吹き飛んだんじゃないんだろうか。
次に、飛ばされるなら、踏ん張ればいいんだ。と思って、足の方に意識しながらやると、弓の威力は普通にした時と大差ない。それどころか、魔力を意識して、狙いとかガバガバだったし。
一応、腕に魔力を籠めてもしてみた。矢が力に耐え切れずに木に当たるまでに砕けた。表現間違ってるかもしれないけど、これは砕けたとしか言いようがないんじゃないか。しかも、弓もボロボロだった。次使おうとしたら、壊れそうなくらいにはボロボロになった。まだまだ弓の練習は時間がかかると思った。
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せっかくもらったダガーなので、ちゃんと使えるようになろう。
いきなり話が逸れるが、魔力を使っていて、わかったことがある。
まず、わかってるが腕に集めれば、腕力が上がる。足もそうだ。走力が上がる。
次に目。ここに集めれば、いつもよりもよく見える。それだけ。なんかしょぼい気もするけど、そんなことはない。魔力を集めれば、いつもよりも遠くまで見える。しかも、動物の動きもよく見える。動体視力が上がったのだろう。本当によく見える。これがあれば音ゲーで世界を狙えるのでは?そんなことはどうでもよくて。
耳に集めると聴力が上がった。まだこれの使い道がわからない。いらない情報までわかって、集中できなくなったよ、俺は。
とまあ、こんな感じだ。これの切り替えを素早くできるようにする。そうすれば、敵の攻撃をかわしながら、俺は威力の高い一撃を与えられる、はずなんだ。まあ、できればの話だし、こんなに理想的なことなんて絶対にできない。ゲームとかじゃないし、できる気がしないけど。
だから、そういう感じのを考えて、ダガーの練習もやる必要がある。まあそもそも、ダガーの使い方を知るところから始めないといけないんだけど。
とにかく、特訓あるのみだ。
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2か月だろうか。そのぐらいたった。ダガーの使い方も様にはなったんじゃないだろうか。弓もそれなりに改善できたはずだ。
なにより、索敵ができるようになった。まだ10メートルぐらいだけど。それと、異様に強いような動物には反応している。勘みたいなものだけど。
お父さんも
「おまえ、成長早いな。独学なのに。さすが俺の息子だな」
よく中学とかも、自分の競技だけはうまくできた。他も普通の人よりもできるぐらいにはできた。陸上のマイナー種目のせいか、顧問すらちゃんと教える事に匙を投げるような競技だった。いつも自分で考えて行動。改善点を見つけて、また行動を繰り返してた。
それのおかげなのか。それともただ単に、この体の成長速度が異常なのか。とにかく、早いらしい。"独学では"がついてたから、普通に教えてもらえばもっと早くに身に着けれたんじゃないだろうか。聞いたら
「自分の感覚でやるのが一番いいだろ。変に他人の感覚を教えてできないより、こっちの方がいいだろ。まあ、俺もこんな感じでやったからおまえにもしただけだけど」
最後の一文がなかったらいいこと言ってたのに。けど、言ってることは理解できるし文句を言えない。けどやっぱり、独学なんかじゃなかったらもっと優秀になれたんじゃないだろうか。
「そうだな、タイシ。イノシシを狩ってこい。今ならできるだろ」
「は?いや、まだ早いだろ。ようやく弓も使えるようになった、その程度のレベルなんだぞ、俺」
これは文句しかない。
まだ小動物しか狩ったことがない。しかも3回ぐらいしかしてないし、お父さんもいっしょにいた。
追い打ちのように、俺の矢はほとんど当たってなかった。ッ、クソエイムなのは自覚している。FPSは俺は苦手だったんだよ。それなのに、イノシシだ。あの猪突猛進で有名なイノシシだ。さすがに厳しい。
「大丈夫だろ、最悪近接戦すればいいだけだ」
簡単に言ってるけど、この山の動物は、何故か凶暴ですぐに襲いに来る。それ相手に近接戦はマジで自殺するようなもんだろ。
「つべこべ言ってないで早く行ってこい。晩飯なくなるぞ」
それはまずい。俺は耐えれても、ユズハが怒ったらやばい。1歳しか変わらないのに、魔力の量が全然違う。それを、もろに食らうのはだめだ。1日2日寝込むだけじゃすまなくなる。
「わかったから。失敗しても知らんぞ」
「大丈夫だろ。今日は」
意味の分からないことは言わないでほしい。どんどん心配になる。
いつもなら動物にはすぐに会える。でも今日は全然いない。もう嫌な予感しかしない。鳥すら見かけないとかおかしすぎる。もうほんといやだ。
この辺に何かがいる。俺の索敵はまだまだおんぼろなので、なにがいるとかはわからない。何かがいるぐらいしかわからない。ようやく動物を見つけたんだ。イノシシじゃなくてもいいだろ。もう1時間以上探したのだ。とりあえず、茂みから様子を見よう。
最悪だ。イノシシですら狩れるかわからないのに、それより難易度が高いんですけど。トラがいるとか聞いてないんですけど。しかも前会ったやつと同じだと思う。まあ暗かったから、本人かどうかは知らないけど。
でも直感がそうだと言っている。ヤバいだろ、あのトラ、3メートルを優に超えている。でかすぎるだろ。よくあんなのに出会って生きてたな、俺。
今は、的がでかいと思おう。こんなに大きかったら威力重視で弓を使った方がいい気がする。とにかく狙いは足だな。こんなの一撃で殺せない。なら、攻撃を単調化させるためにも足に当てたい。絶対に当たらないだろうけど、的がでかいから、最悪胴に当たってくれ。
「ニ゛ャ゛ー」
当たったのか俺の攻撃が。威力のせいで放った瞬間に俺も吹き飛んだから見てなかったけど。どこにあたった?…マジで、足に当たったよ。今神様俺に味方してるかもしれない。トラにも居場所がばれてるのでもう弓が使えない。よくよく考えると、トラに近距離戦か。絶対に死ぬ未来になる予感がする。けどやるしかない。
「よし。ちゃんと借りは返すぞ。このくそトラ野郎」
これでようやくトラに借りを返せる。だったら絶対に勝たないとな。死にたくないし。なんで動物相手にムキになってるのかは謎だ。
面白い、続きが気になると思って頂けたら幸いです。