36話 わかった
「今更だが、私に勝てると思っているのか」
「今更だな。まあ、勝てないだろうな」
「ならなぜ、一人でここに残ったのです?私としても、そちらの方が楽しめるのですが」
「何か間違ってないか」
「何がです?」
「確かに、俺はお前には勝てない。けど、負けることもない」
「それはそれは。私も見る目が無いってことでしょうか?その状態の君が、何ができるというのです。最初から左側が使えず、不自然な動きが多かった。何か事情があるのでしょうが、その事情はどうでもいいです。それでも、ここまでやれるのですから、この、私と」
俺は、最初から勝つつもりではなかった。簡単に言えば、時間稼ぎ。
「それに、既に満身創痍じゃないですか。ただでさえ、私に攻撃は当たらないのに、今の君では、サンドバックになるのがオチですよ」
それに、俺の攻撃は当たらない。どうやってかわしてるのかわからない。そして、相手の攻撃は当たる。確実にかわしたと思っても、当たる。いくらやっても同じ結果になる。
「それとも、あれですか。血を使って、魔術でも使うのですか?」
「なんだ、それ。俺はそんなの使わないぞ」
「そうですか。楽しめましたが、それでも所詮は子供ってところですか」
「何言ってるんだ?まだ終わってないぞ」
「それこそ、何を言ってるのです?その体で、その状態で何ができるのです」
俺の魔法は生成。今でこそ、いろんなものが作れるようになったが、それでも攻撃力が上がるわけでもない。結局は、前みたいにするしかない。
「俺の魔法は、ちょっと時間がかかるんだよ」
「そうなんですか。でも、残念ですね。その魔法も、私には効いていないような気がしますが」
「ああ、もうすぐだ」
「なんだって」
イメージは酸素。幸い、初めて密室で使うことができる。この部屋を酸素で満たす。ただ、それだけなら、俺も巻き込む。なので、自分の周りだけは、普通の空気の再現、つまり、窒素も生成する。
狙いは、酸素中毒。目的は、呼吸困難、または、痙攣。
ただ、問題もある。この部屋を満たすのに、魔力がだいぶ使う。そのため、リナがいたらできなかった。それに、元に戻すだけの魔力は無い。そのため、時間稼ぎしかできない。
それと、もう一つ。この部屋の外に、明かりがあった。この世界に、電気なんて言う便利なものはない。つまり、火だ。それがこの部屋に入れられたら、それか、この酸素が外に出ていたら、ただ事では済まなくなる。
「何、俺はまだ動ける。まだまだ遊ぼうじゃねえか」
「このガキが。仕方ありませんね、どうも、嫌な予感がします。せっかくですが、早く終わらせますよ」
意外と挑発には乗ってくれた。
窒素を生成してると言っても、直接口の中に出してる。部屋に影響は出ない。でも、かなり集中する必要がある。
そして、意識がちょっとでもここから離れれば、すぐに終わる。相手はわからないだろうが、動けなくするだけで、俺は死ぬ。
相手が突っ込んでくる。それも、今までと比べ物にならないぐらいの速度。まだ本気ではなかったようだ。
勢いに任せた薙ぎ払い。それを間一髪で受け流す。
だが、すぐに次が来る。俺の背後で踏ん張って、さらに薙ぎ払い。
それを前進してかわす。だが、間に合わなかったのか、背中に切り傷ができる。浅い傷。
反撃に出たいが、それどころではない。振り返れば、追い打ちが来ている。
俺が何とか反応ができた速度。それでも、体がついてこない。
剣を振り上げている。今までより、見える。それでも、体が思うように動かなかった。
右上から剣を振り下げる。何とか体が動いたが、時すでに遅し。胴にも傷ができた。これもまだ浅い。それでも、激痛が襲ってくる。
そのすきを逃すつもりなどないのか、魔力をより多く籠めて、追撃してきた。
何とか反応する。剣で防ぐ。それでも、押し合いでは勝ち目がない。
しばらくは、沈黙が続いた。次に響いた音は、
パキッ
剣が折れた。半分ぐらい折れた。
「どうです。これで諦める気になりましたか?」
「いや、丁度いい。戦いやすくなった」
「何を言ってるのです」
「それを、確認させてやる」
折れた剣を使う。ちょうど、ダガーぐらいの長さになった。
俺から距離を詰める。さっきまでより、動きやすい。
明らかに、動揺していた。さっきより動きが良くなったのだ。
薙ぎ払い。これは避けられる。ただ、不自然な感じがした。誰かに押されたような。
当たらない。なら、追い打ちをするだけ。それ程距離もできていないので、すぐ間合いに入った。
今度は、下から斬り上げる。これも間一髪で避けられた。
それでも、止まらない。斬り上げた場所から、横一閃。首を斬る動きだ。
それも、かわされた。これまた、不自然に。そして、かわしていたタネが分かった。
「お前は、風を使って避けているんだな」
「よくわかりましたね。初めてばれましたよ。せっかくです。教えてあげます」
本当なら、どうでもいいのだが、ちょっとでもしゃべらせたかった。
「私の属性は、『風』。ただ、どうも攻撃に用いるほど、威力が出せなかった。そして思いついた戦法が、これですよ。魔力を自分の周りに飛ばし、動きをとらえる。私の風の動きから、動きを予想。そして最後。間に合わないと思えば、風を起こして、その場を緊急離脱。だから、攻撃など、当たらない。そして、攻撃にもこれを応用させた。結果、自分の攻撃は当たって、相手の攻撃は全部かわす。このスタイルができたのです」
思ってた以上に、難しいことをしていた。
「ただ、見破られるとは思いませんでした。まあ、ここまで長引いた遊びも初めてなのですが」
もしかすると、ヘルト以上の才能があったのかもしれない。近接戦においては。
「だが、それがわかってどうするのです?私に攻撃は当たらない。それに、どうやら魔法も失敗のようですしね」
「確かに、今の俺では、お前に傷すら与えられない。だが、もうすぐだ」
「なにを。ううっ。あなた。何をしたのです」
「言っただろ、魔法だ」
ようやく、効いてきたようだ。酸素中毒。呼吸困難や、めまい、痙攣などがある。
「やっぱり、嫌な予感は当たっていましたか。早く終わらせますよ」
相手が突っ込んできた。さっきと同じ。でも、剣に纏ってる魔力量が違う。剣を折られた時以上。この一撃で決めるつもりなのだろうか。
俺の取る行動。逃げの一手、と言いたいが、かわすのは無理だろう。防御するしかない。今まで以上の魔力を纏わせて。
力比べの状態になった。剣を折られる心配はない。それより、俺の方が有利まである。
相手の剣を流す。剣が短くなった分、相手が抵抗する前にできる。
その結果、相手は態勢を崩す。だが、こっちから攻撃はしない。どうせかわされるだけだ。俺も態勢を整える。
また、同じだった。距離を詰めて、攻撃。ただ違ったのは、攻撃が外れた。俺はかわしてもいない。
「どういうことです?この距離で、外すなどあり得ない」
「お前は終わりだ。このまま、眠っとけ」
これで、終わりだと思った。
バギバギ
なんの音か、わからなかった。そして、それだけなら、知ることもなかった。
人が8人、それと生き物が落ちてきた。土砂と一緒に。その生き物は、アニメやゲームでよく見た、ドラゴンだった。伝説の生物、ドラゴン。それが、落ちてきた。
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